
電子カルテを使っている医療機関は増えていますが、紙カルテからの切り替えが済んでいないクリニックはまだまだ多く存在します。
電子カルテの導入が進み始めたのは2000年代に入ってからですが、2020年における200床未満の医療機関の電子カルテ導入率は48.8%、400床以上では91.2%程度。導入予定がない医療機関も少なくはないようです。 参照:厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
導入を検討しつつも、「使い慣れているものから新しいものへ変えるのはストレス」「新しいことを覚えるのは大変」と考えているクリニックも多いのではないでしょうか。しかし、そのぶん導入によるメリットは大きいもの。
カルテを切り替えることでクリニックの業務が具体的にどう変わっていくのか、早速みていきましょう。
クラウド型電子カルテ「CLIUS」
クラウド型電子カルテ「CLIUS」は、予約・問診・オンライン診療・経営分析まで一元化できる機能を備えています。効率化を徹底追求し、直感的にサクサク操作できる「圧倒的な使いやすさ」が、カルテ入力業務のストレスから解放します。
詳しい内容を知りたい方は下記フォームからお問い合わせください。
電子カルテとは
まずは、電子カルテとはどんなカルテであるのかを改めて確認しましょう。
電子カルテとは、患者の診療に際して発生する診察記録や検査結果、投薬指示などの情報を、デジタルデータにして記録および管理するシステムのことです。
デジタルデータであれば、患者名などで検索をかけて、必要な患者情報に瞬時にアクセスすることができるので、従来の紙カルテと比べて管理が容易です。また、データの保存先であるクラウドやサーバにアクセスできる環境下であれば、いつでもどこでもデータを確認することができます。
なお、電子カルテは「真正性」「見読性」「保存性」から成る「電子保存の三原則」を満たすことが定められています。
真正性とは
電子記録の改ざんや消去が起こらないよう、誰がいつ記録したかをはっきりさせておくことです。厚生労働省が公表しているガイドラインでは、「虚偽入力や書き換え、消去および混同が防止されており、かつ、第三者から見て責任の所在が明確である必要がある」と定められています。
見読性とは
見読性とは、電子記録を「見て」「読める」状態にしておくことです。厚生労働省が公表しているガイドラインでは、「電子媒体に保存された内容を、診療・患者への説明・監査・訴訟などの要求に応じて、それぞれの目的に対して支障のない応答時間やスループット、操作方法で、肉眼で見読可能な状態にすること」と定められています。
保存性とは
保存性とは、「真正性」および「見読性」が保たれている状態を意味します。厚生労働省が公表しているガイドラインでは、「記録された情報が法令等で定められた期間にわたって真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されることをいう」とされています。
また、保存性を脅かす下記の要素に対して、防止策を講じることも不可欠です。
- 不正なソフトウェアやコンピューターウイルス
- ハッキング
- 記録が不適切に管理または取扱いされることによる損失
- 記録媒体や設備の劣化
- 媒体や機器、ソフトウェアなどの障害
- データ保存時のエラー
参照: 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版」
電子カルテの普及状況と今後の展望
冒頭で触れた通り、2020年における200床未満の医療機関の電子カルテ導入率は48.8%と半数を下回っていますが、平成20年から令和2年にかけての普及状況の推移を確認すると、病床の規模数に関わらず、普及率は右肩上がりであることがわかります。
一般病院 | 病床規模別 | 一般診療所 | |||
400床以上 | 200~399床 | 200床未満 | |||
平成20年(2008年) | 14.2% | 38.8% | 22.7% | 8.9% | 14.7% |
平成23年(2011年) | 21.9% | 57.3% | 33.4% | 14.4% | 21.2% |
平成26年(2014年) | 34.2% | 77.5% | 50.9% | 24.4% | 35.0% |
平成29年(2017年) | 46.7% | 85.4% | 64.9% | 37.0% | 41.6% |
令和2年(2020年) | 57.2% | 91.2% | 74.8% | 48.8% | 49.9% |
