健康診断で「医師受診が必要(要受診)」という結果が出た患者さんには、「受診勧奨」が行われます。しかし、受診勧奨を行っても、なかなか医療機関に足を運ばない患者さんが多くいるのが現状です。そこで、京都大学大学院医学研究科の中山健夫教授らは、健診で医師受診が必要という結果が出た人に、健診後に「受診勧奨をした場合」に、どれだけの人が受診するのかの研究を実施しました。今回は、患者さんの行動分析にもつながる本研究をご紹介します。
受診勧奨に従って医師を受診するのは20~30%ほど
生活習慣病は、症状が進むと心血管疾患、脳疾患、腎疾患をはじめとする重大な病気を引き起こす可能性があります。そのため、日本では特定健康診査などの健康診断を行い、生活習慣病として高血圧、高血糖、脂質異常症の予防と早期発見を行っています。健康診断で、これらの数値の一定の基準値からはずれていたり、症状の兆候が見られた場合には、医療機関でさらに詳しい検査を受けるよう「受診勧奨」が行われます。しかし、実際に健診時の受診勧奨に従い、病院を訪れるのは20~30%ほどにすぎません。
健康保険組合では、受診率を高めるため、高血圧、高血糖、脂質異常症で受診勧奨の結果が出た人に、健診後に改めて通知をしています。しかし、「受診の再勧奨」の「効果」は不明でした。京都大学大学院医学研究科の中山健夫教授らの研究チームは、高血圧、高血糖、または脂質異常症の可能性があると受診勧奨された受診者を対象に、「受診の再勧奨」の「効果」を調査しました。
6カ月後のリマインド送信で受診者が微増
本研究では、「再勧奨」を行っている8つの健康保険組合の「2014年から2017年までのデータ」を取得。これらのデータのうち、「再勧奨の送付タイミングを健診受診から6カ月後」と定めている健康保険組合において、「再勧奨」の結果を分析しました。
解析は高血圧、高血糖、脂質異常症の3つに分けて行われました。まず、「血圧高値(高血圧)」についてです。「要受診」と判定された人のうち、健診から12カ月後以内に医療機関を受診した人は最も低い年で25.8%。最も高い年で31.2%でした。
次に、「健診から12カ月後以内に医療機関を受診した人」の数を100%とし、月ごとの「受診者数」を調査。その結果、健診を受けたのと同じ月に受診をした人は20.9%、翌月は27.7%と最も高く、以降は11.1% ⇒ 3.8% ⇒ 4.3% ⇒ 3.4%と減少。しかし、再勧奨の通知を送った6カ月目には、再び11.6%と上昇していることが分かりました。
これは「高血糖」と「脂質異常症」で受診勧奨の判定を受けた人も同様で、再勧奨が行われた「健康診断後6カ月目」で、病院に行く人がその前月、前々月に比べて増加していることが判明しました。
より高い効果を得るにはさらなる改善が必要
研究の結果では、健診後に医療機関の受診を再勧奨すると、多くはありませんが受診する人が増えることが分かりました。
健診時に要受診と判定され、それから12カ月以内に医療機関を受診した人の数は、「高血糖」の場合は最大73.3%(2017年度)と高い数字です。しかし、「血圧高値(高血圧)」は先述のように25.8~31.2%、「脂質異常症」も16.8~22.6%と低い数字です。それだけ多くの人が、健診で受診勧奨と判定されても受診せず、その後、再度勧奨の通知を受けても医療機関に足を運んでいないわけです。
本研究を主導した中山健夫教授は、「再勧奨の通知は、必要な方々が医療機関を受診するのに一定の効果があると言えそうです。今後、他の方法でもアプローチも考え、要する費用や労力とも勘案して、より良い方法を検討していくことが必要でしょう」としています。
健康診断で再受診を通知された人の7割ほどが、受診勧奨に応じていません。しかし、この7割が受診するよう行動すれば、生活習慣病を防げますし、クリニックに足を運ぶ人の数も増えるはず。健康保険組合と医療機関がうまく連携し、再受診の通知を行うことができれば、受診勧奨に応じる人の数は増える可能性があるでしょう。院内でも再受診することの大切さを掲示するなど、周知活動を行うことも効果的かもしれません。
特徴
システム提携
提供形態
対応端末
種別
診療科目
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システム提携
種別
診療科目
この記事は、2021年8月時点の情報を元に作成しています。