通常、医薬品や医療機器は承認審査を受けないと販売ができません。しかし、効果の高い医薬品、画期的な医療器具の場合は、その審査期間を短くできる制度があります。それが「先駆け審査指定制度」です。今回は、この「先駆け審査指定制度」についてご紹介します。
既承認薬と異なる画期的な医薬品・機器が対象となる
医薬品の場合、通常12カ月の承認審査期間が必要です。しかし、有効な薬品・機器はできるだけ早く患者さんに届けたいですよね。そこで厚生労働省は、有効な治療方法の早期実用化のため、治験段階で著明な有効性が見込まれる医薬品を指定。各種支援による早期の実用化を目指す「先駆け審査指定制度」を、2015年(平成27年)4月1日に創設しました。
では、どのような薬品・機器が指定の対象となるのでしょうか? 厚生労働省は「指定基準」として以下の4点を挙げています。
- 原則として、既承認薬と異なる新作用機序であること
- 一刻も早い実用化が求められている重篤な疾患が対象であること
- 既承認薬が存在しない、または既存の治療薬、治療法に比べて有効性の大幅な改善が見込まれること
- 世界に先駆けて日本で早期開発・申請されるもの
既承認薬と異なる新作用機序であることが原則ですが、すでに承認されている薬品と同じ作用機序の場合でも対象になる場合があります。例えば、開発対象の疾患に適応するのが初めてであるものや、革新的な薬物送達システムを用いているもので、大幅な改善が見込まれるケースは指定の対象となります。
また、日本で早期に開発・申請される薬品である場合、「FIH試験を日本で実施」「POC試験を日本で実施」の両方に該当していることが望ましいとしています。
先駆け審査指定制度の対象品目に指定された場合でも、上記の条件を満たせない場合は指定が取り消されます。例えば、同じ薬品が先に海外で承認された、国内で早期の開発が達成できなくなったなどのケースがあります。
医薬品は審査機関が半分になる
対象薬品に指定されると、さまざまな「優遇」が受けられます。
まずは治験相談を「優先」して受けられることです。治験相談は通常2カ月ですが、事実上1カ月で実施する形となります。また、通常は審査の前に事前評価を受けないといけません。事前評価は、半期に1度募集し、都度対象を選択して実施される形で時間を要します。しかし、先駆け審査制度で指定された場合は、原則全て事前評価となり、早期に事前評価が受けられるようになります。従来は時間がかかっていた治験相談や事前評価の期間が短くなることで、審査そのものを前倒しできるのです。
「審査期間」自体も短縮されます。医薬品の場合は12カ月が必要で、通常の優先審査の場合でも9カ月を要しますが、本制度の指定医薬品になった場合は審査機関が6カ月に短縮。保険適用、市販までのスケジュールを短くすることができるのです。
そのほか、専任の担当部長級職員をコンシェルジュとして指定する審査パートナー制度や、製造販売後も充実した安全対策が取られるなども優遇措置に挙げられます。
2015年には後のゾフルーザも指定
本制度が制定された2015年から現在までに22品目が指定されています。最初に指定されたのは『ノーベルファーマ株式会社』の「シロリムス(NPC-12G)」でした。こちらは「ラパリムスゲル0.2%」という名前で販売されました。
同年には『塩野義製薬株式会社』のインフルエンザウイルス感染症治療薬「S-033188」が優先品目に指定。こちらは「ゾフルーザ錠10mg・20mg」という名前で販売され、「一回の内服」で治療が終了してしまうということで注目されました。現在までに上記の2品目を含む8品目が承認され、実用・販売に至っています。
直近の指定は2020年(令和2年)で、大阪大学医学部附属病院の「CNT-01」(中性脂肪蓄積心筋血管症の症状及び予後改善)、『アレクシオンファーマ合同会社』の「エクリズマブ(遺伝子組み換え)」(ギラン・バレー症候群)など全3品目となっています。
指定品目は、『独立行政法人 医薬品医療機器総合機構』のHPで確認できます。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構「先駆け審査指定制度の対象品目一覧表」
医薬品の「先駆け審査指定制度」についてご紹介しました。現在感染が拡大している新型コロナウイルス感染症については、迅速な対応が求められます。そのため、先駆け審査指定制度以上に早期の承認が得られる制度を新たに設けたり、「レムデシビル」のような特例承認が受けられたりといった可能性もあるかもしれません。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年4月時点の情報を元に作成しています。