これから在宅医療を行っていこうと考えているクリニックは、在宅医療における診療報酬について調べることが多いのではないでしょうか。そこで今回は、在宅診療の主な診療報酬項目や加算される点数について説明していきます。
在宅医療における診療報酬体系
まずは、在宅医療における診療報酬体系について説明します。在宅医療の診療報酬体系は、提供した「診療報酬項目」を積み上げていく出来高算定構造になっています。下記の表のうち、「在宅患者訪問診療料(訪問診療料)」「往診料」と、「在宅時医学総合管理料」または「施設入居時等医学総合管理料」が基本報酬となっています。
さらに、患者の状態に応じて行う医療行為や患者への指導、訪問看護師などへの指示書をはじめとする書類作成などを行うと、基本報酬に加算されていくことになります。
在宅患者 訪問診療料 (訪問診療料) | ・患者の同意を得て、計画的な医学管理のもと、定期的に訪問して診療した場合に算定 ・同一日に同一建物内で訪問診療を2人以上の患者に行ったかどうかで点数が異なる ・在宅ターミナルケア加算、看取り加算、死亡診断加算などの加算点数もある |
往診料 | ・患者またはその家族などからの直接の求めによって往診した場合に算定 ・緊急、夜間・休日、深夜の往診に対する加算がある ・初診料、再診料、外来診療料などと併算定可能 |
在宅時医学総合管理料 または 施設入居時等医学総合管理料 | ・患者の同意を得て、計画的な医学管理のもと、月1回以上継続して定期的な訪問診療を行った場合に算定 ・患者の居住場所、訪問診療の回数、患者の重症度、同じ建物内で在宅時医学総合管理料または施設入居時等医学総合管理料を算定する患者の数、医療機関の類型によって点数が異なる ・包括的支援加算、継続診療加算、在宅移行早期加算、頻回訪問加算などの加算がある |
在宅療養指導管理料、 在宅酸素 在宅人工呼吸、 在宅中心静脈栄養、 在宅成分栄養、 在宅療養指導、 管理材料加算 | ・特定の診療行為や処置のために指導管理を行った場合に算定 ・ひとりの患者に複数の指導管理を行う場合、主たる指導管理の1項目についてしか算定できない ・在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料などと併算定不可の報酬項目がある ・各指導管理に必要な材料を使用した場合などに算定 ・在宅療養指導管理料を算定しない指導管理についても、要件を満たせば材料加算は算定できる |
特定保健医療材料料、 薬剤料、 検査料、 処置料 など | ・在宅患者診療、指導料、在宅療養指導管理料の包括範囲外となる検査や処置を行った場合などに算定 |
その他の 診療報酬 | ・訪問看護指示料 ・衛生材料等提供加算 ・特別訪問看護指示加算 ・在宅患者訪問注射管理指導料 ・在宅患者訪問看護 ・指導体制充実加算 ・介護職員等喀痰吸引等指示料 ・在宅患者訪問栄養食事指導料 ・在宅患者訪問褥瘡管理指導料 |
介護報酬 居宅療養管理指導費 | 要支援・要介護認定を受けている患者に対して、療養上の指導を行い、ケアマネジャーに情報共有した場合に算定。職種によって単位数、算定回数の上限が異なる |
在宅患者訪問診療料の点数は?
続いては、上記表の「在宅患者訪問診療料」の点数をみていきます。
在宅患者訪問診療料は、ひとりの患者に対して1つの保険医療機関の保険医の指導管理のもとに継続的に行われる訪問診療について、1日につき1回限り算定可能な「在宅患者訪問診療料1」と、
患者の同意を得て、計画的な医学管理のもと、主治医として定期的に訪問診療を行っている保険医が属する他の保険医療機関の求めを受けて、当該他の保険医療機関が診療を求めた傷病に対して訪問診療を行った場合に、
求めがあった日を含む月から6月を限度に算定される「在宅患者訪問診療料2」の2つに分けられます。
それぞれの点数は以下の通りです。
【在宅患者訪問診療料1】
- 同一建物居住者以外の場合:888点
- 同一建物居住者の場合:213点
【在宅患者訪問診療料2】
- 同一建物居住者以外の場合:884点
- 同一建物居住者の場合:187点
そのほか、在宅で患者を看取った場合に算定される「看取り加算:3,000点」、患者の自宅で死亡診断を行った場合に算定される「死亡診断加算:200点」、「乳幼児加算:400点」などもあります。
参照: 厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療、訪問看護)」より一部抜粋
往診料の点数は?
往診料の点数は、基本的には720点と設定されています。ただし、緊急、夜間・休日、深夜の往診に対する加算もあります。
参照: 厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要 在宅(在宅医療、訪問看護)」より一部抜粋
在宅時医学総合管理料または施設入居時等医学総合管理料の点数は?
