訪問診療は医療保険適用?それとも介護保適適用?

患者需要の変化に合わせて訪問診療を検討している医師の方々は、年々増加しています。そして、訪問診療を行うには、外来とは異なるさまざまな算定方法を理解しておく必要があります。算定内容は、自院が在宅療養支援診療所か否か、また、患者の病状、訪問回数、訪問時刻などによっても変化するため、医療事務も含めた情報共有・研修が欠かせません。

本記事では、訪問診療が適用される保険や診療点数について、具体的な患者の事例をもとにご紹介します。以下をご覧になり、自院がこれから在宅療養支援診療所となるべきかどうかについても、考えるきっかけとなれば幸いです。

目次
  1. 訪問診療の提供体制 
  2. 訪問診療は医療保険が適用される
  3. 訪問診療が介護保険適用になるケース 
  4. 事例 高齢末期がん患者の場合
  5. 訪問診療を行うにあたり、在宅療養支援診療所になるべきか? 

訪問診療の提供体制 

訪問診療とは、通院が困難で自宅などの居宅での療養を希望する患者のために、居宅に伺い診療を行うことをいいます。
訪問診療の対象となる患者は、自宅などで療養中であり、1人では通院が困難な方です。患者が療養しているご自宅や老人ホームなどの施設を訪問して、診療や治療を行います。
急変の時などに、患者や家族の要請を受けてから伺うのが「往診」であるのに対し、ケアプランをたてて、2週間に1回、月に2回など、定期的に伺うのが「訪問診療」となります。(※1)

また、在宅患者(訪問診療)の診療状況を見てみると、「健康相談」「血圧・脈拍の測定」「服薬援助・管理」のみは45%で、残りの55%は「点滴・中心静脈栄養・注射」等何らかの処置・管理等も含んだ診療が行われているようです。(※2)
訪問診療は、24時間365日対応の在宅療養支援診療所が主に行っており、往診や在宅看取りに関しては、それぞれ全体の約20~40%が在宅療養支援診療所でない一般の診療所によって提供されています。(※3)

さらに15歳未満の小児に対して訪問診療をしている医療機関は全体の2%と少ないのが現状です。(※4)

近年、訪問診療を行う医療機関は増加傾向にありますが、在宅での療養を希望する患者も増えており、さらなる在宅医療を行う診療所が増えていくことが望まれます。(※5)
高齢者世帯の構造の推計を見ても、単独世帯や夫婦のみの世帯が増加していくことが予想されています。また高齢者向け住まいや施設も多く存在しており、今後は「地域で支えていく体制」がいかに必要であるかが分かります。(※6)

訪問診療は医療保険が適用される

在宅医療を実施した時に請求できる医療費は、大きく下記に分けられます。

  • 往診・訪問診療料など
  • 在宅時医学総合管理料と各種指導管理料
  • 検査/注射/投薬/処置料など
  • 情報提供書/指示書料
  • ターミナルケアに関する費用

このように、訪問診療や往診を行った場合は基本的に、医療保険が適用されます。

以下2点の診療報酬について簡単に見ていくと、

  • 「在宅患者訪問診療料」は、訪問計画に基づいて行った場合に、原則週3回を限度に算定されます。末期の悪性腫瘍患者や一部の難病患者、人工呼吸をつけている患者の場合、急性憎悪・終末期などで一時的に頻繁な訪問診療の必要性がある場合には、限度日数が違ってきます。また、乳幼児加算・幼児加算、患家診療時間加算、在宅ターミナルケア加算、在宅看取り加算などのさらなる加算も可能となります。
  • 「在宅時医学総合管理料(在医総管)」、「施設入居時等医学総合管理料(施医総管)」は、2つとも計画的な医学管理の下で月2回以上の定期的な訪問診療を行っている場合に、月1回算定できます。患者が療養している施設の基準によっても診療報酬が変わってきます。

このように診療報酬の算定の仕方は、施設基準や患者の病状、訪問回数、訪問時刻などによって異なります。
そのため、外来を中心として行っている医療機関にとって、在宅の診療報酬は難しい、ややこしいものと思われることが多いです。(※7)

訪問診療が介護保険適用になるケース 

基本的には、医療サービスには医療保険が適用され、介護サービスには介護保険が適用されます。
ただし、「居宅療養管理指導」においては、介護保険が適用となります。
居宅療養管理指導は、医師や歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士等が、通院が困難な患者に対して、居宅を訪問して、療養上の管理や指導を行うことです。(※8)居宅療養管理指導の対象患者は要介護者であり、要支援の方は、「介護予防居宅療養管理指導」が適用されます。算定要件は、自宅などの居宅に月1回以上、訪問診療あるいは往診を行っていること、ケアマネージャーへの定期的な診療情報の提供を行うことが条件です。

ここで大切なのが、「在宅時医学総合管理料(在医総管)」、「施設入居時等医学総合管理料(施医総管)」を算定する場合(月2回を限度)は、「居宅療養管理指導費(Ⅰ)」ではなく、「居宅療養管理指導費(Ⅱ)」が適用となり、報酬単価が異なる点です。(※9)

単純な考え方をすれば、月に2回以上など定期的な訪問診療を行うことを前提とし、24時間365日の対応可能な診療体制を提供し、訪問のたびに医師としての医療行為を行うのであれば、「居宅療養管理指導費(Ⅱ)」が適用となる、ということです。「居宅療養管理指導費」にはⅠとⅡがありますが、点数としてはⅠの方が高くなります。

単一建物居住者1人(1つの個宅で1人の患者を訪問する)の場合、Ⅰは514点、Ⅱは298点です。(※10)

