「在宅医療」は、身体機能の低下により、通院することができない患者さんの元に医師が直接訪れ、診察を行う医療行為です。医師だけでなく、看護師やヘルパーなどとチームを組んで訪れるケースもあり、通常の院内診療とは勝手が異なります。患者さんとのコミュニケーションも同様で、在宅医療ならではの注意点も少なくありません。今回は、「在宅医療に必要なコミュニケーションスキル」について紹介します。
院内診療と在宅医療の、コミュニケートする「人」の違い
クリニックで診療を行う際は、医師と患者とが直接コミュニケーションを取り、症状を確かめたり治療方針を決めたりするのが一般的です。しかし在宅医療では、患者さんと医師との間に、患者さんの家族が入るパターンが多く見られます。患者さんの声を家族が聞き取って医師に伝え、医師の指示を家族が聞き、患者さんに伝えるという形です。特に患者さんが高齢者の場合や体を動かすのが難しい状態である場合には、こうして家族が患者さんの代弁者となるケースがほとんどです。
前述のように、高齢のために認知機能、言語機能が衰えているなど患者さんにサポートが必要な場合以外にも、家族が「どのような診療を受けているのか」を確認するために立ち会う場合も少なくありません。在宅医療の際には、患者さん本人だけでなく、家族ともコミュニケーションを取る必要があることを念頭に置いておきましょう。
在宅医療での医師のコミュニケーション役割
在宅医療におけるコミュニケーションでは、まず「患者・家族との信頼関係の構築」が重要です。これは外来診療とも共通していることですが、本人はもちろん、代弁者となる家族から信頼されなければ歓迎されません。相手を不快にする態度を取っていないか、相手が話しやすいような雰囲気が作れているかなど、いっそうの注意が求められます。そうして信頼関係が築けたのちに、正確な症状の聞き取りや確認が行えるようになるのです。
また、情報を得るだけでなく、病状の説明やどのように療養するのかなど、医師や医療スタッフ側から情報提供を行うことも大事なポイント。こちらでは、心配事が払拭されるような説明が行えるか、共感的対応をするかなども、在宅医療が機能するかどうかを左右します。
求められるコミュニケーションスキル
コミュニケーションにおいては、「相手が聞き取りやすい声の大きさ、ペースで話す」「分かりやすいよう簡潔な内容にする」といった点に注意しましょう。加えて、患者さんや家族が高齢者の場合は、会話だけでなく図で表したり、筆談にしたりといった工夫も必要となります。ほかにも、家族や患者さんが理解してくれているのかを適宜確認しながら話すことも大事です。自分だけが話すのではなく、分からない点や質問がないかを尋ねるといった工夫も必要不可欠です。
患者さん本人とは一切コミュニケーションを取れないという場合もありますが、あくまで診療を受けるのは患者さんで、家族は代弁者です。「患者さん中心」であることを意識しましょう。家族とばかり話したり、家族のほうばかり見ていないかは特に気を付けたいポイント。患者さんから話を聞けない場合でも、患者さんにも話しかけたり、顔を見たりなど、患者さんに気を配る工夫もコミュニケーションには必要です。
反対に、会話の内容によっては、患者さんには聞かせないようにする配慮も求められます。例えば終末期の症状の患者さんである場合、みとりについての相談は避けては通れません。しかし、患者さんの前で話すのはあまりにも配慮がなさすぎます。家族だけとコミュニケーションが取れる場を別に設定するなど、必要に応じた工夫が必要であることも心得ておきましょう。
在宅医療に必要なコミュニケーションスキルと注意点についてご紹介しました。今後、高齢化が進むにつれて、在宅医療の需要はさらに高まるとみられています。現在は在宅医療を提供していないという場合でも、将来的に導入を迫られる可能性はゼロではありません。今のうちに在宅医療に求められるスキルを確認し、身に付けておきましょう。
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この記事は、2021年2月時点の情報を元に作成しています。