在宅医療のニーズが高まっている昨今、訪問看護師の人手不足は大きな問題となっています。
利用者が増えたとしても、対応できる看護師が足りていなければ経営を軌道に乗せることもできないので、各事業所でなんらかの対策をとることが必要ですが、具体的にどんな対策を講じればいいのでしょか?
訪問看護師の人手不足の原因は?
有効な対策を考えるためにも、まずは人手不足の原因を知ることが大切です。
訪問看護師が不足している原因としては、「看護師数そのものが足りていない」「訪問看護ステーションで働く看護師が少ない」の大きく2つにわけられます。
少子高齢化により看護師数そのものが足りない
看護師数そのものが足りていない原因としては、少子高齢化などが考えられます。
日本では、少子高齢化が進み、働き手が不足しています。かねてより国を挙げて取り組んでいる「2025年問題」は、人口の年齢別比率が劇的に変化して、「超高齢化社会」となることによって起きるさまざまな問題を意味しますが、医療の人手不足もそのひとつ。
国民の約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上となることから、高齢者を支える働き手は大きく不足しています。
訪問看護ステーションで働く看護師数が少ない
厚生労働省が公表している「令和2年衛生行政報告例」によると、令和2年末時点の看護師総数は128万911人であることがわかっていますが、そのうち訪問看護ステーションに勤務している看護師はわずかに6万2,157人とされています。
ちなみに、病院で働く看護師は88万3,715人、クリニックで働く看護師は16万9,343人なので、訪問看護ステーションを勤務先に選ぶ看護師がいかに少ないかがわかるでしょう。
参照: 厚生労働省「令和2年衛生行政報告例」就業場所別にみた就業保健師等
訪問看護師の仕事が不人気な理由
では、なぜ訪問看護師になりたくないと考える看護師が多いかというと、下記のような理由が考えられます。
- 1日に何軒ものお宅を訪問しなければならないため体力的負担が大きい
- 利用者の家にあがることに抵抗がある
- オンコールに対応したくない
- 現場では自分1人で仕事しなくてはならないのが不安
- 地域医療よりも先進医療を極めたい
- ノルマを課される仕事をしたくない
- 少しでも多く稼げる職場を選びたい
- 利用者やその家族とのトラブルが怖い
- コミュニケーション力に自信がないため、他職種連携が不安
- (運転必須のエリアの場合)免許がない
これらのうち、1つでも当てはまる項目があると、訪問看護ステーションで働くのは避けたいと考えてしまうのでしょう。
また、「少子高齢化により看護師数そのものが足りない」「訪問看護ステーションで働く看護師数が少ない」の上記2つの原因のうち、各事業所でアプローチできるものは主に後者であるといえます。
訪問看護の現場で働くことに魅力を感じてもらえるよう、各事業所が工夫していくことが大切です。
訪問看護の事業所ができる、看護師不足解消に役立つ対策は?
続いては、訪問看護ステーションをはじめとする訪問看護に携わる事業所が、看護師不足解消のためにとりたい対策をみていきましょう。
未経験者、初心者のサポートを強化する
訪問看護の現場では、基本的に看護師がひとりで利用者に看護を提供するため、経験がない、もしくは経験が浅い看護師にとっては大きな不安がつきものです。そのため、未経験者や初心者にも安心してもらえるよう、まずは教育体制を整えることが大切です。
訪問看護師が初めてひとりで現場に出るまでには、先輩看護士の訪問看護に同行することで必要なスキルを身に着けることが大切ですが、人手が不足している事業所では、先輩に同行できる回数が少ないこともあるでしょう。
しかしそれでは、看護師の訪問看護デビューをしっかりサポートできないだけでなく、利用者を危険な目に逢わせてしまう可能性も考えられます。それを防ぐためにも、一度教育体制について見直してみるといいでしょう。
関連職種との関係構築をサポートする
訪問看護の仕事そのものは看護師がひとりで行うものですが、利用者宅を訪問する日時や各利用者の状況を確認したり、訪問看護が終わってから、各利用者の状況を報告したりするうえでは、関連各種と連携することが不可欠です。
しかも、医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、ケアマネージャーなどさまざまな職種の人と関わることになるため、スムーズに連携できなければ、看護師は大きなストレスを抱えることになります。
そのため、関連職種との関係構築をサポートすることだけでなく、一定期間以上働いてくれている看護師に対しても、関連職種との連携に関して困っていることはないかを定期的に確認することが望ましいといえるでしょう。
待遇に関して改善できることがないかを今一度考える
厚生労働省が公表している「令和4年度介護事業経営概況調査結果」によると、赤字の訪問看護ステーションは約3割にも上ることがわかります。
事業所が赤字であるのに給与を上げるということは難しいかもしれませんが、たとえば、看護師が営業で取引先開拓に成功した場合のインセンティブを大きくすることなどは、大きなやりがいにつながりやすいといえます。
看護師の業務の時短、効率化に役立つICTを導入する
看護師の業務の時短または効率化に役立つICTを積極的に導入すれば、看護師の業務負担が減るため、離職率を下げられる可能性があります。
具体的にどのようなICTが考えられるかというと、クラウド型電子カルテ、クラウド型勤怠管理システム、業務用チャットツールなどです。クラウド型電子カルテがあれば、看護の記録を移動中などにもつけやすく、クラウド型勤怠管理システムがあれば、一日の業務の開始前と終業後に事業所に戻らなくてもよくなります。
業務用チャットツールに関しては、お金をかけて導入しなくても、LINEやChatworkなど無料で利用できるものもたくさんあります。
ホームページやSNSを活用して事業所の魅力、訪問看護のやりがいを発信する
求職者から興味を持ってもらえるよう、事業所の魅力、訪問看護のやりがいについてさまざまに発信していくことが大切です。
自社にはどのような人がいて、どんなふうに業務に必要な連携をとっているのか、スタッフ同士どのように助け合っているのかが伝わる内容が理想です。
訪問看護という仕事のやりがいについては、実際に働いている看護師や、可能であるなら利用者にもインタビューを受けてもらって、記事または動画として発信すると多くの人の目に触れやすいでしょう。
動画として発信する場合は、アピールしたい部分を確実に見てもらえるよう、1分以内のコンパクトな動画にまとめることがおすすめです。
業務改善助成金を活用する
「業務改善助成金」とは、生産性向上に資する設備投資などを行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資などにかかった費用の一部を助成してもらえる制度です。
最大600万円までの費用の一部が支給されますが、事業所内の最低賃金を30円以上引き上げる必要があります。申請手続きが面倒に感じられるかもしれませんが、最低賃金が上がることで働き手にも喜んでもらえるなどメリットはたくさんあります。
参照: 厚生労働省「業務改善助成金」
働き方改革推進支援助成金を活用する
「働き方改革推進支援助成金」とは、経費の一部を補助してもらえる助成金です。
助成金を受け取るためには、残業時間の削減と、有給休暇消化の促進に向けた職場の環境整備を実施する必要があります。
いずれも、働き手にとってはうれしい改善となるため、助成金を受け取りながら看護師のモチベーションを上げる有効な手段のひとつといえます。支給される金額は、取り組みの内容や経費の総額に応じて最大200万円までとなっています。
訪問看護の人手不足解消には複数の取り組みを行おう
前述の通り、赤字経営の訪問看護ステーションはかなりの割合で存在しています。しかし、だからといって人手不足解消が難しいというわけではありません。
ただし、管理者がひとりで奮闘しても結果が出にくいので、事業所のメンバー全員で力を合わせて課題解決に取り組むことをおすすめしますよ。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年8月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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