美容クリニックを訪れる患者は、ケガや病気の治療目的ではないため、スタッフの役割も一般的な医療機関とは大きく異なります。
では、美容クリニックのスタッフにはどんなことが求められるのでしょうか? また、スタッフの離職率はどのくらいなのでしょうか? 早速みていきましょう。
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美容クリニックの定義について
まず、美容クリニックの定義について説明すると、美容クリニックは、「美容外科」と「美容皮膚科」の大きく2つに分けられます。
美容外科はオペを中心にメニューを展開しているため、ほとんどの施術は医師が担当して、看護師はその介助に回ります。メニューは脂肪吸引や顔面整形などになるため、医師免許および知識がないスタッフは施術を担当することができません。
一方の美容皮膚科はというと、各種ビタミン剤などの処方や、レーザー照射をはじめとする美容メニューを提供します。リフトアップなどの美肌系メニューにしても脱毛にしても、スタッフは長期にわたって患者と関わることになります。
美容クリニックスタッフの離職率は?
続いて、美容クリニックスタッフの離職率をみていきます。
美容クリニックスタッフの離職率は、30%前後といわれています。入社から半年以内に、3~4人に1人の割合で退職していることを考えると、場合によっては、採用活動を休む暇がないこともあるでしょう。
では、30という数字が高いか低いかというと、「2022年 病院看護・除算実態調査報告書」によると、2021年度の正規雇用看護職員の離職率は11.6%、新卒採用者の離職率は10.3%、既卒採用者の離職率は16.8%とされているので、かなり高い数字であるといえるでしょう。
参照: 「2022年 病院看護・助産実態調査 報告書」p.7より一部抜粋
なぜ美容クリニックスタッフの離職率は高いのか?
続いては、美容クリニックスタッフの離職率が高い原因を紐解いていきましょう。
まず、一般的な医療機関と美容クリニックとでもっとも異なることはなにかというと、保険診療であるか自由診療であるかの違いです。保険診療の場合、診療費の患者負担額が小さいため、「診療費が高いから」という理由で患者が診療してもらうことを躊躇するケースは少ないでしょう。
一方、自費診療の場合、治療にかかる費用は全額患者持ちとなるため、処置や施術を受けるかどうかを迷う患者は多いです。また、内科や皮膚科、外科などに来院する患者は、基本的に「診療を受けて治してもらう」ことが前提なので、治療してもらうかどうかを悩むことはほぼありません。
これに対して美容クリニックの患者は、「一度話を聞いてから検討しよう」と思っている人も一定数います。そのため、クリニックスタッフの労働条件について以下のような違いが出てきます。
ノルマが設けられている場合が多い
一般的な医療機関とのもっとも大きな違いはノルマです。美容クリニックを利用する患者は病気ではないので、「この処置が絶対に必要」ということはありません。
そのため、少しでも多くの施術を受けてもらえるよう、クリニック側でそれぞれのメニューの魅力を患者に伝える必要があります。基本は、ホームページやSNSを通しての発信になりますが、そのメニューに興味を抱いている人に対して、さらにプッシュをかけられるのは誰かというと、施術を担当するスタッフです。
ただし、これは美容クリニックのなかでも、「美容皮膚科」に限ったことです。
施術しながら一人ひとりの悩みを聞き出し、その悩みを解消するためにはどんなメニューが有効であるのかを説明します。説明によって患者が施術に惹かれて契約することになったら、インセンティブという形で給料に反映するクリニックは多いです。
インセンティブが発生すること自体は悪いことではありませんし、むしろ働き手にとってはプラスの条件ですが、営業が得意でなく、患者に施術をすすめることを苦痛に感じるスタッフにとっては、営業しなければ高い給料がもらえないことはネックとなります。
土日は基本的に休めない、定時でも夜が遅い
美容クリニックのメインターゲットは20代~40代の働いている女性であるため、一般的な医療機関とは異なり、休日や夜間の来院がほとんどです。当然、出勤時間が遅くなり、週末に休みをとることもできなくなるため、働き続けることをしんどいと感じる人は一定数存在します。
基本的には勤務条件に関しては募集に記してあるものなので、応募者は納得のうえ応募していますが、実際に働いてみたところ、「思ったよりもきつかった」という場合もあるでしょう。
看護学校で教わっていないことが多い
将来働きたい診療科をイメージすることなく看護学校で学び、なんとなく美容クリニックに就職したのであれば、学校で教わったことを活かせないことにモヤモヤした気持ちを抱くことになりかねません。
なぜなら、一般的な医療機関と違って、美容クリニックが提供するメニューのほとんどは自由診療メニューとなりますが、看護学校では、保険適応分野についてしか触れることがないからです。そのため、いざ働くことになったら、学校で習った知識が役立たず、戸惑うことも多いのが実情です。
患者ではなく「お客さま」
怪我や病気の治療を目的とした患者とは異なり、美容クリニックの患者には「患者」という意識はありません。自由診療の大金を払っていることもあり、「丁重に扱ってほしい」と考えている患者が多いのが実情です。
エステではなく、医師免許を持った医師が経営するクリニックであるため、「患者」が正解ではあるのですが、患者のほうはそうは思っていないことから、“接客”意識を持つことが大切ですが、それに慣れるのを難しいと感じる人もいるでしょう。
クリニック側が契約を解除するパターン
続いては、離職のなかでも、クリニック側が契約を解除するパターンをからみていきます。
多くの美容クリニックでは、一般的な医療機関同様、試用期間を設けています。ただし、一般的な医療機関においては、よほどのことがない限り試用期間中に契約解除となる可能性は低いですが、美容クリニックの場合は違います。
