ウィズコロナの時代に突入して以降、ニュースなどでも、「医師不足」「医療施設不足」「病床不足」の言葉を頻繁に見聞きするようになりました。では、実際のところ医師はどのくらい足りていないのでしょうか? また、海外と比べても日本の医師数は少ないのでしょうか? 早速詳しくみていきましょう。
日本における人口1,000人あたりの医師数は2.4人
日医総研が公表している「医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2019-」によると、日本の医師数は、人口1,000人あたり2.4人という結果が出ています。これに対して、OECD(経済協力開発機構)の加盟国38か国の平均は3.5人。日本はかなり少なめであることがわかります。
また、人口1,000人あたりの医師数がもっとも多いのはギリシャで、人数にして6.1人。続いて、オーストリア=5.2人、ポルトガル=5.0人、ノルウェー=4.7人、リトアニア=4.6人、スイス=4.3人、ドイツ=4.3人、スウェーデン=4.1人、デンマーク=4.0人、イタリア=4.0人までは、人口1,000人あたりの医師数が4人を超えています。
人口1,000人あたりの医師数ランキング
順位 | 国名 | 人口1,000人あたりの医師数 |
---|---|---|
第1位 | ギリシャ | 6.1人 |
第2位 | オーストリア | 5.2人 |
第3位 | ポルトガル | 5.0人 |
第4位 | ノルウェー | 4.7人 |
第5位 | リトアニア | 4.6人 |
第6位 | スイス | 4.3人 |
第7位 | ドイツ | 4.3人 |
第8位 | スウェーデン | 4.1人 |
第9位 | デンマーク | 4.0人 |
第10位 | イタリア | 4.0人 |
第11位 | スペイン | 3.9人 |
第12位 | アイスランド | 3.9人 |
第13位 | チェコ | 3.7人 |
第14位 | オーストラリア | 3.7人 |
第15位 | オランダ | 3.6人 |
第16位 | エストニア | 3.5人 |
第17位 | スロバキア | 3.4人 |
第18位 | ハンガリー | 3.3人 |
第19位 | ニュージーランド | 3.3人 |
第20位 | フィンランド | 3.2人 |
第21位 | ラトビア | 3.2人 |
第22位 | フランス | 3.2人 |
第23位 | イスラエル | 3.1人 |
第24位 | スロベニア | 3.1人 |
第25位 | ベルギー | 3.1人 |
第26位 | アイルランド | 3.1人 |
第27位 | ルクセンブルグ | 3.0人 |
第28位 | イギリス | 2.8人 |
第29位 | カナダ | 2.7人 |
第30位 | アメリカ | 2.6人 |
第31位 | チリ | 2.5人 |
第32位 | 日本 | 2.4人 |
第33位 | メキシコ | 2.4人 |
第34位 | ポーランド | 2.4人 |
第35位 | 韓国 | 2.3人 |
第36位 | トルコ | 1.9人 |
参照:医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2019- p.1、p.20一部抜粋
全国の医師届出数の年次推移は?
続いては、全国の医師届出数の年次推移を見ていきましょう。厚生労働省が公表している「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、1982(昭和57)年から2018(平成18)年にかけての約20年の間、全国の医師届出数は年々増加している傾向にあります。
医師の届出数年次推移
年 | 医師数 | 増減率 | 人口10万人あたりの医師数 |
---|---|---|---|
1982(昭和57)年 | 167.952万人 | - | 141.5人 |
1984(昭和59)年 | 181.101万人 | 7.80% | 150.6人 |
1986(昭和61)年 | 191.346万人 | 5.70% | 157.3人 |
1988(昭和63)年 | 201.658万人 | 5.40% | 164.2人 |
1990(平成2)年 | 211.797万人 | 5.00% | 171.3人 |
1992(平成4)年 | 219.704万人 | 3.70% | 176.5人 |
1994(平成6)年 | 230.519万人 | 4.90% | 184.4人 |
1996(平成8)年 | 240.908万人 | 4.50% | 191.4人 |
1998(平成10)年 | 248.611万人 | 3.20% | 196.6人 |
2000(平成12)年 | 255.792万人 | 2.90% | 201.5人 |
2002(平成14)年 | 262.687万人 | 2.70% | 206.1人 |
2004(平成16)年 | 270.371万人 | 2.90% | 211.7人 |
2006(平成18)年 | 277,927万人 | 2.80% | 217.5人 |
2008(平成20)年 | 286.699万人 | 3.20% | 224.5人 |
2010(平成22)年 | 295.049万人 | 2.90% | 230.4人 |
2012(平成24)年 | 303.268万人 | 2.80% | 237.8人 |
2014(平成26)年 | 311.205万人 | 2.60% | 244.9人 |
2016(平成28)年 | 319.480万人 | 2.70% | 251.7人 |
2018(平成30)年 | 327.210万人 | 2.40% | 258.8人 |
※各年12月31日時点
参照:平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況―p.4一部抜粋
診療科別の医師数はどのくらい?