さらに、これから先も、新規開業するクリニックや承継されるクリニックが増え続けることを考えると、今後も普及率は上がり続けると考えて間違いないでしょう。
また、政府が医療DXを推進していることを考慮に入れると、今後は200床未満の一般病院または一般診療所でも、各施設の意向とは関係なく、電子カルテを導入せざるを得なくなることもあり得るかもしれません。なぜかというと、医療DXの重要な要素である、地域包括ケアシステムの推進を加速させるためには、医療機関同士で患者情報をスピーディに共有できる体制を整えることが不可欠で、紙カルテでそれに対応することは難しいと考えられるためです。
ただし、実際問題として、院長が高齢で今からパソコン操作を覚えることは現実的に難しい場合や、過疎地であることから近隣の医療機関と患者情報を共有する必要がないクリニックなども存在するため、普及率100%という未来が訪れるとしても、それまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
電子カルテ導入のメリット
電子カルテ導入のメリットは複数あります。主なメリットとしては以下が挙げられます。
ペーパーレス、保管スペースの削減
電子カルテへの切り替えに伴いペーパーレスになるため、大量の紙を保管するスペースが要らなくなります。
紙カルテを使っているクリニックの多くは、受付うしろのスペースなどに棚を設置していますが、その棚を撤去できるとなるとかなりスペースにゆとりが生まれることは簡単に想像できるでしょう。
さらに年数を重ねているクリニックは、カルテ庫用に別途一部屋設けていることもありますが、そのスペースが空くとなると、新しい設備を導入することなどもできるでしょう。
併せて、点滴や検査などの伝票も不要になります。余計な紙を使わなくてよくなるので、エコにも貢献できますよ。
業務の効率化
操作に慣れない最初のうちこそ入力に時間がかかる可能性があるものの、コピー&ペーストやカルテのセット登録などの機能を使えば極めて短時間で入力が可能。
電子カルテによっては、よく使う処方が上位に表示されるようになるなど、業務効率化に役立つ機能がより多彩にそろっています。
また、予約システム搭載のものであれば、予約や受付にかかる業務を軽減することも可能。会計時間が短縮されるため、患者の待ち時間も軽減されます。また、診療情報提供書をはじめとする文書作成も、電子カルテのデータを活用すればスムーズに行えます。
情報共有がスムーズ
紙カルテと違って、その場にいない人でも、端末にログインすれば入力された情報にアクセスできます。
また、診察室のパソコンで入力した情報を受付で確認できるので、院内での移動も少なくて済みます。
さらに、訪問診療先や自宅からも情報を確認できるだけでなく、紹介先の病院やクリニックへの情報共有もスムーズに行えます。
また、紙カルテの場合、このようにどこからでもアクセスできないだけでなく、他の人が閲覧中であれば順番を待たなければならない一方、電子カルテなら1部をみんなで共有することができます。
外注先とも連携できる
電子カルテによっては、検査システムに連携できるものもあります。
導入すると、検査の依頼や結果確認がそれまでよりもずっとスムーズに行えるはず。
また、レントゲンやCT、MRIの結果も電子カルテに取り込めるサイズの画像で送られてくるため、サイズが大きいデータの保管に困ることもありません。検査会社によっては、検査結果のアップロードまで行ってくれるため、検査結果の取り込み操作自体が不要な場合もあります。
レセプト関連業務が楽になる
レセプト連携によって、受付から診療、会計業務に至るまで情報が一元化されるため、業務が飛躍的に効率化されます。
レセプトと電子カルテが連携されていなければ、診療の内容から会計の金額にいたるまでのすべてを2度入力しなければならないところ、連携すれば1度で済むようになるので、大幅な時間削減となります。
また、入力内容に間違いが見つかった場合、レセプトと電子カルテを連携していれば、一方のデータを修正すれば両方のデータに反映されることも大きなメリットです。
ミスが減る
自動チェック機能を活用すればミスが減ります。たとえば、処方薬が重複していないかなどを自動で点検してもらえます。
また、レセプト連携によって“ミスが見つかりやすくなる”のも利点です。
手書き文字よりも判読しやすくなる
手書き文字のクセが強い医師は多いもの。書いた本人以外には読みづらいものであることも……。
しかし電子カルテでは一般的なフォントの文字になるため、読み間違いがまず起こりえません。結果的に、ミスも減ります。
残業が減る
