クリニックの経営を安定させるには、新しく患者さんを増やすことよりもリピーターを確実につかむことが重要になります。まず自分のクリニックに来る――という患者さんを増やすこと、つまり「かかりつけ医」として選ばれることが集患のポイントといえるのではないでしょうか。今回は、かかりつけ医になるにはどうすればよいのかをアンケート調査から考えます。
かかりつけ医を持つ人は55%
まず「かかりつけ医」の定義ですが、『日本医師会』では「何でも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医を紹介でき、身近で頼りになる総合的な能力を有する医師」としています。
何かあったらまず相談する医師というわけですから、その人の「かかりつけ医」になることはクリニックにとっては重要です。
『日本医師会総合政策研究機構』が2020年9月23日に公表した「日医総研ワーキングペーパー 第7回 日本の医療に関する意識調査」によれば、かかりつけ医がいる人は「55.2%」です。
かかりつけ医がいる | 55.2% |
いないがいるとよいと思う | 18.1% |
いない | 25.7% |
分からない | 1.1% |
年代別でかかりつけ医の有無を見ると以下のようになります。
年齢別のかかりつけ医状況
20歳代 | 21.6% |
30歳代 | 34.4% |
40歳代 | 44.5% |
50歳代 | 46.0% |
60歳代 | 66.0% |
70歳以上 | 83.4% |
また、男女別のかかりつけ医の有無は以下のようになります。
男女別のかかりつけ医状況
男性 | 49.1% |
女性 | 60.5% |
「かかりつけ医がいる」「かかりつけ医はいないが、いるとよいと思う」を足すと「73.3%」になりますので、患者さんからしてもかかりつけ医は望まれていることが分かります。年齢が上がるに従ってかかりつけ医がいる人が増え、男性よりは女性の方がかかりつけ医がいる率が高いのです。
かかりつけ医に望む医療は? 実は最初の相談先を求めている
同ペーパー内にかかりつけ医に望む医療・体制を聞いた結果があります。以下をご覧ください。
かかりつけ医に望む医療や体制
必要時に専門医や専門施設に紹介 | 92.2% |
患者情報を紹介先に適時適切に提供 | 87.7% |
どんな病気でも診療可能 | 85.2% |
健康な生活のための助言や指導 | 80.1% |
定期健診や検診 | 74.8% |
(複数回答可)
回答数の多かった順に上から5つが上掲ですが、これを見ると「かかりつけ医にはまず相談したい」というニーズがあることが分かります。主訴の最初の受け止め役を求められるのです。そのために「どんな病気でも診療可能」という回答が上位に来ていると考えられます。また、必要な専門医に紹介できる人脈が求められています。
ですから、患者さんから「かかりつけ医」と思われるためには、相談できる人であると認識され、専門医へつなげ、情報をしっかり伝達できるだけの人脈の広さをアピールするのがよいようです。
さらに、以下のアンケート結果をご覧ください。
専門医にかかりたいとき、まずかかりつけ医に相談するか
相談する | 58.4% |
相談することもある | 23.8% |
相談しない | 6.9% |
専門医にかかることがない | 7.2% |
分からない | 3.7% |
「相談しない」という人はわずか「6.9%」しかいません。「相談する」「相談することもある」を足すと「82.2%」になります。8割超の人がまずかかりつけ医に相談してから専門医を訪れるのですから、かかりつけ医になることの意味は非常に大きいといえます。
なぜかかりつけ医がいないのか?
かかりつけ医がいた方がいいと考える人が多いのに、なぜかかりつけ医を持たないのでしょうか? 以下はその質問に対する回答です。
かかりつけ医がいない理由
あまり病気にかからないので必要ない | 72.3% |
その都度、受診する医療機関を選んでいるから | 24.5% |
どのような医師がかかりつけ医に適しているか分からないから | 18.5% |
かかりつけ医を選ぶための情報が不足しているから | 16.6% |
かかりつけ医を探す方法が分からないから | 12.5% |
かかりつけ医に適していると思う医師が見つからないから | 9.8% |
いつも行く医療機関はあるが、受診する医師は決まっていないから | 7.7% |
ご自身の引っ越しやかかりつけ医の退職や移転があったから | 5.8% |
その他 | 0.4% |
特に理由はない・分からない | 2.5% |
(複数回答可)
「あまり病気にかからないので必要ない」「その都度、受診する医療機関を選んでいるから」は除くとして、「どのような医師がかかりつけ医に適しているか分からないから」「かかりつけ医を選ぶための情報が不足しているから」「かかりつけ医を探す方法が分からないから」「かかりつけ医に適していると思う医師が見つからないから」という回答は注目に値します。かかりつけ医はいた方がいいと思っている人は多いのに、探し方が分からない、見つからないのです。
このミスマッチはチャンスといえます。つまり、上掲のように「最初の相談相手」として患者さんとしっかりコミュニケーションを取り、専門医とのつながりをしっかりアピールできれば、かかりつけ医として認識してもらえる可能性は高いというわけです。特に女性はかかりつけ医を持つ率が高いですから、女性に選んでもらうことも重要といえるでしょう。自院のホームページでかかりつけ医としての実績を公表することなども効果が見込めそうです(医療法に触れないように注意が必要です)。
参照・引用元:『日本医師会総合政策研究機構』「日医総研ワーキングペーパー 第7回 日本の医療に関する意識調査」
まとめ
かかりつけ医になることはリピーター確保のための重要なポイントです。かかりつけ医になることで「あの先生に診てもらっているの。いい先生よ」という口コミが広まることも期待できます。ただ、そのためにはやはりコミュニケーションスキルが重要です。しっかり患者さんと向き合うことを忘れないでください。
特徴
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診療科目
この記事は、2021年5月時点の情報を元に作成しています。