在宅時医学総合管理料または施設入居時等医学総合管理料の点数は、訪問診療の回数、患者の重症度などによって異なります。また、下記の加算についても設定されています。
オンライン在宅管理料
- 在宅時医学総合管理料に算定可能です。月2回以上訪問診療を行った場合も算定できます。
- 在宅時医学総合管理料の初回算定月からの期間およびオンライン診療実施前の同一医師による訪問診療期間が3か月あれば、要件を満たせば毎月算定可能です。5人以下の医師のチームで在宅医療を担当している場合、一定の要件のもと事前の対面診療を行っていない医師でもオンライン在宅管理料を算定できます。
継続診療加算(クリニックのみ):216点
在支診の届出を出していないクリニックで外来診療4回以上の後に訪問診療を開始した場合、一定の要件を満たせば算定可能です
在宅移行早期加算:100点
退院後に在宅医療を開始した患者に対して、在宅時医学総合管理料または施設入居時等医学総合管理料算定月から3か月以内に加算を算定できますが、在宅に移行してから1年以降の患者には算定できません。
頻回訪問加算:600点
厚生労働大臣が定める状態等に該当する患者に対して、1か月に4回以上の往診または訪問診療を行い、必要な医学管理を行った場合に加算できます。
参照: 在宅医療における診療報酬について
在宅療養指導管理料の点数は?
在宅療養指導管理料は、特定の診療行為・処置が必要な患者に指導管理を行った場合に算定することができますが、ひとりの患者に複数の指導管理を行っても1項目しか算定できません。
また、「在宅療養指導管理材料加算」として、在宅療養指導管理に基づき、患者に支給した医療材料等の費用が加算されます。
その他の診療報酬の点数は?
その他の主な診療報酬としては以下が挙げられます。
訪問看護指示料:300点
医師が訪問看護の必要性を認めて、患者の同意を得て、患者が選定する訪問看護ステーションなどに訪問看護指示書を交付した場合、月1回に限り算定されます
衛生材料等提供加算:80点
必要な衛生材料、保険医療材料を提供した場合に算定されます
特別訪問看護指示加算:100点
急性憎悪・終末期・退院直後等によって一時的に週4日以上の訪問看護が必要であると判断され、特別訪問看護指示書を交付したときに算定されます
在宅患者訪問注射管理指導料:100点
医師が週3日以上の点滴注射の必要性を認めて在宅患者訪問点滴注射指示書を訪問看護ステーションなどに交付して必要な指導管理を行った場合に算定されます
在宅患者訪問看護・指導体制充実加算:150点
自院単独または他院もしくは訪問看護ステーションとの連携によって24時間訪問看護を提供できる体制の確保等の基準を満たして届出していれば月に1回に限り算定可能です
介護職員等喀痰吸引等指示料:240点
医師が介護委職員による喀痰吸引や経管栄養の必要性を認めて、介護事業者などに対して介護職員等喀痰吸引指示書を交付した場合、3か月に1回算定できます
在宅患者訪問栄養食事指導料(点数は、単一建物診療科がの人数などによって異なる)
医師の指示に基づいて他院の管理栄養士や栄養ケアステーションの管理栄養士が訪問して栄養管理指導を行った場合に算定できます
在宅患者訪問褥瘡管理指導料:750点
重点的な褥瘡管理を行う必要が認められる 患者に対して、当該患者の同意を得て、当該保険医療機関の保険医、管理栄養士または当該保険医療機関以外の管理栄養士および看護師または連携する他の保険医療機関等の看護師が共同して、褥瘡管理に関する計画的な指導管理を行った場合には、初回のカンファレンスから起算して6月以内に限り、当該患者ひとりにつき3回に限り算定されます
在宅医療の加算点数は随時見直されている
在宅医療の加算点数は、必要に応じて随時変更されたり新設されたりしているので、自院が在宅医療を導入するタイミングがまだ先になりそうなら、その時点で、変更点や新設の有無についても確認することが大切です。
たとえば令和4年度の診療報酬改定においては、在宅医療における小児がん診療のニーズが高まっていることを踏まえて、「小児加算」として1,000点が新設されていますし(ただし週1回に限る)、
ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた看護師が、医師が行う死亡診断等を補助した場合、「遠隔死亡診断補助加算」として1,500点が加算されることになっています。
そのほかにも新設された項目がいくつかありますが、それだけ在宅医療のニーズが高まっているということなので、これから開業したいと考えているドクターは、自院の在り方について今一度考えてみてはいかがでしょうか?
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
特徴
対応端末
システム提携
提供形態
診療科目
この記事は、2023年9月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
他の関連記事はこちら