看護師が患者側になって気づいたこと
看護師の仕事に慣れてくると、「大丈夫ですか?」「どこか痛むところはありませんか?」「苦しくないですか?」などの声かけや処置に気持ちがこもっていないことが増えます。そうした言い回しも身に沁みついているため、無意識でも言葉が口から出てくるのです。
そうなってくると、
「患者がわたしの発言をどのように感じたか」
「患者の発言の本心は?」
について思いを巡らせることがなくなってきます。
しかし看護というものにおいては本来、患者とのコミュニケーションにおいて相手をよく観察することがとても大切です。
そこで本記事では、
- 看護師が気づきにくい、患者の本当の思い
- 患者側の目線に立つ大切さ
- 自分が患者の立場になったことで気づいたこと
- 看護するにあたって気を付けなければいけないこと
についてご紹介していきたいと思います。
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患者の本当の思い
まずは、看護師が気づきにくい「患者の本当の思い」についてお話します。
看護師が患者の本当の思いに気づきにくい一番のパターンは、相手の患者が、意思疎通が難しい状態である場合でしょう。
患者が意思疎通できるかできないかによって、わたしたち看護師に伝わる情報量は大きく変わってきます。
ただし、意思疎通ができる患者の本当の思いに気づかないことも少なくはありません。そこで今回は、後者のパターンについていくつか例を挙げつつ紹介します。
1人の患者に付きっきりになっていた
- A(意思疎通〇・車椅子)
- B(意思疎通✖・寝たきり)
- C(意思疎通△・寝たきり)
実際にわたしが経験した話です。
ある日、A・B・Cの3人が入院している大部屋の受け持ちになりました。
Aは車椅子に乗る際に少し介助が必要な程度。その他の動作は介助不要で、退院調整待ちの状態でした。
BとCは寝たきりでBは全く意思疎通ができず、Cは頷く程度の意思疎通はできましたが全く動くことができず食事も介助が必要でした。
BC共に褥瘡の処置が必要でしたし、痰の量が多く高頻度で吸引しなければいけないなど付きっきりで処置をしている状態でした。
そのような状況を日々見ていたAは「看護師さん達いつもお疲れさまだね」など声かけをしてくださる優しい方でした。
そんなある日、Cの状態がよくなり転院することになり、その部屋にはAとBだけになりました。残された2人のうち高頻度で処置が必要なのはBであったため、わたしを含め他の看護師もその部屋に行くとBにばかり手を掛けるようになってしまっていました。
蔑ろにされた
Cがいなくなって数日後の夜勤中、私ではなく別の看護師がAからこう言われたそうです。
「毎晩毎晩夜中に物音を立てられて眠られやしない。Bも転院させられないの?」
前述したように、Bは痰の量が多いため昼夜問わずむせることが多くそのたび吸引していましたが、Aからそのような苦情が来るのは初めてでした。
普段のAとは顔つきも言葉遣いも全く違っていたのでみんな驚きましたが、Aの主張も理解できるため、「部屋を移動しますか?」と提案したところ、
「なんで俺が移動しないといけないの? あ~いつも部屋に入ってきてもみんなBしか見てないし俺なんて蔑ろにされているもんね」との返答。
Aからそのように言われるまで誰一人としてAを蔑ろにしている自覚はなかったので、Aの発言にはっとさせられました。
患者の気遣いに甘えていた
その発言だけ聞くとAは急変したように聴こえますが、そこにわたしたちが気づかなかったAの本当の思いがありました。
Aは無事退院できることが決まっていましたが、一人暮らしのため、退院後、最低限の日常生活ができるよう熱心にリハビリに取り組んでいました。
わたしたち看護師にとっても、患者が少しでも早く退院できることが一番うれしいことでもあるため、なるべくA自身でできることはやっていただくよう促していました。
ですが、看護師とAの思いはすれ違ってしまっていたのです。
「Bにはいつも付きっきりなのに、自分には『自分のことは自分でしてください』ばかり」
「部屋移動を提案されて、やっぱり蔑ろにされていると思った」
とAは話してくれました。
このことが起きてしまった原因は、看護師がAの気遣いに甘えて、Aの本当の気持ちに寄り添わなかったことです。
もちろん、Aにはきちんと謝罪しました。すると、
「俺みたいに自分の気持ちを話せる人ならいいけど、そうじゃない人もいるから気にかけてあげてね」
と言われました。
その言葉によって、わたし自身、意思疎通ができる相手に対して、本当の気持ちに寄り添おうとしていなかったと気づくことができました。
患者側になって気づいたこと
Aから学んだことを肝に銘じて、気持ちを新たに働こうと思っていた矢先のことです。
少し前から気になっていた立ちくらみやめまいの症状がひどくなり、遂に仕事中座り込んでしまい、短期間入院することになりました。
根拠のない不安に襲われる
もともと貧血気味でしたが、入院するまでのレベルではないと思っていたため自分でも驚きましたが、理由は精神的なものだったようで命に別状はないと診断されました。
命に別状はないとはいえ、なかなか体調も良くならないし本当にこのまま入院していて良くなるのか、また看護師として働けるのか、本当は何か別の病気なのではないか。
などの不安に襲われるようになりました。
なぜ命に別状はないと言われたにも関わらずわたしがこのような不安を抱えてしまったのかというと、それは医療従事者ならではの価値観によるものでした。
偏った価値観・エゴ
わたしが感じた「医療従事者ならではの価値観」とはなにかというと、簡単に言うと、「こういう病状の患者にはこういうふうに接したらいいだろう」という価値観です。
たとえば、わたしのように命に別状はなく短期間で治る病気の患者に対しては、
「しっかり休まれてくださいね」のような言葉かけや挨拶程度しかしないことが現場でも多く見受けられます。