なぜなら、美容クリニックのスタッフは、基本的に施術を担当することになるため、一般的な医療機関と比べて患者と一対一で接する時間が長く、コミュニケーション力や施術のスキルが必要だからです。それらを試用期間中に習得できないようでは、このまま雇い続けても自院にとってマイナスになる! と判断するクリニックも多いようです。
もちろん、試用期間を過ぎた後であっても、コミュニケーション力や施術スキルに問題があるとして契約解除を通達することは可能ではありますが、その場合、当該スタッフから後々訴えられることがないよう、正当な理由で解雇したと証明するに足る証拠を記録しておく必要があります。
ただし、いずれにしても試用期間を過ぎてからの契約解除はクリニックにとってもデメリットが大きいので、できる限り試用期間中にスタッフの良し悪しを見抜きたいところです。では、どんなポイントに注目して良し悪しを判断すればいいかというと以下の通りです。
やる気があって日々成長が見られる
前述の通り、美容クリニックでの処置内容は、基本的に看護学校では教わっていないことばかりです。
そのため、他の美容クリニックで働いた経験があるのでない限り、ゼロからスキルを身に着けていくことになるので、「処置がうまくなりたい」という気持ちが強く、熱心に仕事に向き合っているかどうかは特にしっかりとチェックしたいところ。
ここに合格点がつけられるようなら、早い段階で患者からの指名を得られるようになるでしょう。
コミュニケーション力に長けている
どんなに腕が良くとも、患者の気持ちに寄り添い、患者に安心して施術を受けてもらえるだけのコミュニケーション力がなければ、患者からの指名を得にくいだけでなく、施術を担当した患者から「雰囲気が暗い」「愛想が悪くてしゃべりにくい」と思われることがあります。
もちろん、人と話すことに対して得手不得手はありますし、会話をすることが本業ではないので、必要以上にトークスキルを磨く必要はありませんが、最低限、患者の気持ちに寄り添うことができるかどうかはチェックしたいところです。
他のスタッフとうまくやっていけるかどうか
スタッフの協調性を乱す人は、どんな診療科においてもトラブルメーカーとなりやすいですが、美容クリニックにおいては特にその傾向が強くなります。
施術はチームプレイではない部分が多いとはいえ、仕事が始まる前後や昼休みには同じ空間で顔を合わせることになるのですから、揉め事を起こしやすそうな側面が垣間見える人は避けたほうが無難です。
スタッフ側から退職を申し出るパターン
続いては、スタッフから退職を申し出るパターンです。
スタッフから退職を申し出るパターンについては、一般的な医療機関同様、
- 「人間関係に問題がみられた」
- 「給料が割に合わないと感じた」
- 「仕事が難しくてついていけなかった」
などの理由が考えられます。ただし、一般的な医療機関とは異なる、美容クリニックならではの労働環境を理由に、退職を申し出るスタッフも一定数います。
では、スタッフから退職を申し出られるのを防ぐためにはどうすればいいかというと、以下のような対策が考えられます。
定期的に個別ミーティングを設ける
まずは、スタッフが何に不満があって辞めたいと思うに至ったのかを知る必要があります。とはいえ、「辞められてから」では時すでに遅し。早い段階でスタッフの不満について知るためにも、定期的に個別ミーティングを設けることが理想的であるといえます。
トラブルメーカーがいる場合は注意する
人間関係が原因で辞めたいという申し出が相次ぐ場合、特定のスタッフが原因で周りが辞めたくなっている場合が多いです。たとえば、
- 「みんなの前で叱ってくる先輩がいて精神的に落ち込む」
- 「遅刻・欠勤が多いスタッフがいるせいで、その尻ぬぐいをさせられる」
- 「みんなの悪口を言うスタッフがいて、周りの人のよくないとこばかり目につくようになる」
などと悪影響が及ぶこともあるでしょう。そのため、個別ミーティング時に他のスタッフの話が出てきた場合は他のスタッフにも話を聞き、対処法を考える必要があります。
給与を見直す
給与に関して不満がある人が多い場合、見直しを考える必要があるといえそうです。ただし、必ずしも上げた方がいいかというとそうではありません。地域の平均的な給与よりも高い金額を支払っていても「もっとほしい」と声を上げるスタッフもいるからです。
そのケースに当てはまる場合は、「平均よりも高い額を支払っていることをデータで示す」「給与は据え置きで賞与を設ける」「給与は据え置きでサービス残業をできる限り減らす」などの対策を考えるといいでしょう。
ノルマを強要しない
営業ノルマがストレスで辞めたいと申し出るスタッフが多いなら、ノルマについては見直す必要があるでしょう。ただし、その結果として患者とのコミュニケーションが希薄になると、患者満足度が低くなる可能性が否めません。
そうなるとクリニックにとってもスタッフにとっても結果的にマイナスになるので、契約件数にこだわりすぎず、患者満足度を高めていくためにはどうすればいいかをスタッフみんなと考えてみてもいいかもしれません。
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離職率を減らすためにできることは?
クリニック側の事情による離職、スタッフ側の事情による離職について理解したうえで、「離職率を減らしたい」と考えるなら、できることはたくさんあります。たとえば、
- 「試用期間がある前提だとしても、採用の時点で条件を厳しくする」
- 「インセンティブを設定しつつも、基本給もある程度高くする」
- 「月に何度かは土日を休んでもらえるよう、パートスタッフも採用する」
などもそのひとつ。美容クリニック全体でみたときに離職率が高いからと言って、自院の離職率も同じパーセンテージになるということはないので、スタッフにいい労働環境を提供することを考えてみてくださいね。悩む場合には、社労士など専門家の意見を聞くこともおすすめします。
特徴
対応業務
診療科目
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この記事は、2023年6月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
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