最近ではクリニックで人を新規雇用するのが難しい状況となっています。そもそも応募が少なく、せっかく雇用できても「定着しない」という悪循環。小規模のクリニックほど人が抜けると苦しい状態になります。
ですので、医師・クリニック院長としては、まず「離職率」を下げる努力をしなければなりません。離職率を下げるために利用できる「補助金」があるのをご存じでしょうか? それが「職場定着支援助成金」です。
「職場定着支援助成金」とは?
「職場定着支援助成金」は、魅力ある職場を作り、労働環境を良くしようとする事業主や事業協同組合等に、そのための資金を援助しようというものです。「労働環境が良くなれば離職率も下がるでしょう」というわけです。
「職場定着支援助成金」には以下の2つのコースがあります。
- 個別企業助成コース
- 中小企業団体助成コース
中小企業団体助成コースは事業協同組合等を対象としていますので、クリニックで活用するならの「個別企業助成コース」です。
この「個別企業助成コース」では、以下のような雇用管理制度を導入・実施した場合に、「制度導入助成」として「10万円」が支給されます。
評価・処遇制度
評価・処遇制度、昇進・昇格基準、賃金制度、諸手当制度のいずれかの制度を導入する
研修制度
職務の遂行に必要な能力等を付与するため、カリキュラム内容、時間等を定めた職業訓練・研修制度を導入する
健康づくり制度
人間ドック、生活習慣病予防検診、腰痛健康診断のいずれかの制度を導入する
メンター制度
キャリア形成上の課題及び職場における問題の解決を支援するため、メンター制度を導入する
短時間正社員制度(保育事業主のみ)
従業員の多様な働き方を推進するため、短時間正社員制度を導入する
参照・引用元:『厚生労働省』「職場定着支援助成金」
上記の制度が功を奏して離職率が低下すると「目標達成助成」として「60万円」の支給を受けることができます。
「目標達成助成金」が支給される「低下させるべき離職率」とは?
「離職率低下」の目標は、従業員※の数ごとに以下のように設定されています。
従業員規模 | 離職率割合 |
1~9人 | 15% |
10~29人 | 10% |
30~99人 | 7% |
100~299人 | 5% |
300人以上 | 3% |
※ここでいう従業員は、正確には「対象事業所における雇用保険一般被保険者の人数」です。
受給のための手続き
助成金を受給するためには以下の手続きを行います。
雇用管理制度の導入に係る「雇用管理制度整備計画」を作成し、計画開始6カ月~1カ月前までに必要な書類を添え、管轄の労働局に認定申請を行います。
- 計画の認定申請
(雇用管理制度の導入に係る「雇用管理制度整備計画」を作成し、計画開始6カ月~1カ月前までに必要な書類を添え、管轄の労働局に認定申請を行います。) - 「制度導入助成金」の支給申請
(「計画の認定申請」で認定を受けた後、計画に基づいて雇用管理制度の導入・実施を行い、計画期間終了後2カ月以内に、支給申請書に必要な書類を添えて、管轄の労働局に支給申請を行う。) - 「目標達成助成金」の支給申請
(「制度導入助成金の支給申請」の雇用管理制度の導入・実施の結果、雇用管理制度整備計画期間の末日の翌日から起算して12カ月経過する日までの期間(「評価時離職率算定期間」といいます)の離職率が目標達成している場合、「目標達成助成金」の支給申請が行えます。「評価時離職率算定期間」終了後2か月以内に、支給申請書に必要な書類を添えて、管轄の労働局に支給申請を行います。 )
クリニックで受給するためのフロー
以下に、クリニックで利用できる「個別企業助成コース」受給のためのフローをまとめます。
- 雇用管理制度整備計画の作成・提出
- 認定を受けた雇用管理制度整備計画に基づく雇用管理制度の導入
- 雇用管理制度の実施
- 制度導入助成の支給申請(計画期間終了後2カ月以内)
- 目標達成助成の支給申請(算定期間※終了後2カ月以内)
- 助成金の支給
- 制度導入助成金:各制度10万円
- 目標達成助成金:60万円
※「算定期間」とは上記の「雇用管理制度整備計画期間の末日の翌日から起算して12カ月経過する日までの期間」を指します。
残念ながら、「目標達成助成金」はいくつ制度を導入しても増えません。結果としての「離職率の低下」に対して支払われるものだからです。離職率の高さに苦しんでいる医師・クリニック院長はチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。
特徴
対応業務
その他の業務
診療科目
この記事は、2020年12月時点の情報を元に作成しています。