クリニックにおいて医薬品や医療機器を安全・安心に使用するためには、それらに関する情報をいち早く入手したいもの。そのようなクリニックのニーズに応えてくれるのが、厚生労働省所管の独立行政法人である『医薬品医療機器総合機構』(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:PMDA)が提供する『医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)』(以下『PMDAメディナビ』と表記)です。
このサービスに登録すると、医薬品や医療機器などの回収の情報をメールで知らせてくれます。今回は『PMDA』に取材し、『PMDAメディナビ』についてご紹介します。
『PMDAメディナビ』の背景と開発経緯
――『PMDAメディナビ』が作られた背景について教えてください。
『PMDAメディナビ』は、『PMDA』の第一期中期計画(平成16年度~20年度)に挙げられた「医療関係者への情報のフィードバック」の方策の一つとして構築されたサービスで、2005年(平成17年)8月から運用を開始しています。
2010年(平成22年)度にまとめられた「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」の最終提言において、本サービスへの登録を推進すべき、とされ、登録の推進活動やサービス内容の改善などを行ってきました。
――メーカーから不具合や回収が発表されてから、『PMDAメディナビ』で掲載・発信されるプロセスはどのようになっていますか?
製造販売業者などが回収に着手した場合、医薬品医療機器法に基づく回収着手報告に合わせて、インターネット(『PMDA』のホームページ)掲載用資料を作成し、都道府県薬務主管課等を介して厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課に提出します。
『PMDA』では、厚生労働省から提供される当該資料を『PMDA』のホームページに掲載すると共に、回収情報クラスIおよびクラスIIについては併せて『PMDAメディナビ』で配信しています。
――『PMDAメディナビ』から送られてくる情報の頻度はどのようになっていますか?
回収情報については、1日1回区分ごとに情報をまとめてお送りしています。2021年度の回収に関する配信内容としては、クラスIが65件、クラスIIが340件ありました。『PMDAメディナビ』では回収情報のみならず、医薬品や医療機器の安全性に関するさまざまな情報を配信しています。
――回収になる医薬品、医療機器のクラス分けについてはどのようになっているのでしょうか。
厚生労働省から「医薬品・医療機器等の回収について」という通知が2014年(平成26年)11月21日に出ておりまして、医薬品・医療機器等の回収に関する基本的な考え方として、以下のようになっています。
<<引用 ここから>>
「仮に医薬品・医療機器等に何らかの不良が生じた場合、発生するおそれのある健康被害の程度、不良が生じている可能性の高い製品範囲の特定等について科学的見地から十分検討し、必要な回収が確実に実施されることが重要である。
また、回収に当たっては、本来回収する必要がある不良医薬品・医療機器等が適切に回収されず、必要な報告がされないことや、必要以上の範囲の医薬品・医療機器等が回収されること等による保健衛生上の問題が生じないよう、配慮しなければならない。
回収の申し出があった場合には、本通知に定められている回収の定義等を参考に製造販売業者等の指導を行うこと。」
参照・引用元:「平成26年11月21日付け薬食発1121第10号『医薬品・医療機器等の回収について』」(平成30年2月8日一部改正)
<<引用 ここまで>>
また、回収についてのクラス分けは不良医薬品・医療機器などの使用によりもたらされる健康への危険性の程度により、以下のとおりとされています。
<<引用ここから>>
①クラスI:その製品の使用等が、重篤な健康被害または死亡の原因となり得る状況をいう。
②クラスII:その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況又はその製品の使用等による重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。
③クラスIII:その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。
<<引用 ここまで>>
ですので、クラスIとクラスIIについての回収情報は重要になるわけです。
――なるほど、クリニックでは一早く情報を知りたいですね。
不良医薬品などの使用による患者さんへの健康被害を未然に防ぐ観点からもぜひ『PMDAメディナビ』にご登録いただけたらと思います。
『PMDAメディナビ』の特徴と機能
『PMDAメディナビ』は、医薬品・医療機器などの安全性に関する特に重要な情報が発せられた際に、タイムリーにその情報を配信するメールサービスです。このサービスに登録したクリニック・医師は最新の重要な安全性情報を直ちに入手でき、保健衛生上の危害の発生を予防するのに役立つことが期待されます。
メールで通知される主な情報は以下のようなものです。
『PMDA』は、『PMDAメディナビ』の追加機能で「マイ医薬品集作成サービス」というサービスも行っています。クリニックで使用している医薬品を登録しておくことで、その医薬品について情報を一覧で見ることができたり、更新情報をメールで受け取れたりするものです。
↑「マイ医薬品集作成サービス」の画面サンプルです。
『PMDAメディナビ』に登録するメリット
『PMDAメディナビ』を使用するメリットについて、『PMDAメディナビ』の登録者にアンケートを行ったところ、
参照・引用元:『PMDA』公式サイト「PMDAメディナビの利活用状況等に関する調査結果概要」(2021年6月)
が上位に挙がっています。
やはり公的機関である『PMDA』が配信する情報なので信頼できる、また即日に情報が得られる点が高く評価されているようです。
『PMDAメディナビ』の導入
『PMDAメディナビ』を利用するにはアカウントの登録が必要です。クリニックにインターネット環境とインターネットに接続できるパソコンがあれば登録できます。スマートフォンからの登録も可能です。
登録はこちらのURLから可能です。
『PMDAメディナビ』の利用料金
『PMDAメディナビ』の登録・利用は無料です。追加サービスである「マイ医薬品集作成サービス」も登録・利用は無料となっています。
『PMDAメディナビ』に登録していると、医薬品、医療機器に何か問題、不具合があった場合にすぐ情報を入手することが可能です。不具合や問題のある医薬品、医療機器をそのまま利用するというトラブルを避けるためにも、『PMDAメディナビ』に登録しタイムリーに情報を入手してはいかがでしょうか。
取材協力:『独立行政法人 医薬品医療機器総合機構』(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:略称「PMDA」)
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年6月時点の情報を元に作成しています。