コロナ禍もあって診療予約システムを導入するクリニックが増えています。診療予約システムは、患者さんが簡便に予約が取れるようにし、待ち時間を短くするのに役立つものです。クリニックにとっても集患の力になるツールです。現在このシステムを使っていわば完全予約制のようになっているクリニックもあるのではないでしょうか。
しかし、運用を間違えるとかえってクリニックの足を引っ張ることもあるのです。今回は、飛び込み患者さんへの対応など、診療予約システムの死角についてご紹介します。
「時間帯制予約」が望ましい理由とは?
診療予約システムは、大きく「順番制」「時間制」「時間帯制」に分かれます。
簡単にいえば、順番制とは銀行で使われているような早い者順に予約を入れるシステムです。時間制では「○月△日の15:00」といったふうに日時を指定します。時間帯制では「○月△日の15:00~15:30」といったおおまかな時間を指定して予約を入れるシステムです。それぞれ一長一短があり、また診療科目によって向き不向きがあります。
患者さん1人当たりの診察時間が比較的短く、次々と患者さんをこなしていく耳鼻科などでは順番制が向いていますが、診察時間が長くなる産婦人科などは時間帯制の方が向いています。また、一般に内科などでも時間帯制にした方がよいとされます。
というのは、「15:00~16:00」で3人などと診察人数を設定しますので、医師からしても時間配分を考えることが可能で、また患者さんもこの時間に診察を受けることができれば「オンタイム」と考えてくれるからです。
診察時間は患者さんによって長短がありますから、電車の運行ダイヤのようにピッタリとはいきません。これが「15:30」などと予約できてしまうと、患者さん側からすればたとえ「15:31」に診察が始まったとしても「遅れた」と感じてしまうものです。
診療予約システムは、待ち時間を軽減するために導入し、患者さんのイライラをなくすために導入するもの。患者さんのイライラがかえって増すようならそれは全くの逆効果です。ですから、次々と患者さんの診察が進む診療科目でないのなら、できれば時間帯制で運営するのがおすすめです。また、診療予約システムの導入時には時間帯制でも運営できるものなのかを確認してください。
運用に行き詰まる場合がある
いいことずくめのような診療予約システムですが、運用によっては行き詰まることがあるのです。
多いのは、その時間帯で想定人数をこなせないケースです。患者さんの数が増えてくると、クリニックとしては大変助かりますが、多くの患者さんをこなすために、同一時間帯での予約可能な人数を増やしてしまうのです。
例えば、1時間で3人だったのを4人にすると、患者さん1人当たりの診察時間は5分減ります。たった5分ですがこれは1人当たりにすれば25%の減少です。
これでも回るうちはいいのですが、時間がさらにタイトになると、時間のかかる患者さんが1人いるだけでドミノ式に後ろに影響を与え、患者さんに約束した時間帯が守れないという事態になります。
さらに問題なのは「予約せず直接来院する患者さんの扱い」です。
多くのクリニックでは予約優先で、飛び込みで訪れる患者さんを予約と予約の間に入れるという対応を行います。しかし、時間帯予約制でも余裕があればなんとかなるのですが、これが上記のように1時間に3人だったのを4人にして回していた、といったきつきつだった場合、予約と予約の間が見つからないことになります。
もし飛び込みの患者さんを優先すると、予約をした患者さんが怒るでしょうし、飛び込みの患者さんをいつまでも待たせることはできません。このように時間帯制の予約システムであっても運用によっては回らなくなることがあるのです。
余裕をもたせた運用を行うこと、ルールを周知徹底すること
医療施設は基本急患を断ることができないため、予約制であっても対応しなければなりません。
対応策としては、時間帯制予約にある程度の幅を持たせることです。例えば「1時間に3人なら対応に余裕がある」なら、その人数を守ります。またクリニックの診察の順番についてのルールを決めることです。
- 時間帯制で予約した患者さん優先
- 直接来院した患者さんは空き時間を見つけて入れる
- 空き時間が見つからない場合には予約の最後尾に入れる
例えば、このようなルールを作った場合には必ずこのルールを守り、予約システムに掲示するなどして患者さんに知ってもらいましょう。また、クリニックにポスターを貼るなどして、直接来院する患者さんにも周知します。
スタッフには患者さんへの対応を徹底しておきましょう。
飛び込みで来た患者さんに対しては、受付時に「弊院は予約の患者さんを先にお呼びするので診察まで時間がかかってしまう可能性があります」と伝えること。また、診察が終わっての会計時にでも「弊院が予約優先のためお待たせして誠に申し訳ありませんでした。次回来院される際にはぜひ予約システムをご利用ください。お待たせする時間が減ると思いますので」などと伝えます。このような言葉があるだけで患者さんの気持ちもずいぶん変わります。
診療予約システムは、患者さんにもクリニックにもメリットをもたらしますが、運用によっては行き詰まることがあります。できれば患者さん1人当たりの診療時間は余裕をもって設定し、直接来院する患者さんにも対応できる運用を心掛けるのがいいでしょう。
特徴
予約・受付機能
提供システム
対応言語
システムとの提携
その他機能
診療科目
特徴
予約・受付機能
対応言語
システムとの提携
提供システム
診療科目
この記事は、2021年6月時点の情報を元に作成しています。