それについてさらに詳細に説明していきます。
説明の不十分
わたしのように重篤な病気ではない場合、入院時の初診以降、病気に対しての説明はあまりされないことがほとんどです。
しかし、患者の立場になって考えると、それでは不安になって当然でしょう。実際に私も入院中にさまざまな不安を抱えていましたが、初診以降、これといって何も病気に関しての説明はされませんでした。
この経験からも、
- 患者は入院中何かしらの不安を抱えていること
- 不安に対して寄り添ってくれる、安心を与えてくれるものが少ないこと
これらに気づくことができました。
気をつけなければならないこと
続いて、看護師と患者の両方の経験から学んだ、看護師として働く上で気をつけなければならないことをいつくかご紹介したいと思います。
患者とのコミュニケーション
処置の際だけでなく、何気ない会話などでもコミュニケーションを大切にすべきです。
たとえばわたしの場合、入院中、大嫌いな牛乳が毎食出ていて、はじめは体のためと思い無理して飲んでいましたが、やはり苦手で残すようになると、そのことに気づいてくれた看護師がいました。
それから、本当は牛乳が嫌いなことだけでなく、他愛もない会話をするようにもなりました。
そのことによって、誰とも話さず不安ばかりが募る入院生活を楽しく乗り切ることができたのです。
このように、ほんの些細なことでも気づいてコミュニケーションをとることで「わたしのことをよく見てくれているんだな」と患者は安心することができますし、患者との信頼関係の構築にも繋がります。
処置の際にもただ「痛くないですか? 大丈夫ですか?」などの声かけをするだけでなく、「食事はしっかり食べられていますか?」「夜は眠れていますか?」「何か不安なことはないですか?」など入院生活そのものを気遣うような言葉かけを交えると、患者も安心して過ごすことができますので意識しておこなっていただきたいポイントです。
優先順位を意識しすぎない
医療現場での仕事は命に関わ場合もあるため、優先順位の付け方が非常に重要になってきます。
ですが前述した事例のように、優先順位を意識しすぎると、「蔑ろにされている」と感じる患者が出てきてしまうことがあります。
もちろん、優先順位を守ることは大切ですが、融通を利かせるべきときにはきかせないと、患者との間に溝ができてしまったり、大きな事故に繋がったりする可能性も充分考えられますので気を付けていただきたいと思います。
視野を広く持つ
これも上記でご紹介した、蔑ろにされたと感じた患者の話に繋がることでもあります。
大部屋ですと同時に複数の患者と関わることになるので、忙しい場合など、いつの間にか無意識に一人の患者に付きっきりになってしまいがち。患者によっては、クレームにも繋がり得ます。
実際にわたしがいた病院でも、「ナースコールに対して『すぐに伺います』と返事したナースが10分以上来ないこともあれば、コールを取った第一声が『少々お待ちください』ということもあった。とにかく対応の悪さが目立った」との口コミがSNS上に上がっていたことが問題になり、患者への接し方についてなどの委員会が定期的に開かれるようになったことがあります。
このようなことを減らすためにも重要なのが、「視野を広く持つ」ということです。
日頃から視野を広く持つことを心がけていれば、自然に周囲の患者に対しても気遣い、寄り添うことができるようになります。
なにも患者一人ひとりの情報をしっかり把握する必要があると言っているわけでなく、先程ご紹介したような何気ないコミュニケーションをとることで「わたしたちはあなたのことを気にかけていますよ、しっかり見ていますよ」といった姿勢を見せることが重要なのです。
たくさん経験を積み柔軟性をもつ
様々な病気があるように患者もいろんな方がいらっしゃいます。
どんな病気・患者・環境でも上手く立ちまわることができるようになるためにも、様々な経験をして柔軟性を身に着けることが非常に重要です。
人相手の仕事は、知識のみでこなすには限界があります。
ですが、たくさんの経験を積めば自ずと多くを学ぶことができますし、二度目に同じことが起きたとき、落ち着いて対処することが可能ですし、時と場合によって対応を変えることもできるでしょう。
ただ柔軟性があるだけでは不信感を抱かれる場合もあるかもしれませんが、経験からくる柔軟性であれば、「この人になら安心して任せられる」と思ってもらえるはずです。
平等に寄り添う姿勢
これまでいくつか気を付けなければならないことについてご紹介してきましたが、全てにおいてこの「寄り添う姿勢」というものが根底に無ければ上記の内容は意味がありません。
何度も言いますが、患者は常にみなさんのことをよく見ています。
- 仕事は速いけど冷たい
- 会話が業務的
- 患者によって態度を変える
など自分はそのつもりがなくてもこのように受け取られる場合もありますので注意が必要です。
接し方言葉かけ一つひとつに寄り添う気持ちでおこなうことで、患者とより良い関係を築くことができ、仕事もしやすくなりやり甲斐も出てくるはず。小さなことからでも意識して取り組むと、自分自身のスキルアップにも繋がります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
日々働いている中で患者から心ない言葉を掛けられることもあるでしょう。
そこでただ落ち込んだり、なんでそんなこと言われないといけないのと問題から背を向けるのではなく一旦患者側の目線になって患者が言った言葉の意図や思いを考えてみたりすることでより患者に寄り添うことのできる看護師として1歩成長にも繋がりますのでぜひご紹介した気を付けるべきことなども実践していただきたいと思います。
特徴
対応業務
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。