急に具合が悪くなった場合、病院に行くべきか、救急車を呼ぶべきかの判断は難しいものです。
そうした、「どうしたらいい」という事態をサポートするのが「救急相談」です。相談員が医療機関を受診するべきかどうかなどをアドバイスしてくれるのですが、埼玉県では、「チャット形式」で診断を行う「埼玉県AI救急相談」を行っています。
今回は、この「埼玉県AI救急相談」についてご紹介します。
全国初となるAIを用いた救急相談
「埼玉県AI救急相談」は、全国初となるAIを用いた、無料の救急相談です。
埼玉県では、それまで看護師が電話で対応する救急相談を行っていましたが、相談数の増加や、電話での相談をためらう若い世代に対応するため、チャット形式の救急相談の導入が検討されました。
加えて、聴覚障害のある方も気軽に利用できることも、AIチャットボット採用の背景にあったといいます。
システムはNECの協力を受けて開発され、2019年4月19日から同年5月31日まで試行運用を開始。テストで出た問題点などを改善し、2019年7月19日に本格始動となりました。
自由入力からでもAIが症状を分析
「埼玉県AI救急相談」はスマートフォンとパソコンから利用できます。
「埼玉県AI救急相談」のHPにアクセスすると、性別や年齢、相談の対象者、症状などを入力する画面に切り替わります。症状は「発熱」「腹痛」「頭痛」など5項目から選ぶほか、自由記述も可能です。
以降は該当する症状を選んだり、入力した文脈から該当する病気をAIが解析。可能性のある症状のリストアップが行われます。
最後に該当する症状の「緊急度」が、「今すぐ救急車」「直ちに医療機関を受診」「早めに医療機関を受診」など5段階に色分けして表示され、その後の対処法を指示します。特に緊急性の高い場合は、119番ボタンを表示するなど、すぐに救急に連絡できるような工夫がされています。
例えば、基礎情報入力画面で「頭痛」を選んだ場合は、次に「息が苦しい」「冷くなっている」「普通にしゃべれない」などの症状が表示され、この中から該当するものを選びます。
ここで「どれにも当てはまらない」を選ぶと、次は「強い吐き気がある」「めまいがある」といった異なる症状が表示されます。このような形で症状を選択するだけなので手軽に利用できます。自由入力も可能なので、細かいニュアンスで伝えることも可能です。
埼玉県AI救急相談で行った相談内容は、そのまま「埼玉県救急電話相談」に引き継ぐことも可能です。チャットでおおまかな症状と対策を確認した上で、相談員にさらに細かく指示を仰ぐといった利用もできます。
NECの最先端技術が生かされている
自由入力の場合でも正確に文脈を読み取る本システムですが、これはNECが開発した「テキスト含意認識技術」が役立っています。
NECでは、「NEC the WISE」という最先端AI技術群を開発しており、「テキスト含意認識技術」もそのひとつ。高い認識技術が特徴で、海外の研究機関からも評価されているシステムです。今後も、こうした高精度なAI認識技術を医療の分野で活用することが期待されます。
全国初のAIを用いた「埼玉県AI救急相談」をご紹介しました。
あくまでアドバイスではありますが、気軽に相談できることで、重篤な症状を未然に防いだり、診察控えを避けられたりできるかもしれません。また、新型コロナ感染症の拡大が収まらない今、むやみに医療機関に行くことを避けるためにも救急相談の存在は重要です。
現在のところ、他県ではAIを活用した救急相談を導入しているところはないようですが、これから主流になる可能性もあるでしょう。そのためにも、「埼玉県AI救急相談」の今後に注目です。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年7月時点の情報を元に作成しています。