医療現場において医師と看護師は信頼関係が無いと成り立たないんじゃないのと思う方、おっしゃる通りです。ですが、看護師の私たちから見て、信頼したくてもなかなか信頼できない医師が中にはいるのも現状です。私は新人時代「この先生信頼できないな」と何度も感じることがありましたが、新人という立場もあり、なかなかその思いを表に出すことはできませんでした。しかし、経験を重ねるうちにさらに信頼できない医師のハードルが上がっていることを、日々、現場で感じています。
今回は、私が実際遭遇した信頼度ゼロの医師、そして信頼度ゼロの医師の特徴、そのような医師に遭遇したらどのような関わり方をすれば良いのかについてご紹介していきたいと思います。
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実際に遭遇した信頼度ゼロの医師
まずは、実際に私が遭遇した信頼度ゼロの医師についてご紹介します。
一方的な会話
その日は看護師の1人が急に欠席したため、患者を振り分け直すなどバタバタなスタートでした。私は、欠勤した看護師の代わりに1部屋だけ受け持つことになり、急遽、その部屋の患者たちの情報収集をおこないました。しかし、前日に転棟してきた患者Aの記録があいまいで、どんな状態であるのか把握できませんでした。そのころは特に人員不足で、日々の業務や記録をこなすことにみんな必死で、転棟してきた患者の情報漏れなどは日常茶飯事だったのです。しかも、その日は看護師の欠勤、複数のオペや退院、カンファと盛りだくさんな日で朝から大騒動。主治医Bに電話しても繋がらず朝からお手上げ状態でした。
しばらくして、ようやく主治医Bから折り返しの連絡がありました。一連の経緯を説明するとまず「なんで昨日の時点で確認しておかないの?」と言われました。そのとき私自身余裕が無かったこともあり「なんで一言目にそんな風に言われないといけないの」と思いましたがぐっとこらえ指示を仰ぐことにしました。するとBからは、「とりあえず様子見てまた何かあったら連絡ください」とだけ言われ一方的に電話を切られてしまったのです。私はようやく電話が繋がったと安堵していたこともあり、その落差に驚きました。「様子見てって、連絡してから2時間も経っているのにこれ以上様子見る必要がどこにあるの?」とその時点でBを信頼することはできないでいました。
初めて病棟に来た?
結局、その日は特にAに変化は無く無事に一日を終え、夜勤者にBとのやり取りなど一連の流れを申送り退勤しました。すると、その晩事件が起きたのです。
Aの状態が急変して夜勤者がBに連絡したところ、開口一番「またその人のこと? 昼間にも別の人に様子見でって言ったんだけど」とはじめから看護師の話を聞こうともせず自分の主張ばかり言ってきたと言います。Bの態度にその看護師は激怒して、「先生が昼間きちんと指示をしてくださっていたらこんな夜中に連絡する必要無かったんですよ!? 私たちのせいにばかりしないでください! とりあえず直接状態を見て指示を出すか朝一で病棟の方に来ていただかないと困ります!」と言ってくれたそうです。看護師のあまりの剣幕に驚いたのかBはすぐに病棟にやってきたそうです。すると、看護師が驚いたことにBを見たのは初めてで、B自身も病棟に来たのは初めてだったようです。私は後日そのことを聞いて、「病棟に来たことも無い人にあんなに横柄な態度をとられたのか」ととても怒りを覚えました。
人によって態度が違う
その後、激怒した看護師は副師長で、勤務年数も長く他の医師からも一目置かれている方ということもあり、Bはあからさまに「いや~あの時は〇〇さん(副師長)から連絡があって本当に助かりました~」とみんなに聞こえるような声でゴマをすっていました。その発言のあとに、「昼間に連絡してきた人ももっと危機感あるように言わないとだめだよね~」と言っているのを聞いてはらわたが煮えくりかえる思いでしたが。とりあえずAは落ち着いたし、それからは必要最低限でしかBとは関わらないようにしようと思いました。
受け持ったことが無いからと主張
ところがその後、私の思いもむなしく、夜勤中に私の受け持ち患者の1人が急変してBに指示を仰ぐことになりました。Bは上記の出来事を覚えており、相手が私とわかった途端、声色や態度をかえ、「また君? 今度は何?」と言ってきました。急変患者の様態を説明して、どうしても来てもらえないかとお願いしたところ溜息交じりに電話を切られ、Bの到着を待つことになりました。
Bが到着して経緯を話していると、「そんな急にごちゃごちゃ言われてもわからないよ! この人初めてなんだから!」。Bの発言に、医師としての自覚の無さ、責任感の無さ、危機感の無さを感じて呆然としたことを覚えています。こんな人に私は日頃から横柄な態度を取られる筋合いはないと内心思いましたが、Bの指示がない限りその患者は助からないということだけを考えて、その場を乗り切ることにしました。
結局、Bは自分1人の判断でおこなう自信がなかったのか、上司にあたる医師に連絡していました。上司からは「そんなことでこんな時間に電話してくるなんて君はいつまで経っても新人のままだな!」と叱責されたようで、あからさまに不機嫌になり私に八つ当たりするかのように「君たちも長年看護師やってるんなら少しは自分たちで考えて行動しようと思わないのか!」と理不尽に怒鳴ってきたのです。この件に関しては医師であるBにしか判断を下せないことを知ったうえでの発言なのか、どちらにせよ返す言葉も見当たらずとにかく穏便にことを終えたかったので、ぐっと我慢してなんとか朝を迎えることができました。
