看護師として働いていると様々な職種と関わる機会が多いですが、中でも多く関わるのが医師です。医師の指示がないとできない処置や業務も多数あるため、医師との関わりは必須です。ですが、医師と関わる中で「?」と感じることはありませんか? 私は特に急性期病棟にいた時に何度か感じることがありました。
たとえば、
- なぜこのタイミングでその指示?
- この病気であれば●●の方がいいのに
- これも知らないの?
このように知識不足を感じることも多々ありました。実際、医師より知識のある看護師はいるのです。「まさか」と思われる方もいるかもしれませんが、私の経験上医師より知識のある看護師はいました。経験豊富な看護師である場合は特に、医師よりも早く現場を判断して動いていることがあります。具体的なエピソードをいくつかお伝えします。
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患者の思い
看護師は医師に比べ常に病棟にいることから、患者と接する時間もその分多いです。日頃からきちんとケアをしているのであれば、患者のわずかな変化にも気づくことができるため、異常の早期発見に繋がることもあります。
たとえばこんなことがありました。
その日、看護師Bは、患者さんAの受け持ちで業務をおこなっていました。Aは整形の患者さんで、医師やリハビリスタッフからも退院の許可がおり、退院は目の前といった状態でした。ある日、担当医CがAの元を訪れました。そのときAは「最近胸が苦しいんです」と言いました。するとCは、「最近は特にリハビリを頑張られていたので、体がびっくりしているのかもしれませんので少し様子を見てみましょう」。このようなやりとりがあったと言います。何気ないやりとりに思えますが、後々事件に繋がることになるのです。
些細な変化に気づく
退院まで残り1週間となったころAの容態が変わりました。いつもは棟内をリハビリがてら散歩していたAの姿をいつの間にか見なくなったことに、Bはどこか異変のようなものを感じていました。Aはリハビリ・お風呂・トイレ以外は部屋にいることが多くなっていて、BはAに「最近あまりお顔を見ないなと思っていたんですが、どこか具合が悪いなどはないですか?」と尋ねたところ、「退院まであと1週間だし、それまでに転んだりすると大変じゃない? だからこうやって大人しくしてるの。心配してくれてありがとうね」と笑顔で返答してくれたようですが、Bはどこか腑に落ちなさを感じていました。それはなぜかというと、Aは過去に不整脈を発症しており、ここ数年は症状が落ち着いている様子ですが、今回の入院で過度なリハビリにより症状が出てきてしまったのではないかと考えていたからなのです。
とりあえず部屋を後にしたBですが、リハビリ後にもう一度Aのところに向かうことにしました。向かっていると途中、ちょうどAの部屋のコールが鳴りました。すぐに向かうと、そこには洗面所の前でぐったりしたAがいました。急にめまいを感じて一人で歩くことができずにコールを押したと言います。車椅子に乗っていただき部屋に戻ると、すぐにバイタル測定をおこないました。Bの嫌な予感は的中。血圧の上の値は70しかなく、Aは顔も青白く胸が苦しいと言っていました。前述したように、不整脈はここ数年は比較的落ち着いており薬も飲んでいない状態でした。Aが最近部屋から出てこなくなった本当の理由は、「動くと胸が苦しくなりめまいもおこるから」。不整脈によるものだったのだと確信しました。Bが気づいたことで大事にならずに済んだと、そのときにいたスタッフみんなが口をそろえて言っていました。
医師の連絡不足・過信
ここまででお気づきの方もいらっしゃると思いますが、Aは以前、Cに胸の苦しさに関して訴えていました。それなのになぜ私たち看護師は知らなかったのか? それはまぎれもなくCの連絡不足。そしてそのくらい大丈夫だろうといった過信によるものでした。
看護師という立場ということもあり、BはCを問い詰めるようなことはできませんでしたが、Aはもうすぐ退院できることが嬉しくて、Cの意見に対しても反論出来ずそのまま我慢して過ごしていたと言います。Aの件が起こったあと、Cが病棟を訪れましたが、私たち看護師に連絡しなかったことに関しては何も話はありませんでした。後に師長から、CはAから話をされたとき、リハビリ直後で疲れていたのではないかと思い経過観察をするつもりだったと報告がありました。
患者の本心をくみ取る
Cは経過観察をするつもりだったようですが、Aから訴えがあった時点でカルテを再度確認する必要がありましたし、そこで不整脈のことを知っていれば、もっと早くに対応できた可能性も充分に考えられます。Bのように、Aの些細な変化に気づいてカルテを再度確認すれば、不整脈のことを知り、自身の不整脈の知識と照らしわせることができたと考えられます。
患者から「医師を目の前にすると何も言えなくなる」といった思いをよく聞きます。それはなぜかというと、
- 年代的なものもありますが、「先生」に対してもの申すことは失礼と思っている
- 先生の言うことは全て正しいと思っている
- 一刻も早く退院したいという思いから多少異変を感じていても我慢している
このようなことから、久しぶりに医師が会いに来たとしても本心を言うことができない患者が非常に多いのです。ですので、患者の本心をくみ取り、自身の持っている知識と擦り合わせることが非常に重要です。
知識がないことを認めない
驚く方もいらっしゃると思いますが、実際に私はそのような医師に何人も会ったことがあります。実際にどのようなことがあったのかご紹介します。
退院調整が難航している患者
ある病棟で勤務していたときの話です。80代の患者さんAは、身寄りがなく、認知症を患っていました。日常生活をとても一人で送れる状態ではなく、退院調整が難航していました。週に1度病棟カンファレンスを開くも、Aに関しては一向に話が進まず皆頭を抱えていました。
無責任な発言
Aの担当医Bは、退院調整が難航していることをよく思っていない様子で、「全然話が進んでないじゃないか。ちゃんと動いているのか?」と看護師に言ってくることもありました。
実際Aのような患者さんは多く、病院側では立ち入りできない問題も多々あるため、退院先がないことが理由で長期間入院している方も少なくありません。そのことをBも知っているはずなのに、なんて無責任な発言をするのかと残念でありませんでした。
医療以外は知識不足?