続いては、診療科別の医師数を見ていきましょう。厚生労働省が公表している「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、主たる診療科のうち、医師数がもっとも多いのは内科で、医療施設に従事する内科医の医師数は60,403人です。また、医師数トップ10の診療科は以下の通りです。
順位 | 診療科 | 医療施設に従事する医師数 |
---|---|---|
第1位 | 内科 | 60,403人(医師全体の19.4%) |
第2位 | 整形外科 | 21,883人(7.0%) |
第3位 | 小児科 | 17,321人(5.6%) |
第4位 | 精神科 | 15,925人(5.1%) |
第5位 | 消化器内科(胃腸内科) | 14,898人(4.8%) |
第6位 | 外科 | 13,751人(4.4%) |
第7位 | 眼科 | 13,328人(4.3%) |
第8位 | 循環器内科 | 12,732人(4.1%) |
第9位 | 産婦人科 | 10,778人(3.5%) |
第10位 | 麻酔科 | 9,661人(3.1%) |
参照:平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況―p.8一部抜粋
診療所で働く医師数は病院で働く医師数の約6.8割
続いては、施設の種別に医師数をみていきます。「医師・歯科医院・薬剤師統計の概況」によると、「病院(医育機関付属の病院を除く)」「診療所」「医育機関付属の病院」における2018(平成30)年の医師数は、それぞれ、病院=151,691人、診療所=103.836人、56,436人という結果。病院で働く医師の約6.8割程度の人数の医師が、診療所で働いている計算になります。
参照:平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況―p.7一部抜粋
もっとも厚い医師の年齢層は施設によって異なる
続いては、年齢層別の医師数を見ていきましょう。年齢層別の医師数は、施設によって大きく異なります。理由は、診療所で働く医師は基本的に、勤務医としての経験を経て開業しているため。そのため、働いている医療施設別に見ると、医師の平均年齢はそれぞれ、「病院で働く医師=47.0歳」、「医育機関付属の病院で働く医師=39.0歳」、「診療所で働く医師=60.0歳」となります。また、年代別の医師数は以下の表の通りです。
医療施設の種別にみた医師の年齢
年齢 | 病院で働く医師数 (医育機関付属の病院を除く) |
医育機関付属の病院で働く医師数 | 診療所で働く医師数 |
---|---|---|---|
29歳以下 | 18,788人 | 10,383人 | 207人 |
30歳~39歳 | 35,752人 | 24,213人 | 4,543人 |
40歳~49歳 | 35,719人 | 13,360人 | 18,305人 |
50歳~59歳 | 32,028人 | 6,219人 | 29,027人 |
60歳~69歳 | 20,118人 | 2,164人 | 30,734人 |
70歳以上 | 9,286人 | 97人 | 21,020人 |
(平均年齢) | 47.0歳 | 39.0歳 | 60.0歳 |
参照:平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 p.5、p.8一部抜粋
人口10万人当たりの医師数がもっとも多い都道府県は徳島県
続いては、都道府県別の人口10万対医師数を見ていきます。人口10万人あたりの医師の数がもっとも多いのは、医師数329.5人の徳島県。2位は323.3人の京都府で、3位は316.9人となっています。4位から6位は関東勢で、4位=埼玉県(169.8人)、5位=茨城県(187.5人)、6位=千葉県(194.1人)という結果。患者からすると、自分が暮らしている都道府県の医師の割合が高いと、安心できるということがあるかもしれませんね。
参照:平成30(2018)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 p.14一部抜粋
医師数の今後の変化にも注目していきたい
ウィズコロナといわれる2020年、2021年を経験して、医師不足の深刻さを痛感することとなった日本。また、超高齢化社会となったことで、日常的に医療を必要とする人口が増えてきたことも、医師のニーズ増加を深刻化させています。アフターコロナ時代を前に国を挙げて対策を考えはじめたことで、これから先、診療科別、地域別などの医師数がどのように変化していくのかに、ますます注目が集まりそうですね。
特徴
対応業務
その他特徴
診療科目
特徴
対応業務
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。