日本の年金制度は「3階建ての構造」と呼ばれています。1階部分は、20歳以上60歳未満の全国民が加入する「国民年金(基礎年金)」。2階部分の「厚生年金保険」は、1階部分に上乗せされたものとして、会社員と公務員に給付されます。1、2階部分が「公的年金」であるのに対して、3階部分は企業や団体が独自に運営しているもの。「企業年金」などがこれに含まれます。では、医者はこのうちどの年金に加入しているのでしょうか?早速みていきましょう。
勤務医は厚生年金、開業医は国民年金に加入しているケースが多い
まずは勤務医と開業医の年金について比較しましょう。病院などから雇用されている勤務医は厚生年金に加入しているケースが多いですが、自らが経営者でもある開業医は国民年金をベースとしています。つまり、会社員とフリーランスの違いと同じと考えていいでしょう。
補足すると、国民年金は、25年以上納付すれば基本的に65歳以上から給付を受け取れます。ただし、受け取り年齢の変更も可能で、繰り上げた場合は給付額が減額となり、繰り下げた場合は増額されます。国民年金の保険料は全国民一律ですが(※ただし収入によって一部免除などはあります)、厚生年金の保険料は、給与や賞与の金額をもとに決定されるため、収入によって差があります。
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医師ならではの年金制度「医師年金」とは
開業医は勤務医と比べて、将来受け取れる年金の額が少なくなるのでしょうか? 答えは、“国民年金にしか加入していない場合は”yesですが、冒頭でお伝えした通り、年金制度の3階部分に当たる「企業年金」などに加入している場合は、yesとも言い切れません。
では、企業年金にはどのようなものがあるかというと、医師が利用するものとして代表的なものが、「医師年金」です。医師年金を運営しているのは日本医師会で、日本医師会会員になれば、満64歳4か月未満まで加入できる資格があります。
医師年金の仕組み
医師年金の「基本年金保険料」は月額12,000円(年払の場合は138,000円)ですが、さらに加算することが可能です。加算年金保険料は、月払の場合6,000円単位、随時払の場合10万円単位とされていますが、いくらまででも掛けることができるのが特徴です。ただし、国民年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)とは違って所得控除の対象にはならないので、節税を考えている場合は、どのくらいの金額を掛けることが理想的かをよく考えることをおすすめします。
また、医師年金は老後の受け取り方法を選ぶことができるのも特徴です。主な受け取り方は以下になります。
養老年金
満65歳から受給可能な年金で、満75歳まで受給開始延長も可能。満56歳以上かつ加入期間3年以上でやむを得ない事情がある場合、満65歳前後から受給することも可能です。この場合、受給金額は減額となります。また、養老年金は以下の4つのコースから1つを選んで利用します。
1.15年保証終身型
基本掛金部分15年保証期間付終身+加算掛金部分15年保証終身
2.5年確定年金型
基本掛金部分15年保証期間付終身+加算掛金部分5年確定
3.10年確定年金型
基本掛金部分15年保証期間付終身+加算掛金部分10年確定
4.15年確定年金型
基本掛金部分15年保証期間付終身+加算掛金部分15年確定
育英年金
現役世代の弟子の教育資金として、年金を活用することができます。育英年金の期間は4年間、7年間、10年間から選択可能。加算年金の原資のすべてまたは一部が毎月支給されます。
傷病年金
病気で働けなくなった場合などに支給されます。傷病年金の期間は2年間、3年間、4年間、5年間から選択可能。加算年金の原資のすべてまたは一部が毎月支給されます。
遺族年金
本人が死亡した場合に遺族に支払われる年金です。
養老年金受給前に死亡した場合:払込済保険料と利息相当額が、遺族脱退一時金として遺族に支給されます。加入期間3年以上かつ満56歳以上の加入者または受給延長者が死亡した場合、遺族年金を選択することもできます。
養老年金受給開始後に死亡した場合:保証期間の残余給付期間中、同額の年金が遺族年金として支給されます。遺族年金の代わりに、遺族清算一時金を支給してもらうこともできます。
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その他
やむを得ず医師年金を脱退する場合、脱退一時金を支払ってもらうこともできます。
小規模企業共済などを活用して自分で老後の資金を積み立てるのも一手
医師年金の他に、全国保険医団体連合会が運営する「保険医年金」などを利用するのも手です。保険医年金は、同連合会会員になると任意で加入可能。保険料は月払1口10,000円で、最大30口まで増やせます。大きな特徴は、いつでも受給できる点にあります。また、1口単位での解約もできるので、資金が必要になったときに一部だけ解約するなども可能です。
また、独立行政法人の中小企業基盤整備機構が運営している「小規模企業救済」を利用するのも一つの選択肢です。小規模企業共済は、国民年金と同じく、掛金全額が所得控除の対象になることも魅力です。
これ以外にも、保険料支払いおよび保険料受け取りを外貨でおこなう「外貨建て個人年金保険」などさまざまな年金制度があるので、資産運用に本腰を入れたい人はぜひいろいろ調べてみてはいかがでしょうか?
老後について考えるのは早めであるに越したことはない
激務と言われる医者の仕事をこなしていると、ゆっくりと時間を取って将来のことを考えることは後回しにしがちかもしれません。しかし、今のうちから長期的な視野を持って資産運用や積立をおこなっておけば、年齢を重ねてからも将来への不安に押しつぶされそうになることが少なくなるものです。医師年金を運営している日本医師会のwebサイトなどでは、将来もらえる年金の額を簡単に試算することもできるので、まずは自分がもらえる年金額を確かめてみるのもおすすめ。数字として確認すれば一気に現実味が増して、将来のことをきちんと考えようと思えるはずですよ。
特徴
対応業務
その他特徴
診療科目
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この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。