入院期限が迫っている頃、AのICが行われることになりました。参加者は、B、ケアマネージャーのCそして、私です。この3人で、Aの退院調整について話し合いました。Aは軽介助で車椅子に乗ることはできるものの、全てにおいて意欲がなくほぼ寝たきりの状態でした。このことから、Aは施設入所の方向でCは話を進めていました。しかし、Bはなんだかはじめから苛立っている様子で、「なんでこんなに難航しているのですか? 入所先が見つかっていないんですか?」と話し始めました。
正直、私とCはBの発言に驚きました。なぜかというと、身寄りがないだけならまだしも、金銭管理も困難となれば成年後見人制度を利用するのが普通です。そして、施設自体も後見人がいない場合は入所拒否のところがほとんどで、Aはまだ後見人すら見つかっていない状態だったのです。このことからも、Bの発言はまぎれもなく法的な知識不足によるものだと考えられます。私たち看護師は医師よりもケアマネージャーと接する機会が多く、そのような事例をいくつも経験しているため慣れているところもあり、何の気なしに私は次のようにBに言ったのです。
知識がないことを認めようとしない
私「Aさんはまだ後見人も見つかっていない段階なので、見つからない限り施設を探すのは難しいかと…」
B「じゃあ後見人が必要ない施設はないんですかね? というか身寄りがないそうだけど子供がいるんでしょ? 片っ端から連絡してみたんですか?」
知識がない上に、自分の考えばかりを、私だけならまだしもその日はじめて会ったCにもぶつける姿に驚きを隠せませんでした。Cは唖然としていましたが、立場上Bにあまり意見できないことから、私が変わってBにこう伝えました。
私「今はどこも後見人がないと受け入れが難しいんです。後見人が見つからないことにはその先には進めません」
B「じゃあ病院側がどうこうできる問題じゃないし関係ないじゃないか。私がここにいる意味はあるのかね?」
私「実際まだうちに入院されている患者ですし、関係ないことはないのでは?」
B「じゃあ君が担当したらいい。結果がわかり次第報告してくれ」
私はBの発言全てに唖然とさせられ、返す言葉もありませんでした。
私はBの発言を見てこのような点を問題だと感じました。病院内の問題ならまだしも、外部のケアマネージャーも関係していることから、もしかしたらクレームに繋がる可能性も十分に考えられます。この件についてはCも大目に見てくださり無事終えることができました。
法的な知識・現在の施設携形態の知識。これらをBが持ち合わせていなかったことで、このときのような出来事が起きてしまいました。はじめから知識があれば、Cに対してこのような発言をしなかっただろうし、もっとAに寄り添った話し合いができたのではないかと感じました。
医師より知識があることで得られるメリット
ここまでは比較的医師と看護師によるいざこざのような内容をご紹介しましたが、続いては、看護師のほうが医師より知識があることで、双方に得られるメリットについてご紹介します。
医師の負担を減らすことができる
新人のころは特に、医師の指示を最重視していることから、何をするにも医師に指示を仰いだ経験は誰しもあるのではないでしょうか。もちろんそれは間違ってはいませんが、必ずしも全てのことに医師が対応できるとは限りません。医師も外来診察に病棟の回診、オペに講演会など多忙なうえに病棟から指示を仰ぐ電話があるとなると、キャパオーバーになっていしまうこともあります。「そんなことで電話してくるんじゃない!」と言われたことがある方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、看護師は自分なりに考えて行動することになりますが、これによってさらに知識が増えますし、医師の指示がなくても行動できるようになれば、医師の負担を減らすこともできます。また、「医師より知識をもとう」と心がけて自分のレベルアップにもつなげられることは、看護師にとってのメリットの一つです。
自信がつく
同期で、常に先輩や医師の指示がないと怖くて看護できないという人がいました。これは自信のなさが根本にあるのですが、いつまでも周りに頼っていては、いざとなったときに困るよと周りが話していました。
あるとき、夜勤中にその同期の受け持ち患者が急変して、医師にも電話が繋がらず夜勤ペアも新人だったことから、自分一人で解決しなければいけない状況になりました。なんとか朝まで過ごすことができ、同期は初めて誰にも頼らず自分で考え行動したのです。このように自分で考え知識をつけると自然と自信がついてくるようになります。その後、同期は目覚ましい成長を遂げ、医師から頼りにされるベテラン看護師になることができました。
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まとめ
医師より知識がある看護師がいると聞くと、「その病院だいじょうぶかな」「その病院の先生に任せて大丈夫なのかな」と思われるかもしれません。ですが、医療現場はたくさんの職種が連携し協力することで成り立っています。一人ひとりが勉強に励み、常に新しい知識を吸収し続けることで、よりよい医療を提供することができるはずです。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年8月時点の情報を元に作成しています。