紙カルテの場合、患者のバイタルを測定・観察したり、言動をメモに残したりする必要があります。
しかし電子カルテであれば、バイタルサインなどは簡単に転送が可能です。決まった内容をメモしたいときも、テンプレートを使えば時間がかかりません。
災害時でも記録を残せる
大雨による浸水や火災などは滅多に起こることではありませんが、万が一のことが起こると、紙カルテの場合、すべて消えてしまうことがあり得ます。とくに何かと自然災害が起こる日本では、この点も見逃せないところです。
その点、クラウド型の電子カルテであれば、大事なデータはクラウド上に保存されているため、万が一ひとつのパソコンが被害に遭っても他の端末からアクセス可能です。
電子カルテ導入のデメリット
電子カルテ導入にはデメリットもあります。具体的には以下のようなデメリットです。
導入コストがかかる
電子カルテの導入に際して最初のハードルとなるのが、初期費用およびランニングコストでしょう。
しかし、電子カルテによっては初期費用無料ですし、ランニングコストに関しては、クラウド型を選べば安くあげることができます。
月額料金にして、1万円前後から数万円なので、比較的気軽に導入しやすいでしょう。一方、オンプレミス型の場合は初期費用だけでも数百万以上と言われています。
操作を覚えるまでがストレス
紙カルテに手書きすることに慣れている人にとっては、操作を覚えるまでの時間は非常にストレスフルでしょう。
しかし、新しいパソコンやスマートフォンを使うときのことを考えてみてください。
最初の数日・数週間は「元のスマホに戻したい……」と嘆くことも多いかもしれませんが、そのうち新しく便利な機能を使うことを快適だと感じるようになりますよね?
電子カルテに関してもそれとまったく同じことが言えます。
これまでのやり方を変えなければいけない部分がある
電子カルテのメリットである「業務効率化」「時間短縮」を享受するためには、テンプレートの活用などが有効です。しかし、そのことによって、少なからず今までのやり方を変えなければいけない部分は出てくるでしょう。
データの移行に時間がかかる
新規開業時の導入ではなく、紙カルテからの切り替えである場合、その時点まで紙カルテに記してきたデータを電子カルテにまとめる必要があるため、その作業に膨大な時間がかかることがあります。移行作業は行わず、過去のデータを参照したい場合は紙カルテを引っ張り出して確認するのも一手ですが、完全に電子カルテに切り替わるまでの間、必要性が生じるたびにその作業を行わなければならないとなると手間だと感じるかもしれません。
セキュリティを強化する必要がある
紙カルテの場合、建物に侵入することなく情報を盗み出すことは不可能ですが、電子カルテの場合、セキュリティが甘いとデータにアクセスされる可能性があるので注意が必要です。
停電時に利用できない
電子カルテを使うためには電力が必要です。停電時や、電力供給が不安定なときには使えなくなることがあります。ただし、充電できるタブレット端末からもアクセスできるようにしておけば、最低限、情報の確認はできます。また、万が一の場合に備えて、電子カルテを開けない際に、一時的に紙カルテに書き留めることなどを考えておくといいでしょう。
電子カルテによっては運用コストがかかる
電子カルテの初期費用やランニングコストはメーカーによってさまざまで、なかには完全に無料のものもありますが、自院のニーズに合うものが必ずしも無料のものとは限らないので、運用コストがかかる可能性が高いと考えておいたほうがいいでしょう。
電子カルテ導入の注意点
続いては、電子カルテ導入にあたって注意すべきことを説明します。
メーカーのサポート体制について事前にしっかり確認する
前述の通り、電子カルテを活用するうえではセキュリティ対策が非常に重要です。
最初の設定の時点で万全の対策をとることはもちろん、万が一トラブルが起きたときにすぐに対応できるよう体制を整えておくことも大切です。
電子カルテ導入時にサポートの有無を確認して、メーカーのほうで対応が難しいなら、別途専門家を頼ることが必要な場合もあります。
クリニック内にITに精通している人がいない場合などは特に、サポートが充実しているメーカーを選ぶことが得策といえるでしょう。
タブレットの扱いに注意が必要
認知症症状のある患者が入院することもある有床クリニックなどが特に気を付けるべきは、タブレットの取り扱いです。
患者やその家族の手に届くところに置きっぱなしにしておくことなどは厳禁。
また、画面を開いたまま放置してしまうと、中を覗かれてしまう可能性もあるので十分注意してください。
電子カルテ選定のポイントは?
