開業医は年収億単位を目指せる?手取り平均値・中央値を診療科と地方で比較

年収1億円を超えるのはかなりハードルが高いこと。だけど、年収が高い医師という職業なら、他の職業の人と比べて高いハードルを越えやすいということはあり得るのかもしれません。

では実際のところ、医師として年収1億円を稼ぐためにはどんなことが必要なのでしょうか?また、勤務医との差はどのくらいあるのでしょうか?今回はあらゆる視点から、開業医と勤務医の収入の違いについてみていきます。

目次
  1. 開業医の平均年収は約2,807万円
  2. 年収1億円を稼ぐには…
  3. 勤務医の平均年収/手取り
  4. 診療科別の平均年収比較
    1. 療科の平均年収ランキング
    2. 脳神経外科
      1. 脳神経外科医が扱う疾患例
      2. 開業に必要な予算
    3. 産婦人科
      1. 開業に必要な予算
    4. 外科
      1. 開業に必要な予算
    5. 麻酔科
      1. 開業に必要な予算
    6. 整形外科医
      1. 開業に必要な予算
    7. 呼吸器科
      1. 開業に必要な予算
    8. 消化器科
    9. 循環器科
    10. 内科
      1. 開業に必要な予算
    11. 精神科
      1. 開業に必要な予算
  5. 首都圏と地方の開業医年収比較
  6. 開業医にのみ必要なコストとは?

開業医の平均年収は約2,807万円

年収1億円がどのくらいハードルが高いのかを知るために、まずは開業医の平均年収をみていきましょう。

厚生労働省が公表している「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、開業医の平均年収は2,807万円です。さらに、平均年収から所得税、住民税、社会税を控除した手取り額は1,675万円です。

年収1億円を稼ぐには…

平均年収が約2,807万円ということは、年収1億円稼ぐためには、平均年収の4倍近く稼ぐ必要があるということです。

この倍率を見ただけでも「無理……」と思うかもしれません。しかし、実際に年収が1億円を超える開業医が存在するということは、それだけ稼ぐ方法があるということ。

医療保険制度を用いない自由診療を行ったり、FXや株取引などの投資業を副業にしたりなど、手段はあるにはあるものです。しかし、いずれの方法も確実にうまくいくとは限らないですし、中には、「自由診療や副業は自分には向いていない」と感じる人もいるでしょう。

また、高収入を重視するあまり医療の質を落としてしまっては、長い目で見たとき、患者が離れていってしまうことも考えられます。「理想の医療」「理想の暮らし」両方についてしっかり考えながら、クリニックの方針を考えていくことが大切なのではないでしょうか。

勤務医の平均年収/手取り

続いて、勤務医の平均年収ですが、おおよそ1,491万円となっています。

開業医の年収との差額は1,316万円で、開業医は勤務医と比較して約1.88倍の年収を得ていることになります。

また、勤務医の手取り額は1,075万円。こちらに関しては660万円の差額で、開業医は勤務医の約1.65倍の手取り所得を得ている計算です。

実際、開業医になると勤務医時代と比べて高い年収が期待できることから独立を目指すドクターも多いです。ただし、そのぶんデメリットもありますし、必ずしも平均値以上の年収を得ることができるとは限らないので注意が必要です。

⇒参照:第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告

診療科別の平均年収比較

続いては診療科別の平均年収をみていきましょう。

療科の平均年収ランキング

労働政策研究・研修機構が公表している「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、診療科の平均年収ランキングは以下の通りです。

順位診療科平均年収
第1位脳神経外科1480.3万円
第2位産科・婦人科1466.3万円
第3位外科1374.2万円
第4位麻酔科1335.2万円
第5位整形外科1289.9万円
第6位呼吸器科・消化器科・循環器科1267.2万円
第7位内科1247.4万円
第8位精神科1230.2万円
第9位精神科1220.5万円
第10位救急科1215.3万円

⇒参照:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」

それでは、各診療科の特徴をみていきましょう。

脳神経外科

1位にランクインした脳外科医は、生死に関わる手術を行うことが多く、リスクが高いことも特徴のひとつ。そのため、なりたいと思う人が少ないことから、常に人手不足の状態で、そのぶん年収も高い傾向にあります。

脳神経外科医が扱う疾患例

  • 脳出血
  • 脳腫瘍
  • 脳梗塞
  • 頭部外傷
  • 脊髄疾患
  • パーキンソン病などの神経疾患

開業に必要な予算

脳神経外科は、画像診断装置を持つか持たないかで、開業資金も自己資金も大きく異なってきます。

まず、開業資金の幅としては、6,000万円~2億5,000万円程度。CTやMRIを持たずに開業するなら、開業資金はこの下限となり、自己資金ゼロでも開業できます。画像診断装置を持たずに開業する場合、都市部の画像診断センターなどと連携することが必要となってきます。

産婦人科

2位にランクインした産婦人科の給与水準が高い主な理由は、当直の多さと訴訟リスクの高さです。また、分娩がいつはじまるかわからないことから、オンコールの回数も多くなりがちです。

