女性の年齢別ガン罹患数を比較したとき、20代から70歳前後にかけてもっとも多いのが乳がんです。なんと日本人女性の9人に1人が乳がんにかかっているのが実態。しかも身体の他の箇所のガンとは異なり、30代から罹患数が急増するのが特徴です。それなのに、市町村による無料検診をはじめとするマンモグラフィの補助を受けられるのは40代から。これでは、未病予防のためにも若いうちから検診を受けようとは思えないですよね? しかも乳がん検診には、補助開始が遅いこと以外にも「受けたくない」と思うポイントがたくさん。一度受けて痛い思いをしたことがある人なら、「乳房を圧迫されるのはもう耐えられない」と思うこともあるでしょうし、「技師にバストを見られることに恥ずかしさを感じる、」「マンモグラフィによる被ばくが怖い」などの理由でそもそも受ける気になれない人もいるでしょう。
2004年、全身のがん検査のために考案された「DWIBS法(ドゥイブス法)」
そうした問題をすべてクリアしたのが、MRIを使った非造影乳がん検診(愛称:ドゥイブス・サーチ)。東海大学工学部 医用生体工学科 高原太郎教授によって、2004年に考案された「DWIBS法(ドゥイブス法)」を使った検診方法です。「DWIBS法」とは、MRIを使用して、身体の広範囲にわたってガンやその転移を探す全身検査。同じく全身のがん検査としては「PET-CT」がありますが、「PET-CT」は悪性腫瘍のエネルギー代謝の高さに着目して悪性腫瘍を検索するのに対し、「DWIBS」は、悪性腫瘍がある箇所は細胞密度が高いことに着目して、細胞間の水の動きをもとに悪性腫瘍を検索します。また、「PET-CT」と比べて、被ばくの心配がなく、注射や食事制限を必要としないことも特徴です。
ひとりでも多くの女性に、少しでも早く乳がん検診を受けてもらいたかった
「DWIBS法」に関する初期の2編の論文は、現在までに1,000を超える論文に引用されているほか、乳がんの抽出に関して、造影MRIと同様の感覚で撮像できることが、2015年以降の国内外の論文で報告されています。日本だけでなく海外からも注目されているこの検査法を乳がん検診に活用したのは、「痛い」「恥ずかしい」などのさまざまなネガティブな要素が原因で検診を受けていない女性が多いから。ひとりでも多くの女性が、早期に病気やその兆候を見つけられたらという想いゆえでした。
「ドゥイブス・サーチ」での検診はTシャツを着たままでOK! 検査時間はたった15分程度
▲(Cap)乳房型にくりぬかれたベッドにうつぶせになるから圧迫感なく検査できる
「ドゥイブス・サーチ」は、乳房型にくりぬかれたベッドにうつぶせになっておこないます。その状態で検査機器(MRI)の中に入って撮影しますが、撮影はTシャツを着たままでおこなうことができるので、従来の乳がん検診のように恥ずかしさを感じることがありません。また、乳房部分のベッドの凹みは大きく、乳房が自然に下垂するため、乳房の圧迫感に悩まされることがありません。検査の所要時間は約15分。病院滞在時間は1時間程度なので、仕事の繁忙期などでも予定を入れやすく、検査を後回しにすることがありません。導入している多くの病院およびクリニックは、24時間webから予約できるので、より手軽に利用しようと思えるのも特徴です。
デンスブレストであっても病変があればクリアに写るから問題なく診断できる
また、デンスブレスト(高濃度乳房)であっても、そうでない受診者と同じように鮮明な画像で診断できることも大きな特徴。日本人女性に多いとされるデンスブレストですが、従来のマンモグラフィでの検査の場合、デンスブレストだとガンやその兆候が見えづらくなってしまいます。一方、ドゥイブス・サーチでの画像診断なら、デンスブレストに左右されることがないので、ガンの発見率が格段に高くなります。内部の結節なども鮮明に写るため、まだガンになっていない良性の変化や嚢胞まで確認することができます。
豊胸術、乳房再建術を受けた人でも問題なく検診できる
また、通常のマンモグラフィのように圧迫されることがないため、豊胸や乳房再建のためにインプラントを挿入していても検診が可能。超音波検査であっても、インプラントがあると内部を検査しにくくなるため、歓迎されない場合が多いですが、ドゥイブス・サーチならほとんどの場合問題なく検査できます。
各病院・クリニックの機器の調整も、考案者である高原医師が自らおこなっている