Aの上司である医師は副院長で、看護師からの信頼も抜群であることが、Bの横柄な態度の原因と後からその副院長に聞かされました。嘘のような話ですが、実際にBのような医師としても人としても信頼度ゼロの方がいることを知っておいていただきたいと思います。
信頼度ゼロの医師の特徴
次に、Bも含めて信頼度ゼロの医師の特徴についてご紹介します。
看護師に対して横柄・威圧的な態度
Bのように、現場では看護師に対して横柄で威圧的な態度をとり、自分を大きく見せようとしたりする方がいます。そういった行動は、本人だけでなく上司である副院長の信頼もなくすことを自覚していないのです。
患者に会おうとしない
これもBの話で出てきましたが、病棟にも来ない、実際に患者にも会ったことが無い医師の指示ほど信頼できないものはありません。患者からも、「私の担当の先生1回も来たことないんだけど」とクレームを受けたことが何度かあります。1度も会ったことの無い人から薬を処方され、たとえ良くなっていたとしても良い気持ちのするものではありません。
相手の話を最後まで聞かない
この手の医師は非常に多いように見受けます。多忙なのはわかりますが、データなどではわからないような現場の状況や患者の思いなどもあるのに、看護師の話を最後まで聞くことなく指示を出したり、「じゃあ薬剤師と話してまた連絡して」などと他職種に投げたりする方もいます。このような方は、看護師にも患者にも寄り添う姿勢を感じることができないことから、信頼度もゼロということに繋がります。
人によって態度を変える
これもBに当てはまることですが、基本的にこのような裏表のある人は周りから信頼されることは非常に難しいです。私のように目の前でその現場を見たならまだしも、人づてに「あの人には~って言ってたけど、この人には~って言ってた」などのように聞くと、人によって言うことや態度を変えているとわかってガッカリします。
人に意見を聞いてばかり
新人ならまだしも、何かあるたびに上司や同僚に意見を求めたり、「他の先生はどうしてるの?」とまず聞いてきたりする方がいます。主治医のあなたに聞いているのに、自分の考えや意見すら言わず、他の人の意見ばかりに頼る医師は信頼できません。「自分がない人なんだな」と思うし、責任感や決断力に欠けると判断されて当然です。これは医師だけでなく看護師にも言えることで、立場が上であればあるほどこのような行動をされると後輩側の立場である人は非常に不安にもなります。
信頼度ゼロの医師との関わり方
最後に、信頼度ゼロの医師とどのように関わっていけばいいかご紹介します。
知識を豊富に
医師に何を聞かれても受け答えできるように知識を豊富に身につけておくと、もしBのように責任放棄したり患者を目の前にして動揺したりする医師に遭遇しても、看護師として最低限の対処をすることが可能になります。それに、医師と看護師のどちらも知識不足だと患者からの信頼を失いかねません。共倒れを防ぐためにも、常に学びの姿勢でいましょう。そのことが自分の強みにもなっていきますし、自信にも繋がります。地道にコツコツと知識を蓄えていくことで、医師より頼りにされている看護師もいるので、ぜひ取り組んでいただきたいポイントでもあります。
医師の意見を尊重
何よりも患者の命を救うことが最優先ですので、たとえ信頼度ゼロの医師であっても、とりあえずその場では医師の意見を尊重することが重要なこともあります。医師とは患者から尊敬されている存在のはずであるため、その医師に対して「それで大丈夫なんですか?」という風に意見すると患者の不安にも繋がりかねませんので、信頼度ゼロではありますがまずは医師を立てて意見を聞くことも大切です。
他の医師と信頼関係を築いておく
私の知人看護師で、Bのような信頼度ゼロの医師の遭遇した人がいました。それからというもの、友人は医師と関わることが嫌になってしまい、自分の方から医師と距離を置いて疎遠になってしまってそうです。ですが、それが原因で他の医師からもあらぬ噂を立てられた友人。友人は普段から他の医師ともあまり話しておらず、信頼できる医師もいなかったため、耐え切れずに移動を申し出たと言います。友人のように信頼できる医師が1人もいないと、最悪な結果になってしまうことも充分あります。1人でも信頼できる医師がいれば、もし信頼度ゼロの医師に遭遇してしまったときでも、相談相手になっていただけたりするのでおすすめです。
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まとめ
医療現場において、医師と看護師の関係は患者の命を左右する非常に重要なものです。
私のように病棟勤務の場合は、医師と関わる機会は少ない方ですが、オペ室のよう1日中医師と時間をともにする場合は、双方の信頼度が重要です。信頼関係があれば、仕事がしやすくなるだけでなく効率度も上がるので、信頼度ゼロの医師を敬遠ばかりするのではなく、上手く向き合っていくことも意識して取り組んでいただければと思います。
特徴
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診療科目
この記事は、2021年8月時点の情報を元に作成しています。