医療費の削減、診療報酬の改定によって、昨今は、病院を経営していれば安定した生活が送れるというわけにはいかなくなりました。
また、医師や看護師の減少によって、病院の経営そのものも難しくなってきています。
医療機関の中には、クリニックや老人施設、訪問医療機関などさまざまな事業所を立ち上げている機関もありますが、病院経営が厳しくなってくると、それらの施設にも影響が出てきます。
人材の確保は最も重要なこと
病院経営を安定させるためには、外来の患者数、入院患者数、病床数、入院期間、手術件数を安定させる必要があります。
いくら、患者数や手術件数が多くても、人手が足りなければまわすことができません。
患者や手術を増やせば、その分、多忙となり、医療従事者は疲れ果てて離れてしまうことも考えられます。
そうなればさらに忙しくなり、退職者が増えるといった負の連鎖に陥ることも……。
そうならないためにも人材確保は重要です。
原因が解からなければ経営は改善できない
病院経営が厳しい状況で、ただ利益だけを出そうとしてもうまくいきません。
- 病院が位置する場所
- 地域での立ち位置
- 周辺病院との連携
- 地域人口や患者層
- 病院のビジョン
などを考えたマネジメントも重要になってきます。そのためには、病院経営について学ぶことも大切です。経営から改善できなければ、職員にしわ寄せがきます。そうならないためにも、病院経営にマネジメントは重要と言えます。
マネジメントは、さまざまな企業でも重要とされていますが、医療機関の運営においても大切です。医療機関におけるマネジメントには、理事長や院長、事務長、技術部長、看護部長など所属の責任者が大きく係わってきます。
病院の規模によっては、看護師長や主任なども係わる病院もあるかもしれません。さらに、病院経営をおこなっていく上では、看護師も重要な役割を果たしているのです。
病院を存続させるために、看護師が重要を果たしている
病院の経営存続においては、看護師の存在が要となります。
看護師は業務において、常にコスト削減と人材育成に力をいれているからです。
コスト削減では
- 必要以上の医療物品は使用しない
- 紙の無駄遣いをしない
- 残業をしない
など、削減できるところは積極的に削減しています。
また、人材育成は大きく病院経営に関わってくるため、最も力を入れていると言ってもよいでしょう。
人材育成は、レベルやスキルアップのためのものであると同時に、人材の獲得、病院を辞めさせないための取り組みでもあるのです。
人材育成を行っていることで、
- 看護師の獲得、病院の評価につながる
- 質の高い医療を提供できる
- 「この病院に就職すればキャリアアップになる」と周囲に認識される
などのメリットも期待できます。
看護師の獲得、病院の評価につながる
人材育成をおこなっていると掲げれば、「研修をおこなっているから安心して働ける」「しっかりしている病院」と就職活動中の看護師からの評価も上がり、看護師の獲得につながります。
人材育成をおこなっている病院とおこなっていない病院では、看護師獲得に差が出てくるのです。
質の高い医療を提供できる
「質の高い医療」を理念として掲げている病院は多いです。
急速に進む少子高齢化や医療技術の進歩により、医療従事者もさまざまな課題に取り組んでいかなくてはなりません。
この問題は看護師もみんな理解しています。
このような状況下で、「質の高い医療」を提供できない病院は、時代に取り残される一方です。
キャリアアップできる病院との評価につながる
近年、男性看護師も増えています。
男性は、結婚して家庭を支えなければならないと考えるでしょうし、そのためにキャリアアップを考える男性看護師は少なくありません。
また、理想の看護師像がある人、専門性からキャリアを積みたい考える人もいます。
それを現実のものとするは、スキルアップしかありません。
看護師一人ひとりのスキルアップは病院にとってもプラスになります。
病院のためにも、自分自身のためにもキャリアアップの研修は重要となります。
マネジメント不足で経営不振に
わたしが知っている医療機関で、管理をおこなう人のマネジメントに関する知識不足で経営不振となり、閉院した医療機関がありました。ここからはその医療機関についてお話します。
その医療機関は、病院移転のため、規模を縮小してクリニックとして再スタートを切った経緯があります。
しかし、移転後の経営がうまくいかず、赤字が続いていました。
病院の規模が縮小したことで外来患者の数は減少。医師も数名しかいませんでした。
また、看護師も同様です。
病院側は、「看護師は、移転してもついてきてくれるだろう」と考えていたのですが、移転と同時に退職した職員が多かったのです。
結果、患者数が増えはじめると同時にマンパワー不足になりました。
なんせ、病院から移ってきた医療従事者は、臨床検査技師、薬剤師、レントゲン技師と、看護師“以外”。
もともとの病院で働いた看護師は十数名いましたが、移転先のクリニックに移った看護師は、たったの1名だけだったのです。
この結果には病院側も戸惑っていました。
上層部は「みんな移転先にでも働いてくれる」と思っていたものが、1名を残し退職届だったわけですから。
原因はなんだったのか。
もともと働いていた看護師たちは、病院の規模が縮小する前から働いていた超ベテランです。
その人たちが、退職してまで病院で働くことを拒んだのです。
原因は、上層部のマネジメント力にもありました。
辞めた看護師たちは、病院側に、病院経営に必要なマネジメント能力が足りないことが理解できず、不信に思っていたということでした。
人事を決めるのは上層部
人事を決めるのは上層部です。
看護部で言えば、看護部長になります。
しかし、話に聞くと、看護部長は自分に都合の良いスタッフのみ病院へ移したそうです。
周りの職員らはそのことに気づきましたし、当然、本人も気づいていたそうです。
そんな扱いをされれば誰だって、その看護部長がいるところで働きたいとは思いません。
お互いに信頼関係が失われていたのかもしれません。
閉院させないためにヒトは優先事項
マネジメントにおいて、経営の4大資源といわれているものがあります。「ヒト、モノ、カネ、情報」です。
この4つが複雑に絡み合うのです。
課題を明確にし、しっかりとしたマネジメントができていれば、クリニックが閉院に追い込まれることはなかったかもしれません。
そして、マネジメントをおこなっていく上で「ヒト」を重要視していれば、信頼関係が失われず、このような結果にはならなかったのかもしれません。
マネジメントする人が育っていなかったことも、1つの原因だったのかもしれません。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。
執筆 男性看護師ライター | ベル
看護師歴14年目。救急、ICU、外科、内科を経験トラブルも多い看護の世界でいろいろいあってもこの仕事が好きな男性看護師。 現在、管理職として働きながらブログなどでも経験を活かしたノウハウを執筆しています。
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