医療の現場はなかなか厳しい職場です。しかし、医療は人間がいる限りなくなっては困るサービス業です。ただし、医師だけがいても医療サービスは行えません。医師と共に看護師など医療に関わる人が必要です。では、看護師など医療従事者を志す若者の数はどのように推移しているのでしょうか? 今回は医療従事者、特に看護師について需給状況を見てみましょう。
看護学校など養成機関では漸減傾向にある
『厚生労働省』が「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」というデータを取っています。これは、「看護学校」などに入学・またそこから卒業する人数を調査し、将来の医療従事者になる可能性のある母数を把握しようというものです。
将来の医療従事者を養成する「大学」「看護師3年課程」「看護師2年課程」「高等学校・専攻科一貫教育校」の入学者数の推移を2010~2020年度で見ると以下のようになります。
「看護師2年課程」は減少傾向にありますが、その代わりに「大学」が存在感を増していることが分かります。
4つの養成機関による入学者総数の推移は以下になります。
2010年度 | 5万7,505人 |
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2011年度 | 5万7,580人 |
2012年度 | 5万8,819人 |
2013年度 | 6万281人 |
2014年度 | 6万1,707人 |
2015年度 | 6万3,019人 |
2016年度 | 6万3,010人 |
2017年度 | 5万9,201人 |
2018年度 | 6万5,272人 |
2019年度 | 6万3,933人 |
2018年度には最多の「6万5,272人」となったのですが、少しずつですが、2019年、2020年と入学者は漸減傾向にあります。
参照・引用元:『厚生労働省』「看護師等学校養成所入学状況及び卒業生就業状況調査」
「看護師」「准看護師」の実際の就業者数は?
では、実際に医療関係に就業している看護師・准看護師の総数を見てみましょう。『厚生労働省』の「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」からデータを抜き出してみると以下のようになります。
看護師数の推移
2008年 | 87万7,182人 |
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2010年 | 95万2,723人 |
2012年 | 101万5,744人 |
2014年 | 108万6,779人 |
2016年 | 114万9,397人 |
2018年 | 121万8,606人 |
准看護師数の推移
2008年 | 37万5,042人 |
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2010年 | 36万8,148人 |
2012年 | 35万7,777人 |
2014年 | 34万153人 |
2016年 | 32万3,111人 |
2018年 | 30万4,479人 |
参照・引用元:『厚生労働省』「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」「就業保健師・助産師・看護師・准看護師」
2008~2018年で看護師はなんと「34万1,424人増加」ですが、逆に准看護師は「7万563人減少」となっています。
就業場所別に見ると、「診療所」で働く看護師は「15万5,986人」、准看護師は「9万8,134人」です。しかし、問題は人出は足りているのか?です。
最新の「保健師、助産師、看護師」の有効求人数・求人倍率の状況
『厚生労働省』の最新データによれば、2020年12月段階で「保健師、助産師、看護師」の有効求人数は「8万9,719人」、有効求人倍率は「2.11倍」です。つまり、医療に従事する「保健師、助産師、看護師」の人出が全然足りてない、ということです。
参照・引用元:『e-Stat』「職業別労働市場関係指標(実数)2021年1月29日公開」
まとめ
というわけで、医療従事者のうち、医師以外の特に看護師の人数についてその需給状況を概観してみましたが、いかがだったでしょうか。『厚生労働省』自身がすでに認め、検討会などを行っていますが、看護師の不足はすでに顕在化しており、上記のように養成段階で医療従事者の門をくぐる人は漸減しています。
医師・クリニック院長も一緒に医療現場で働く看護師・保健師・助産師の皆さんを大事にして、末永く働ける環境づくりをお願いいたします。
この記事は、2021年4月時点の情報を元に作成しています。