訪問看護とは、看護師や保健師、理学療法士などが利用者宅を訪問して、主治医の指示のもと提供する看護です。しかし、訪問看護ステーションや老人介護施設をはじめとする、訪問看護を提供している事業所では、それ以外の職種を募集することもあります。募集される職種のひとつが事務ですが、訪問看護に携わる事務スタッフはどんな仕事をするのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
訪問看護事務の仕事に就くためには資格が必要?
訪問看護事務の仕事に就くために、特別に必要な資格はありません。ただし、後述しますが、事業所によっては、事務スタッフがレセプト請求などの業務に携わることがあるため、医療事務の基礎知識を身に着けておいたほうが安心ではあります。もしくは、入職後の研修で指導してもらえる場合もあるので、未経験であるものの訪問看護事務の仕事がしたいという場合は、求人票の応募条件をよく読んで、未経験でもOKの勤務先を選ぶようにしましょう。
訪問看護事務の仕事内容は?
続いては、訪問看護を提供している事業所における事務スタッフの仕事内容をみていきます。
電話対応
訪問看護ステーションや老人介護施設においては、関係各所との連絡に電話やFAXが使われる割合が高いです。一般企業は、メール、もしくはChatworkやSlackなどを活用して、相手のタイミングで返事をしてもらうことをデフォルトとしているところが多いですが、訪問看護業界は少々勝手が異なります。
そのため、電話対応が苦手な人にとっては、ストレスの大きい仕事であるといえるかもしれません。
看護師のスケジュール調整
訪問看護師および利用者のスケジュールを確認して、日程を調整することは大切な仕事のひとつです。基本的に毎週固定の曜日などに利用している利用者であっても、緊急事態に訪問看護を必要とすることがあるため、迅速な対応が求められることもあります。そうした事態にすぐに都合のつく看護師に連絡をとれるよう、日ごろからスタッフのスケジュールをしっかり把握しておくことが不可欠です。
請求業務
医療機関勤務の事務と同じく、訪問看護に携わる事務スタッフにも、レセプト請求の知識が求められます。しかも、介護保険の適応となる患者や、指定難病の助成制度・各市町村による支援制度を利用している患者なども多いため、一般的なレセプト請求よりも複雑です。
書類整理・書類作成
前述の通り、訪問看護ステーションや老人介護施設には、関係各所からFAXが届くことが多いだけでなく、郵便物もたくさん届きます。たとえば、訪問看護指示書やサービス提供票などがFAXで届くこともあれば、他訪問看護ステーションの計画書報告書や請求書が郵便で届くことも。
また、利用者に記入してもらう訪問看護契約書も紙で用意するのが一般的であるため、書類の仕分けや整理だけでなく、書類作成のスキルも求められます。
書類作成に関しては、前任者が作ったひな形があれば、宛名などを打ち直せばいいだけなので難しい作業ではありませんが、一から作成するとなると、ワードやパワーポイントをそれなりに使いこなせないと難しいかもしれません。
備品管理
訪問看護をおこなうにあたっては消耗品も必要となるため、常に必要な量をそろえておけるよう、発注や個数管理もしっかりおこなう必要があります。
会計
事業所によっては、経費計算や損益票の作成を事務が担当することもあります。看護師が主に車で移動している事業所なら、パーキング代の領収書などを随時処理する必要があります。
訪問看護事務の仕事が「きつい」と言われるのはなぜ?
続いては、訪問看護事務の仕事が「きつい」と言われることがある理由を解説します。
仕事量が多い
訪問看護の仕事内容は前述の通り、慣れたらスムーズに進められるものが多いですが、スムーズに進められたとしても、仕事量が多ければ結果として残業が必要になることが多いでしょう。また、レセプト請求などはルールが変わることも多いため、そのたびに覚えなければいけないことが出てくると、さらに時間をかけなければ仕事が終わらないということになります。
人間関係でストレスを抱えなくてはならないことがある
訪問看護にはさまざまな職種の人間がかかわります。看護師、ケアマネージャー、医師、利用者およびその家族などと直接やりとりすることが必要です。その際、コミュニケーションがうまくいかないと、ストレスを抱えてしまう場合があります。場合によっては、利用者からのクレームに対応しなければならないことなどもあるので、ストレス耐性が弱いと辛く感じてしまうでしょう。
プレッシャーが大きい
訪問看護の利用者は、常に状態が安定しているとは限りません。緊急時には迅速かつ的確に対処する必要がありますし、少しの遅れによって利用者の命を危険にさらしてしまうこともあるかもしれません。また、精神疾患を患っている利用者が多い訪問看護ステーションなどの事務であれば、利用者からの電話を正しく理解できるかどうかということに対して、プレッシャーを感じることもあるかもしれません。
訪問看護事務として働くメリット、デメリットは?
続いては、訪問看護事務として働くメリット、デメリットをみていきましょう。
訪問看護事務として働くメリット
まずはメリットから。
基本、内勤であるため体力的負担が少ない
訪問看護事務の仕事は基本的に事業所内で完結します。そのため、体力的な負担は少ないといえます。ただし、事業所によっては、訪問診療に同行して外勤しなければならないこともあります 。なんのために事務が外勤するかというと、医師からの言葉を代弁したり 、利用者の要望を医師や看護師に伝えたりするためです。
利用者と直接接することがない
医療機関勤務の場合、患者が受付にクレームを入れてきたら事務が対応することになりますし、受付にいることで顔を覚えられてストーキングされる可能性がゼロではありません。しかし、訪問看護の仕事においては、事務が利用者と直接接することはありません。ただし、先に述べた通り、電話の応対業務を通して利用者と接点を持つことはあります。
訪問看護事務として働くデメリット
続いてはデメリットです。
医療事務の知識やスキルを常にアップデートする必要がある
前半で述べた通り、訪問看護事務の仕事には資格は必要ありませんが、業務を遂行するにあたって必要な知識を常に磨き続けることは不可欠です。そのため、人によっては、勉強が大変だと感じるかもしれません。
求人数が少ない
訪問看護事務の求人数は多くありません。そのため、訪問看護事務の仕事がしたいと思っても、なかなか求人を見つけることができない可能性があります。
訪問看護事務の給料は?
訪問看護事務の給料は、地域や施設によってまちまちですが、平均すると20万円~25万円くらいのところが多いようです。医療知識が求められるぶん、一般企業の事務職よりは高い傾向にあるといえます。
医療機関勤務も視野に入れながら勤務先を探すのも一手
訪問看護事務として働きたいという思いが強く、訪問看護ステーションや老人介護施設に絞って勤務先を探している人もいるかもしれません。しかし、訪問看護を提供している事業所が少ないエリアなどでは、タイミングよく求人が見つからないこともあるので、理想の職場がなかなか見つからない場合は、まずは病院やクリニックで働いて経験を積んでから、転職することを考えてもいいかもしれません。医療機関での仕事がたとえ想像以上に大変だったとしても、決して経験は無駄になることがないので、ご縁を大切にしてみるのも一手ですよ。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年6月時点の情報を元に作成しています。