医師の仕事はやりがいがある仕事ですし、高い収入も期待できるなど条件的には悪くない場合が多いでしょう。しかしなかには、定年を迎える前に辞めたいと思う人もいるはず。
そこで今回は、医師を退職したいと思ったとき、必要な手続きなどについて説明していきます。
退職前に準備すること
まずは、退職を決めてから退職するまでに準備すべきことを説明します。
1.退職の意思を伝えるタイミングは?
退職の意思が固まったら、退職したい旨を伝えるタイミングと伝え方について考えましょう。退職希望の伝え方とタイミングは、医局に所属しているかどうかでも違ってきます。
医局に所属している場合
医局を通じた紹介や派遣で働いている場合、まずは医局に退職の意思を伝えます。
その後、医局から勤務先の医療機関に内々に打診されることになるので、正式に退職が決まれば、今度は自分の口から人事責任者に伝えるという流れです。退職日は、次にくる医師の就任日が決まれば自ずと決まります。
医局に所属していない場合
退職希望日の半年前から3か月前に、直属の上司や人事責任者に退職の意向を伝えます。
伝える相手が手すきのタイミングを見計らって伝えることが大切です。退職日は、勤務先と話し合って決めることが望ましいでしょう。
クリニックの常勤医の場合
また、もうひとつ考えられるケースが、クリニックの常勤医の独立です。
ドクターが複数人いる大病院の勤務医とは異なり、クリニックの常勤医の場合、クリニックの規模によっては「そのドクター頼み」になっていることもあるので、いきなり辞められるとなるとクリニック側も相当困ることになるでしょう。
医大がなくドクターの数そのものが少ない県やエリアなどならなおさらのこと。一般的な規定とされている半年~3か月前に開業の予定を告げたとしても、「そんなにすぐ代わりが見付からないから困る!」と受け入れてもらえないことも考えられます。
3か月前の申告であれば、常識的には問題ないと言えるでしょう。とはいえ、開業の目途が立ったら、できるだけ早い段階で勤務先にその旨を伝えたほうが無難です。
もっとも望ましいことは、クリニックの勤務を開始する際に、いつまでに開業したいと考えているかを伝えることです。また、自分の人生計画を伝えることによって、先方も必要なことをしっかり教えてくれるでしょう。
2.「退職届」は必要?
医局に所属している場合
勤務先の事務部門に、出すべきかどうかを確認しましょう。医局人事でローテーションが組まれている場合などは、退職届を出さなくてよいことがあります。
医局に所属していない場合
退職届提出が必要か否かは、基本的には勤務先によって異なりますが、自己都合の場合には提出を求められることは多いでしょう。また、退職届の書式を定めている医療機関もあるので、事務部門に確認すると安心です。
3.引き継ぎに関しては何をすればいい?
医局に所属している場合
引継書が必要となることは基本的にはありません。
ただし、医局の場合、前任者と後任者が先輩後輩関係にあるため、わからないことなどがでてきた場合、直接連絡を取り合うことになります。
医局に所属していない場合
一般公募で医師を採用している病院などの場合、何かあったときに前任者に問い合わせすることが難しいため、引き継ぎは重要です。
長期療養の患者などに関して気になる事項がある場合、引継書を作成するといいでしょう。
院長や副院長など、経営に携わっていた場合、経営上の課題などについても引継書を作成するべきです。引継すべきことが複数ある場合は、必要な事項をリストアップすると共有漏れしにくいでしょう。
4.退職の挨拶は?
「退職の挨拶は退職日当日でいいのでは?」と思うかもしれませんが、医療現場の仕事は基本的に交代制であるため、当日に会えない人も出てくることを考えて行動することが必要です。
事前に勤務表でそれぞれのスタッフの出勤日を確認しておけば、誰にいつ挨拶すればいいかわかります。
患者さんへの挨拶はエースバイケースですが、入院患者さんを担当している場合は、後任の医師に引き継ぐ旨を説明しておくと、患者さんやその家族に安心してもらえるでしょう。
また、医療機関や役職によっては、直接の挨拶に加えて、公式サイトやSNSで挨拶文を出すこともあります。
5.引き留められた場合の対応は?
退職の意向を伝えた結果、「なんとか残ってほしい」と打診されることもあります。
場合によっては、「給与を上げる」などの条件を提示されることもありますが、転職先が決まっている場合などははっきりと断るのがいいでしょう。
また、医局人事が決まる前から開業の意思がある場合などは、開業準備を進めていることなどを早めに伝えておくとトラブルになりにくいでしょう。
6. 退職の意思を伝えたところ嫌がらせが始まったらどうすればいい?
滅多にないことではありますが、退職届を出したところ嫌がらせをされるようになったという声は、ネットの掲示板などにもあがることがあります。
そもそもそのようなことをしてくる人が働いている医療機関なら、ほとんどの人は独立開業する前の時点で辞めるでしょうが、万が一、退職届を出したことによって態度が180度変わるようなことがあった場合は、どんなことをされたかを細かく記録して、労働基準監督署に相談することをおすすめします。
ただし、裁判などに発展して解決までに時間がかかり、精神的に疲弊することもあり得ます。
それを避けたいなら、万が一なにかあったときのために記録をつけつつも毅然とした態度を示し、「3か月前の申告なら退職に問題がないのだから当然の権利だ!」と胸に刻み、堂々と過ごすことが望ましいでしょう。
退職当日にすべきこと
続いては、退職当日にやるべきことを説明します。
退職の挨拶などは事前に済ませているため、退職当日は基本的には、業務で使用してきたものを返却して、必要なものを持ち帰ることになります。
勤務先に返却するもの、受け取るものは以下の通りです。
退職時に返却するもの
- 健康保険被健康保険者証
- 社員証やIDカード、名刺、名札
- 白衣(貸与されていた場合)
- ロッカーなどの鍵
- 仕事用通信機器
- そのほか、業務用の書類や備品
受け取るものおよび持ち帰るもの
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 年金手帳(勤務先が保管していた場合)
- 退職証明書
- 離職票
※離職票は、退職日までに勤務先に発行を依頼しておけば、退職から10日~14日程度で郵送されます。しかし、次の勤務先が既に決まっている場合には発行してもらう必要はありません。
「立つ鳥跡を濁さず」を心がけて
退職後のキャリアとしては、「転職」「開業」などいろいろありますが、退職してからも医療業界で活躍したい場合は特に、これまでお世話になった勤務先に悪い印象を残さず後を去るのがベスト。
転職にしても開業にしても、うまくいかなくて古巣に戻る可能性もゼロではないので、引き継ぎも挨拶もできる限り丁寧にしておいて損はなしですよ!
特徴
対応業務
診療科目
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この記事は、2021年8月時点の情報を元に作成しています。