続いては、電子カルテの選定ポイントをみていきましょう。電子カルテの主な選定ポイントは次の通りです。
- 初期費用、ランニングコスト
- 自院の医療機器との連携の可否
- レセコン一体型か分離型か
- 機能
- 操作性
- 自院のパソコンに対応しているか否か
- サポート体制、アフターフォローが万全であるか
それぞれ詳しくみていきましょう。
初期費用、ランニングコストを確認する
初期費用、ランニングコストはメーカーによってピンキリなので、予算内に収まるものを中心として候補を拾っていくと選びやすいでしょう。
自院の医療機器との連携の可否
院内のシステムや医療機器と連携可能であるかどうかは必須の確認ポイントです。なぜかというと、連携可能かどうかによって、業務効率化が大きく異なってくるためです。自院に導入している、または導入予定の医療機器と連携可能かどうかわからない場合は、必ずメーカーに問い合わせることをおすすめします。
なお、クリニックに関しては、診療予約システムやウェブ問診システム、オンライン診療システムなどと連携するのが一般的です。病院は、PACS(医療画像管理システム)や検査システムなどと連携させることによって、患者データを有効に活用することを目指します。
レセコン一体型か分離型か
レセコン一体型の電子カルテであれば、電子カルテを操作することで、領収書、診療明細書、処方箋まで発行できます。レセコン分離型の電子カルテの場合、自院のレセコンと連携可能であるかをまず確認して、導入時には連携させる必要があるのは手間ですが、後々電子カルテを買い替えることになっても、レセコンはそのまま使い続けることができます。
機能
電子カルテの機能はメーカーによってさまざまです。そのため、使いたい機能がついているかどうかは必ず確認する必要があります。たとえば、オンライン診療を導入する予定があるなら、オンライン診療機能を有した電子カルテを選ぶのが得策ですし、経営分析を強化したいなら、経営分析ツールが備わっている電子カルテを選ぶことをおすすめします。
操作性
どのメーカーも操作性は追求していますが、操作ボタンの配置やちょっとした色味の違いによって、「断然AよりBのほうがいい」などと感じることは往々にしてあるので、操作性のよさを確認するためには、実際に触ってみることが一番です。
自院のパソコンに対応しているか否か
電子カルテによっては、win/macのいずれかにしか対応していなかったり、スペックに条件があったりする場合があります。そのため、自院のパソコンに対応しているかどうかは必ずチェックすべきポイントですが、パソコンが古くて買い替え時を迎えている場合などは、電子カルテを先に決めて、それに合わせてパソコンを買い替えるのもいいかもしれません。
サポート体制・アフターフォローが万全であるか
故障や停電などで電子カルテが使えなくなったなど、万が一のときにすぐに対応してもらえるよう、サポート体制・アフターフォローが万全であるかどうかを確認することも極めて重要です。
また、クラウド型電子カルテの場合、随時アップデートされていくので、自院の要望もアップデートへの反映を検討してもらえるかなども確認するといいでしょう。
電子カルテ導入で業務の効率化を目指そう
導入時のハードルこそゼロではありませんが、操作に慣れてくるころにはメリットを強く実感できるようになるのが電子カルテ。
1年後、5年後、10年後にさらによい医療を提供するため、スタッフが快適に仕事できる環境を整えるためにも、少しでも早い段階で導入を検討してみてくださいね。
特徴
オプション機能
対象規模
提供形態
診療科目
特徴
提供形態
対象規模
オプション機能
診療科目
この記事は、2025年4月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
他の関連記事はこちら