患者さんの未収金、回収する方法は?

クリニックにとっては患者さんの診療代金が売上。これが入ってこないと経営の問題になります。数は多くないものの、患者さんによっては「お金がない」などの理由で窓口での支払いを拒否したり、音信不通になったりといったケースがあります。このような未収金が発生した場合、どのようにすればいいのでしょうか?

目次
  1. 未収金が発生した場合の対処方法とは?
    1. 1.「催告状」を送付するなどして支払いを促す
    2. 2.「少額訴訟」を起こす
    3. 3.裁判所から「督促状」を送ってもらう
    4. 4.「民事調停」を行う
    5. 5.「民事訴訟」を行う
    6. 6.「強制執行」を申し立てる
    7. 7.「保険者の強制徴収制度」を利用する
  2. まとめ

未収金が発生した場合の対処方法とは?

未収金が発生した場合の鉄則は、すぐに金額を把握、確認して対処に動きだすことです。未収金は3年経過すると消滅時効で支払わなくてもいいことになってしまいます(2020年4月1日以降に発生した医療費の場合は5年)ので、スピードが重要です。

未収金を支払ってもらうためには以下のような方法があります。

1.「催告状」を送付するなどして支払いを促す

まず、未払い者に連絡を取って、支払いを催促します。電話だけではなく、書面で請求書を送付します。この請求書、催促についての書状は弁護士のチェックを受けておくのがいいでしょう。債権回収に当たりますので、法に則った文書であることが重要で、「内容証明付催告状」にします。「内容証明付催告状」は公的な証明力を持ちます。さらに、未払い者に実際に会って交渉を行います。

2.「少額訴訟」を起こす

裁判所に訴える方法ですが、60万円以下の支払いを求める紛争において利用できる「少額訴訟制度」を用います。この少額訴訟の場合には、弁護士は必要ありません。基本1回の口頭弁論だけでその日のうちに判決が出ます。

3.裁判所から「督促状」を送ってもらう

60万円を超える未収金の場合には、裁判所から「督促状」(支払督促)を送付してもらうという方法があります。これは、債権者(個人開業の場合は医師・クリニック院長/医療法人の場合はその法人)の申し立てに応じて、裁判所が未収金の支払いを命じる督促状を未払い者に送付する制度です。書類審査だけで行ってもらえるので、クリニックの手間も多くはありません。また費用も郵送代を負担する程度です。督促状受け取りから2週間以内に未払い者が異議を申し立てない場合には、債権者は強制執行手続きを取ることが可能になります。

4.「民事調停」を行う

裁判所に申し立てを行い、未払い者、債権者(同上)の間に第三者(民間から選ばれる調停委員)を入れ、話し合って解決を図ります。調停によって合意に達すれば、その内容が記載された調停調書が作成されます。この調停調書は裁判の判決と同じ効力を持ちます。

5.「民事訴訟」を行う

未払い者を相手取って裁判を起こします。費用と時間がかかりますが、勝訴すれば、⑥の強制執行を申し立てることでき、強制執行によって未収金の回収も可能になります。

6.「強制執行」を申し立てる

「強制執行」を申し立てて、未払い者の財産を差し押さえ未収金分の債権を回収します。ただし、これが行えるのは勝訴判決を得たりなど法的な裏付けを得た後です。また、債務名義(勝訴判決・和解調書・調停書など)の正本、送達証明(未払い者が左記の債務名義を確かに受け取ったという証明)、執行文(強制執行が可能だという証明/少額訴訟判決、仮執行宣言付き支払い督促の場合は不要)の3つが必要です。

7.「保険者の強制徴収制度」を利用する

社会保険診療の場合には、医療費は被保険者(患者さん)が3割、保険者が7割を負担します(6歳以上70歳未満の場合)。「お金がない」などと患者さんが言った場合には、窓口で支払われないこの3割(一部負担金といいます)が未収金になってしまいます(7割分はレセプトで保険者に請求するため)。実は、医療機関が回収できない場合、一部負担金は、医療機関に代わって保険者が徴収する、と法律で決まっているのです。

以下をご覧ください。

「国民健康保険法」第四十二条第2項

保険医療機関等は、前項の一部負担金(第四十三条第一項の規定により一部負担金の割合が減ぜられたときは、同条第二項に規定する保険医療機関等にあつては、当該減ぜられた割合による一部負担金とし、第四十四条第一項第一号の措置が採られたときは、当該減額された一部負担金とする。)の支払を受けるべきものとし、保険医療機関等が善良な管理者と同一の注意をもつてその支払を受けることに努めたにもかかわらず、なお被保険者が当該一部負担金の全部又は一部を支払わないときは、市町村及び組合は、当該保険医療機関等の請求に基づき、この法律の規定による徴収金の例によりこれを処分することができる。

参照・引用元:「e-Gov」「国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)」

クリニックにとって手間もかからず助かるのは、この「保険者の強制徴収」なのですが、上掲の法文にある「保険医療機関等が善良な管理者と同一の注意をもつてその支払を受けることに努めたにもかかわらず」という文がくせ者。

支払ってもらえるように十分に努力したのに駄目な場合は……といっています。つまり、⑦の強制徴収制度を利用するためには、支払いを受けるべくクリニックが努力したという実績がないといけません。ですので「①「催告状」を送付するなどして支払いを促す」を実行したかどうかが問われます。また、⑦に頼っても徴収できたケースは少ないことが知られています。

1~7の対処をご紹介しましたが、あまりに未収金が大きな金額になる場合には、5.「民事訴訟」を視野に入れて、1.「催告状」を送付するなどして支払いを促すを行うことをお勧めします。

■未収金がそもそも発生しないようにするための対応策

未収金を発生させないように対応策を講じておくことも大事です。

例えば「京都私立病院協会 未収金対策委員会」では、医療機関で未収金が発生するのを防ぐために、以下のような対策を推奨しています。大変参考になるので、引用してご紹介します。

  1. 未収金対策に関する職員教育(発生防止対策と連帯意識の徹底)
  2. 保険証の確認(1回以上/月)
  3. 預り金や前金(保証金)の徴収
  4. 入院時誓約書(連帯保証人)の差し入れ
  5. 退院時全額精算の制度化
  6. 診療前(外来)の過去未納金清算の制度化
  7. クレジットカードやデビットカードによる支払い
  8. 公的救済制度等の利用

参照・引用元:「京都私立病院協会 未収金対策委員会」「未収金対策マニュアル」

スタッフの教育は普段から行い、クリニック全体で未収金に対処できるようにしておくのが重要といえます。

まとめ

「医は仁術」などといわれますが、医師もかすみを食べて生きるわけにはいきません。未収金が発生しても泣き寝入りはいけません。今回ご紹介したように、すぐに対処に動きだすのが正解です。また「転ばぬ先の杖」として、上記の予防策も検討しておきましょう。

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