参考:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 令和3年度介護報酬改定における改定事項について」P.171 居宅療養管理指導 基本報酬

しかしこれとは別に、「厚生労働大臣が定める状態の患者に対し、月2回以上訪問診療を行っている場合で、単一建物診療患者が1人の場合(5,400点などの医療保険請求を行うことができる)」は、「居宅療養管理指導費」のⅡに該当します。(※11)

このように自宅などの居宅で療養生活をする場合、患者は医療保険と介護保険の両方を使い分けながらサービスを利用しています。これらを踏まえた上で、一つの事例を紹介します。

事例 高齢末期がん患者の場合

<症例>
70歳代女性、胃がん、高血圧、子家族と同居

<経過>
夫と死別後、子家族と同居しながら「孫の世話をする」ことを生きがいとしていた。近隣の店舗、自らの受診(高血圧、甲状腺機能亢進症)などのほかは、孫の習い事に同行するなど、外出をすることも多かった。かかりつけ医(病院)へは定期的に受診していたが、子からの「やせてきた」という指摘を受け、3年ぶりに胃カメラ検査を行ったところ、胃がんステージⅣと診断された。診断後、半年間は通院をメインとした抗がん剤治療を行ったが、治療効果が得られなくなった頃、自宅の敷地内で転倒し救急搬送、大腿骨頸部骨折と診断され入院。整形外科では手術適応は無いと診断され、本人の希望もあり在宅療養となった。
在宅療養を行うにあたり、介護ベッドや車いす、ポータブルトイレ等の福祉用品が必要であり、各サービスを利早急に利用する必要性があったため、ケアマネージャーが介入し、要介護認定の申請と並行しながら、各サービスの利用をスタートさせた。

この患者は、訪問診療と訪問看護、訪問介護と福祉用品のレンタルなど、多くの社会資源を必要とし、医療保険と介護保険を使い分けたケースです。前者は医療保険が適応となりますが、24時間365日対応可能とすることと、ケアマネージャーを含む各機関とも密な情報共有を行う必要もあったことから、「居宅療養管理指導費Ⅱ」が適用されました。

訪問診療を必要としたのは、最期を迎える緩和ケア病院へ入院するまでの3か月あまりでしたが、週1回の訪問診療では、バイタルの確認、診察、処方箋の発行などのほか、仙骨部にできた褥瘡の処置も行っています。

訪問診療を行うにあたり、在宅療養支援診療所になるべきか? 

在宅療養支援診療所の施設基準は過去の記事(「在宅医療が推進された背景は?在宅医療を始める前に知っておきたい現状」 5.在宅医療を支える事業所)でもお伝えしましたが、このいくつかの基準を満たせば、「在宅療養支援診療所」として申請できますし、在宅療養支援診療所でなくても、訪問診療を行うことは可能です。

在宅療養支援診療所として申請をすべきかどうか、悩む診療所も多いと思われますが、まずは、施設の状況や患者の病状によって判断すべきこととなります。
現状としては、訪問診療を必要する患者がある程度いる場合や、重症度が高く24時間常に対応が必要な在宅患者がいる場合は、在宅療養支援診療所として申請するケースが多くなります。
ただし、24時間365日対応の「在宅療養支援診療所」として稼働するには医師だけの力では到底実現できません。看護師、地域の医療介護従事者、地域の連携病院などの協力が不可欠です。
もともと訪問診療対象となる患者が少なく、24時間対応の必要性があまりない患者が多い場合は、必ずしも在宅療養支援診療所である必要はありません。しかし、在宅療養支援診療所として申請すれば、診療報酬に違いが出てきます。

こうした社会資源の充実度は、当該地域内で他の機関の状況を把握したり、他の地域と比較したりすることでも必要性が見えてきます。自分の地域のニーズに見合った医療を提供できる「在宅療養支援診療所」となりえるかどうかが、判断の分かれ道かもしれません。


参考文献

※1:厚生労働省「資料2 在宅医療と連携について」P.2 往診・訪問診療の状況
※2:厚生労働省「資料3−2 在宅患者の状況等に関するデータ」P.7 患者の診療状況について
※3:厚生労働省「中医協総 - 3 2 9 . 1 . 1 1 在宅医療(その1)」P.30 属性による在宅医療サービスの提供量の違い
※4:厚生労働省「中医協総 - 3 2 9 . 1 . 1 1 在宅医療(その1)」P.33 15歳未満の小児に対して訪問診療をしている医療機関
※5:厚生労働省「中医協総 - 3 2 9 . 1 . 1 1 在宅医療(その1)」P.25 在宅医療の提供体制 ~日常の療養支援~
※6:厚生労働省「中医協総 - 3 2 9 . 1 . 1 1 在宅医療(その1)」P.7 高齢者の世帯構造について〜P.8 高齢者向け住まい・施設の定員数
※7:東京医師会 「4章在宅医療における診療報酬」P.130  診療報酬体系・点数〜P.145 表2-1 在宅患者診療・指導料
※8:厚生労働省「居宅療養管理指導
※9:東京都医師会「東京医師会 3章介護保険制度と医療
※10:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 令和3年度介護報酬改定における改定事項について」P.171 居宅療養管理指導 基本報酬
※11:東京医師会 「4章在宅医療における診療報酬」P.266  介護保険と医療保険の区分け、厚生労働省 「(平成二十年三月五日) (厚生労働省告示第五十九号) 診療報酬の算定方法」第2章 特掲診療料、第2部 在宅医療、第1節 在宅患者診療・指導料、C002 在宅時医学総合管理料(月1回)

執筆 CLIUS(クリアス )

クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
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