美容クリニックでは、原則として各クリニックが個別に料金を設定できる「自由診療」が行われているため、提供している施術の料金はクリニックによって異なります。
一方、保険診療で行う診療行為に関しては、行為ごとに点数が決まっているため、勝手に料金を変更することはできません。
では、自由診療を行っている美容クリニックは、各施術の料金をどのようにして決めているのでしょうか?詳しく説明していきます。
保険診療と自由診療の違いは?
まず、保険診療と自由診療の違いを改めて確認しましょう。
なぜ保険診療で行う診療行為は価格が決まっているの?
2種類の診療のうち、保険診療とは、健康保険に加入しているすべての患者が、どの医療機関を選んでも、同じ内容の診療を同じ金額で受けられる仕組みです。
1961年に施行された「国民皆保険制度」によって、すべての国民に平等な医療が行き届くよう定められたため、医療機関ごとに価格を設定することができません。
自由診療の施術料金がピンキリである理由は?
では、自由診療の施術料金はなぜピンキリであるかというと、提供している施術や治療が厚生労働省によって承認されたものではないからです。
そのため、各医療機関が独自に決定することが可能です。また、国が未承認の治療は公的医療保険による医療費負担が適用とならないため、患者は全額自己負担しなければなりません。
患者も「施術料金が高い=スキルも高い」ではないと気づいている
一般的に、大手の美容クリニックの場合、TV-CMやインターネット広告などの宣伝費に多額の費用を掛けているため、連動して施術費用も高くなる傾向にあります。
しかし、広告をほとんど打っていなければ施術費が安いかというとそうではなく、患者数の少なさをカバーするために、高級路線を売りにして単価を高く設定していることもあります。
一方で、価格が安いことを売りにして患者数を伸ばすことを重視しているクリニックもありますが、「安いから腕が悪い」とは限りません。
反対に、「高ければ必ず効果が出る」というわけではないことも、多くの患者は理解しています。そのため、自院の売りや、患者に納得してもらえる価格設定についてよく考えることはとても大切です。
患者が美容クリニックを選ぶときにチェックしているポイントは?
続いては、患者が美容クリニックを選ぶときにチェックしているポイントをみていきましょう。
施術内容、施術料金
患者がまず確認するのは、施術内容および施術料金です。美容への関心が高い患者であれば、施術名で検索してヒットしたクリニックを見比べて、そのなかから利用する一軒を選ぶということもあるでしょう。
比較検討した結果、同じメニューが他院と比べて安ければ、選んでもらえる可能性が高くなります。ただし、ホームページの説明をよく読んだ結果、「A院のほうが安いけれど、B院のほうがアフターケアがしっかりしているから、結果的にB院のほうがお得だろう」と判断されることなどもあります。
そのため、料金を設定する際には、“その料金でどこからどこまでケアするのか”をきちんと決めて、ホームページなどに明記することが大切です。
カウンセリングの有無
美容クリニックの施術は、初めて来院する日に受けても問題ないものと、一般的に、初回はカウンセリングのみしか行わないものがあります。
たとえば脱毛は、初めて来院する日に患者の同意をとってそのまま施術にうつっても問題がない場合がほとんどです。一方、脂肪吸引や豊胸手術、骨を削るなどの大掛かりな整形は、仮に「来院当日の施術が可能です」と案内してもほとんどの患者は拒否するでしょう。
副作用やリスクがある可能性が高い施術ほど、十分に時間をかけてカウンセリングを行うことがとても大切です。もちろん、患者にとってのメリットばかり強調することなく、デメリットについてきちんと説明することもとても大切です。
一般的に、カウンセリングがしっかりしていて「信頼できる」と思ってもらえたら、相場より高い料金設定でも納得してもらえるものです。
勧誘の有無
「19,800円で一生通える」などのSNSの広告を目にして来院した患者に対して、広告を打った施術より高額な施術を勧めて契約をとろうとする手法が使われることは多々あります。しかし、こうした強引な勧誘で契約に漕ぎつけても、後々訴えられるなどトラブルに発展する可能性が高いといえます。
また、集患目的で安く設定した施術を疎かに扱っていては、患者がどんどん離れていくでしょう。しかも、そうした手法は「悪質」として口コミに書かれることが多いので注意が必要です。
口コミ