開業に必要な予算

自己資金ゼロでも開業可能な場合があります。目安となる土地、建物代は約3,000万円~、設備代は約2,000万円です。

外科

外科医の主な仕事は、検査や診断結果に基づき、手術が必要かどうかを判断すること。そして、手術を通して患者を治療することです。

専門によっては急患対応や緊急手術が多く、手術時間が長くなることもあるため、平均年収が高い代わりに勤務時間が不規則になりがちです。

開業に必要な予算

自己資金ゼロでも開業可能な場合があります。土地、建物代の目安は約3,000万円~、設備代の目安は約1,500万円です。

麻酔科

麻酔科医は、ペインクリニックでの治療から、緩和医療、集中医療、救急医療、総合医療まで幅広い業務を担当します。つまり、自院で行う仕事ではなく、また、ひとりの患者を単独で診るということもないため、麻酔科医クリニックというものは存在しません。フリーランスとして働いている麻酔科医はいます。

開業に必要な予算

上記の理由によりナシ

整形外科医

整形外科整形外科医の患者は、乳幼児から高齢者まで実にさまざま。

たとえば、成長期の子どもがスポーツをし過ぎて膝関節を傷めて整形外科を訪れることもありますし、乳幼児であれば先天性股関節脱臼などで通院することもあります。

また、超高齢化社会を迎えた日本では、高齢の患者が多いのも特徴。腰痛や膝痛、骨粗しょう症などに悩まされ、定期的に通院している患者も多いです。今後ますますニーズが高まることが予想されるでしょう。

開業に必要な予算

テナント開業であるなら自己資金ゼロでの開業も可能ですが、戸建ての場合は、1,000万円程度の自己資金を用意することが望ましいでしょう。

呼吸器科

気管および気管支、肺、胸膜にいたるまでの呼吸器の疾患治療を専門とする診療科です。少子高齢化にともない、高齢者の受診が増えていることから、今後ますますニーズが高まることが予想されます。

開業に必要な予算

呼吸器科には、肺がんや気胸などを診る「呼吸器外科」と、手術適用のない肺がんや、肺炎、気管支炎などを診る「呼吸器内科」が存在しますが、手術室の有無などの違いがあるため、それぞれ内科、外科に準じると思っていいでしょう。

消化器科

※「消化器内科」として「内科」の項目で後述します。

循環器科

※「循環器内科」として「内科」の項目で後述します。

内科

内科医の専門分野は、大きく3種類いくつかに分かれます。うちひとつは「消化器内科」で、主に胃腸の疾患や不調を扱います。ま

た、筋肉や神経、脊髄の疾患に特化した内科は「神経内科」。

精神的なことが原因で内臓に不調をきたす病気を専門とする内科は、「精神内科」に分類されます。そのほか、循環器内科などの専門内科も存在します。

開業に必要な予算

保証人がいて土地があれば、自己資金ゼロでも開業できます。テナント開業の場合は、運転資金も含めると6,000万円~8,000万円程度の用意が必要となります。

また、競争の激しい消化器内科や、内科のなかでも立ち上がりが遅い循環器内科は、自己資金は1,000万円程度用意しておいたほうがいいでしょう。

糖尿病内科・内分泌内科の場合は、勤務先の外来患者を連れていける場合などがあるので、自己資金ゼロ円でも開業可能です。

精神科

入院施設を有していないメンタルクリニックは、時間外勤務やオンコール、日当直などがないため、ワークライフバランスを保って働きやすいのが特徴です。開業のハードルは、外科や内科のように高額な医療機器を導入する必要がないため低めです。

開業に必要な予算

自己資金ゼロでも開業可能な場合があります。また、設備代がもっとも安く済むのも大きな特徴。最低限、電子カルテやレジスター、診療用ベッド程度がそろっていれば診療可能です。

首都圏と地方の開業医年収比較

続いて、首都圏と地方における開業医の年収にまつわる違いをみていきましょう。

厚生労働省が公表している「賃金構造基本調査」によると、医師の平均年収トップ3とワースト3は以下の通り。全国でもっともドクターの数が多い東京都はワースト8位で、大阪は29位であることから、概して地方の方が平均年収が高めといえるでしょう。

⇒参照:厚生労働省「平成28年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

また、それぞれの特徴としては以下の通りです。

首都圏地方
特徴大学や大病院が密集しているため、クリニックの地位は低くなりがち地域に根差して診療を行うクリニックが歓迎されやすい
クリニックのニーズブランド志向が強い患者も一定数いるため、ドクターの出身大学などもチェックされがちクリニックが不足しているエリアではニーズが高いものの、集患・増患が見込めない場合がある
開業のメリット・大病院や周囲の医療機関と連携しやすい・土地・建物代などが安い・競合が少ない
開業のデメリット・土地・建物代などが高い・競合が多い・スタッフの確保が難しい

初期費用を抑えて開業するには、地方のほうが圧倒的に有利です。一方、地域によっては集患もスタッフの確保も難しい場合があるので、診療圏調査などをしっかり行ったうえで開業エリアを決めることが、安定した年収につながりそうです。

開業医にのみ必要なコストとは?

開業医と勤務医の収入のみを比較すると、「開業医のほうがお金が貯まりそう!」と思うもしれません。しかし、前述の通り、開業時には多額な資金を要すものですし、その返済は一年やそこらで終わるものではありません。

また、スタッフの給与や社会保険料をはじめとする人件費、医薬品・医療材料費、医療機器のリース料、広告宣伝費、通信費、備品・消耗品費などさまざまなことにコストがかかります。

その支払いにかかる手間なども考慮すると、一概に「年収が高いほうがいい」とは言いきれない場合もあるでしょう。

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執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

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