医師としてのキャリアを歩み始めてしばらくすると、「もっと年収を増やしたい」「もっとやりがいを感じられる仕事を任されたい」など、キャリアのステップアップを考え始める人も多いもの。しかし、力量不足なまま大きな病院に移っても、実力が追い付かないこともあるかもしれません。では、医師にとってベストな転職のタイミングとはいつなのでしょうか? さっそく検証していきましょう。
医師はどんなときに転職したくなる?
まずは、医師はどんなときに転職を考えるのかを考察します。医師が転職を考える理由としては、大きく5つの理由が考えられるでしょう。
1.年収を増やしたい
ひとつめの理由として考えられるのは、医師に限らずどんな職業の人でも同じですが、「年収を増やしたい」ということでしょう。中には、同世代の医師の給与と比較した結果、自分の給与が少ないと感じられるようになる人も。また、結婚を機に家族が増えたことで、より高い水準の給与を望むようになったというケースもあるでしょう。
2.将来独立するための準備をしたい
将来的に開業したり、実家のクリニックを継ぎたいと考えていたりするなら、病院経営について学ぶ機会がほしいと思って当然。大学病院や大規模な病院の勤務医として働いていては、病院経営について学ぶことはできないため、小規模な病院に転職したいと考えるケースがあります。病院経営について学びたいなら、スタッフが10名程度の中小規模の病院に勤務するのがベスト。今まで通り患者ともしっかり向き合いながら、経理会計財務や保険制度、マネジメントまで学びやすいからです。
3.専門分野を究めたい
2年間の研修医生活を経て、さらにその後、数年間の勤務医経験を積むうち、自らが究めたい道が明確になってくるケースも多いでしょう。その場合、現在の職場に大きな不満がなくても、より理想的な職場を求めて転職活動をスタートすることも。「このままここで働き続けても、自分の理想とする将来に近づけない」と考え、まずは専門医や認定医の資格取得を目指して転職する医師も多いです。
4.ワークライフバランスを保って働きたい
医師の仕事は肉体的にも精神的にもハードなもの。緊急手術やオンコール、当直などで気が休まらないことも多く、ゆとりを求めて転職するケースもあります。また、子どもが生まれたことで家族との時間を大切に生きたいと思うようになった、家族の介護をする必要がでてきた、などの理由から、勤務の負担軽減を望む場合もあります。
5.職場での人間関係がうまくいっていない
とりわけ大学の医局においては、人間関係に頭を悩ませる人は多い傾向にあります。「理事長とソリがあわない」「医局長とうまくいかない」などが原因でストレスが肥大化すると、風通しのよい職場に転職したくなって当然。医局を離れるとキャリア面でのデメリットも生じますが、ギスギスしながら仕事し続けるより、精神衛生的にもよいに違いありません。
転職するならいつがいい? 自分にとってのベストタイミングを知りたい!
続いては、転職するならどんなタイミングがベストなのかを探っていきます。「思い立ったが吉日じゃないの?」と思うかもしれませんが、たとえば現状の自分のスキルに自信が持てないままだと、転職するには早いことも考えられますし、専門医資格を取得する前なら、転職の条件がよくないこともあるでしょう。そのため、転職を希望するなら、人材会社や医師の先輩などにも相談しながら、タイミングを見計らうのがおすすめ。転職先を見つけるルートとしては、「医局や知人からの紹介」「人材会社からの紹介」「希望する医療機関に直接応募」などがありますが、いずれの場合も、3か月から6カ月、長くて1年程度かかるものです。
医局所属ではなく、現職の退職が決まっているなら、退職のタイミングに合わせて新しい職場に入職できるように転職活動を始めるのがベスト。
また、医局人事が秋に動くケースもあることを考えると、翌4月の転職を目標に、半年前の9月から転職活動を開始するのも一手。現在、医局所属でない場合、情報収集や面接は半年前程度からスタートして、転職3か月前には現職場に退職の以降を伝えられるといいでしょう。
現在、医局に所属しているなら、異動などの可能性もあるため、いろんなケースを想定しながら残留したいか転職したいかよく考えつつ、1年前から情報収集するのがベスト。転職先となる医療機関も人事の動きには理解があるため、春から初夏頃に翌春入職の面接をおこなうこともあることを覚えておきましょう。
ライフステージの変化に合わせて転職したくなる場合もある
医局の人事なども踏まえながら、医師が転職を考えるタイミングを考察してきましたが、特に女性の場合は、ライフステージの変化にともない、転職を考える人も多いもの。事実、厚生労働省が実施した「医師の勤務実態および働き方の意向などに関する調査」によると、男性医師は育児中もそれまでと変わらない働き方を希望する割合が高い一方、女性医師の多くは、時間短縮勤務や勤務日数減、業務内容軽減を希望しています。さらに、出産を機に休職・離職を選択する常勤の女性医師は1割にものぼり、常勤の女性医師はおよそ4人に1人が休職・離職しています。
では、転職の場合はどんな条を求めているかというと、「院内に託児所があること」「急な欠勤のフォロー体制が整っている」など。また、非常勤として週に数日だけ出勤したり、日当直のない検診センターに転職したりといったケースも多いです。
転職によって後悔することもある
続いては、「転職して後悔するケース」を見て生きましょう。医師が転職して後悔する要因は、大きく2つ挙げられます。ひとつは、転職先の情報収集が不十分であったこと。「快適に働ける職場であるかどうか」などは、求人情報だけではわかりにくいもの。失敗を防ぐためにも、医療機関と太いパイプを持っている転職エージェントなどに相談して、事前に病院見学を設定してもらうのもおすすめです。
そしてもうひとつは、年収UPや勤務条件クリアなどを優先しすぎたケース。年収は上がっても労働時間が増えて体調を崩しては元も子もありませんし、反対に、休みはしっかりとれるようになったもののキャリアアップが遠のいた結果になっても残念。こうした失敗を避けるためにも、転職前に改めて自身のキャリアプランについて考えてみるといいでしょう。
失敗しない転職のコツとは?
では、転職に失敗しないためにはどんなことに気を付けるべきなのでしょうか?
まず、転職にあたっては、情報収集や履歴書・職務経歴書の作成、面接、条件交渉などにかなりの時間を取られます。仕事から帰宅した後や休日に準備を進めることとなり、体力的にもハードなので、ゆとりをもって準備できるよう、早めに転職活動をスタートするのが望ましいでしょう。
準備を進める上での注意点としては、「転職したい理由」の背景にある、現在の職場に関する不満要素などを洗い出し、どんな条件を満たしていたら理想の職場であるのか、どんな職場でなら自分のキャリアを伸ばしていけるのかを考えるのが大切だということ。そうでなければ、転職先でもまた同じように不満が膨らむ可能性があります。
また、希望に合致する求人がなかなか出なくても、焦らず待つことも大切。万が一、とにかく今の職場をすぐにでも辞めたいという気持ちがある場合は、フリーランス医として働きながら次の職場を見つけるという手もあります。その間、福利厚生に与ることはできませんが、ゆっくりと落ち着いて理想の職場を探したい人にはおすすめの方法です。
この記事は、2021年6月時点の情報を元に作成しています。