加えて、検診時の画質を追及しているのも大きな特徴。どれだけすばらしい検査方法であったとしても、使用する機材が不十分であれば、十分な画質の画像を撮ることができないからです。何度も微調整を重ねることはもちろん、左右がアンバランスでないか、筋肉や脂肪などが邪魔して検査に必要な部分が見えにくくないか、といったこともしっかりとチェック。それだけでなく、各病院およびクリニックがドゥイブス・サーチを導入する際には、考案者である高原太郎医師自ら、機器の調整を買って出ているのだとか。ご存知のとおり、MRIは値段もピンキリですが、「開業にあたってとりあえず最低限の検査ができるものを……」とそろえた結果、必要な画像が撮れなければ元も子もありません。そうした状況も考慮したうえで、MRI導入前の病院やクリニックには相談に乗っているだけでなく、MRIの選定に関するアドバイスもしてもらえるそうです。
▲(Cap)機種と精度管理によって検出能がまったく異なることは、3つの異なる装置で撮影した同一患者のDWIBSでも明らか。しっかりとチューニングしたAのみが、きちんと撮影できている
ドゥイブス・サーチ導入済のクリニックに、検診を依頼することも可能
▲(Cap)患者に安心して検査してもらえるよう、問診も丁寧におこなっている
また、開業時点ではMRIを保有していないものの、正確な検査のためにドゥイブス・サーチを患者にすすめたい場合、検査のみ、導入しているクリニックに担当してもらうこともできます。検査の依頼を受けているクリニックのひとつが、東京都新宿区の大久保病院です。
同病院の放射線科 医長 服部貴行医師は、「ドゥイブス・サーチによって、ひとりでも多くの女性に早期に病気を発見してもらいたい。ドゥイブス・サーチを取り入れている病院が来院しやすいところにあれば、利用したいと思う人も増えると思うので、より多くの病院が導入するのが理想だと思います」とコメント。提携先クリニックなどからの検査依頼には対応していますが、同時に、「女性たちの役に立つ検査だからこそ、もっと多くの病院に導入してもらうことで、全国の女性にとって受けやすい検査になれば」と願っているのです。
いい検査をもっといい検査にしたいから、改善点を見つけたらすぐにアップデートを心がけている
また、大久保病院は、ドゥイブス・サーチを導入しているクリニックのひとつとして、患者が安心して受診できるよう、日々、改善点を見出してはアップデートを重ねていることも明かしてくれました。そのひとつが、受診者がうつぶせになった状態でも辛いと感じないよう、肋骨部分が当たる箇所のクッションシートの厚みを増したこと。MRIの受診時は、左右の乳房はカップ状に凹んだ部分に収まるため、うつ伏せに寝ても痛みを感じることがありませんが、人によっては、右胸と左胸の間の骨が圧迫されると感じる場合もあったのだとか。その声を聴いた技師たちは、早速独自にその部分を改良。クッション性のあるシートを重ねることで、やさしい肌あたりを実現しました。
各クリニックからのフィードバックは他の病院や医療機器メーカーにもシェア。みんなでよりよい検査を実現している
そうした改善の一つひとつによって、女性たちにとってより安心して利用できる検査になっていることはいうまでもありません。加えて前述の通り、高原医師自ら、ドゥイブス・サーチを導入しているクリニックに定期的に足を運び、機器を調整しているだけでなく、現場のスタッフからフィードバックをもらい、よいアイディアは他の病院にもシェアしていることも大きなポイント。横のつながりだけでなく、医療機器メーカーとのつながりも大切にしながら、みんなで女性たちの未病予防のためにできることをアップデートし続けているのです。
ドゥイブス・サーチにも最適なMRI装置のひとつが、GEヘルスケア・ジャパンの製品
▲(Cap)大久保病院が導入しているGEヘルスケア・ジャパンの「SIGNA explorer」は「ドゥイブス・サーチ」にも最適
高原医師が懇意にしている医療機器メーカーのひとつが、大久保病院でも使用されているMRI装置を製作しているGEヘルスケア・ジャパン。同社が製造する1.5テスラのMRI装置は、SIGNA creator、SIGMA explorer、SIGAMA artistの3タイプがありますが、いずれのタイプもドゥイブス・サーチの検診には適しているとのことで、大久保病院でも、2つめのレベルに該当するexplorerを採用しています。
考案者、導入するクリニック、そして医療機器メーカーの3者が一体となって、常に女性たちの健康のために改良を重ね続けている「ドゥイブス・サーチ」。導入をきっかけに、ひとりでも多くの患者さんに笑顔をもたらすことができるようになるだけでなく、よりよい医療について考える仲間が増えるメリットもあるかもしれませんね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年5月時点の情報を元に作成しています。