今や美容クリニックを選ぶ際に口コミをチェックしない患者はほとんどいません。保険診療のクリニックであれば、冒頭で説明した通り、どこで治療を受けても料金が変わりませんし、風邪や怪我などであれば、「どこで受けても治ればいい」と考える人が多いです。
しかし、美容クリニックを利用する患者は違います。高い施術代を払うのですから、“より高い効果”を求めています。そのため、悪い口コミを書き込まれないよう心がけることがとても大切です。
料金面に関して悪い口コミを書き込まれないためにはどうすればいいかといと、患者に「費用対効果が高い」と感じてもらえるよう心がけるが大切です。患者のなかには、「安ければ安いほどいい」と思っている人ももちろんいます。
そういう患者をターゲットとするのであれば安さを追求するのも一手ですが、しっかりとした効果を感じてもらうことを大事にしているのなら、「費用に見合う治療」を提供することがなによりも大切です。
導入している機器
美容に関心の高い患者は、「最先端」「最新」などのキーワードに敏感です。他院にはない美容機器を導入しているクリニックであれば、施術料金が高くても仕方ないと考える人が多いでしょう。
そのため、新しい機器、新しい治療法を導入しているなら、ホームページやSNSなどで積極的に情報を発信することが望ましいといえます。
医師が価格を決める際に参考にすべきポイントは?
続いては、医師目線でのチェックポイントを説明していきます。
競合の価格
必ずチェックすべきはエリア内の競合の価格です。ただし、自院の方針を意識することなく、「競合と同じくらいの価格がいいだろう」と軽い気持ちで料金を設定すると、そのあと高級路線に変更するのは至難の業です。
元々の料金から下げるのであれば患者から歓迎されますが、「来月から値上げします」となるとブーイングの嵐となる可能性が高いので、途中で大幅に変更せずに済むよう、料金については開業前に十分時間をかけて検討しましょう。
診療圏
美容クリニックの診療圏は、施術の内容によって大きく異なります。たとえば脱毛や美容点滴など、一定期間通い続けることが必要なメニューや、どのクリニックで受けても結果に大差ないメニューであれば、患者は「無理なく通える範囲」でクリニックを選びます。
そのため、近隣に自院より安く設定しているクリニックがあれば、競争に負けてしまう可能性が大といえます。
一方、たとえば腋臭の手術やメスを入れる美容整形など、基本的に一生に一回で終わる施術で、かつ高いスキルが必要とされるものであれば、患者からすると、県をまたいででも腕がいいと評判の医師がいるクリニックを選びたいと思って当然です。
この条件に該当するクリニックであれば、単価を高く設定しても患者から選ばれる可能性は高いといえます。ただし、県外の人を呼び込むためには、建物前の看板などでの宣伝は意味を成しません。そのため、広告にお金をかけるかもしくは工夫することが不可欠となります。
リピーターを獲得するための施策
肌の若々しさを保つための美容レーザーなどは、定期的に打ち続けることが重要です。そのため、患者は「続けられる値段」であるかどうかを重視する傾向にありますが、一度目の施術で期待以上の効果を感じた場合は、「多少無理をしてでも月に一度は通いたい」と考えるものです。
こうした心理を考えると、リピーターを獲得するための料金設定の施策としてはいくつか考えられますが、まず、続けて通ってもらうための定番としては、「3回分まとめて契約だと5%オフ、10回分まとめて契約だと7%オフ」などのコース料金を設定することです。
もしくは、多くの患者が高い効果を実感できる施術なら、反対に初回を「トライアル料金」で設定して2回目以降の通常料金は高く設定していても、必ずリピートしたいと考える患者が多いものです。
競合のホームページやSNSを定期的にチェックしよう!
患者目線での料金に関するチェックポイント、医師目線でのチェックポイントの両方がわかっていても、適切な料金を設定するのはなかなか難しいものです。
患者から支持されて、かつクリニックとして満足いく売り上げを上げるためにはどの価格帯に設定すればいいのか、しっかりと時間をかけて考えてみてくださいね。
特徴
対応業務
その他の業務
診療科目
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この記事は、2023年9月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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