一般的に、高収入と言われる医師ではありますが、例え常勤医師でも、更なる収入を得るために当直のアルバイトをする医師もいます。当直のアルバイトは大変だろう思われがちではありますが、医療機関によって忙しさに差はあるでしょう。大学病院などの三次救急などの場合であれば忙しいかもしれませんが、二次救急の医療機関では決して忙しいわけではありません。本記事では、わたし自身が二次救急で実際にあったことを医療従事者に向けてご紹介させて頂きたいと思います。内容によっては共感して頂けるものもあるのではないでしょうか。
そもそも当直医は何をするのか
当直医は、病院や診療所など、通常の時間外、主に夜間や休日に勤務する医師を指します。
当直する医師は、通常の日勤業務をおこない、そのまま当直を行なう場合が多く、夜間の救急外来の対応や病棟で状態が悪くなった患者さんの対応にあたります。そして、翌日も日勤業務をおこなうため、体力的にも負担は大きいと言えます。
常勤医師の当直とバイトでの当直は別物
当直医は、当直明けであってもそのまま勤務をおこない、場合によっては手術などもおこなうため過酷といえます。そのため、常勤医はできれば当直は避けたいと考えています。病院によっては、その医療機関の医師だけでは当直をまわすことが難しく、外部から当直を募集することも少なくありません。そして、常勤医とバイトでは手当も変わってきます。例えば、常勤医の当直手当が3万円だったとしたら当直のバイトは10万円前後で約3~4倍に手当をもらっていることになります。休日になると日直をおこない、夜間当直もおこなうため相当な金額をもらっていることが予想できます。
当直バイトの実際
ここでは、実際にわたし自身が関わった当直医についてお話ししていきます。医師の中でも熱心な医師もいれば、そうでない医師もいます。そのなかでも印象的なのが以下です。
- 幅広い疾患への対応が難しい美容整形医だった
- 全く仕事をしない
- 患者対応をお願いしても激怒する
これらのいずれかは、医療従事者であれば経験をしたことがあるのではないでしょうか。
当直に来た医師が美容整形であった
当直医を希望する以上、お金目当てで来る人は決して少なくありません。しかし、二次救急で行なっている以上、それなりの経験値は医師にも求められます。以前、わたし自身が夜勤で、救急要請が入り入院するかもしれないと連絡があったことがありました。しかし、その日の当直医は美容整形の医師。当時働いていた病院では救急要請があった場合、絶対に断らないというのが病院の方針ではあったため、受け入れを許可しました。しかし、救急車で来た患者は、蘇生が必要な患者でした。ですが、その医師は美容整形の医師であり、そういった患者と関わったことがないため、どのように処置をして良いかわからず、結局はたまたま病院にいた常勤医師を呼び出して蘇生をおこないました。
そもそも美容整形の医師は患者が来ないと思っていました。二次救急をおこなってはいましたが、必ずしも患者さん来るとは限りません。しかし、実際にその医師は運が悪く、蘇生が必要な患者が来てしまったのです。それに対し、さすがに常勤医師も激怒しました。いくら当直医がおらず募集をかけていたとしても、何もできない医師を雇った病院側にも問題はあります。結局その美容整形の医師は当直医をおりて頂く形にはなりましたが、その医師は納得していなかったと話は聞いています。当時その病院では、一回の当直で看護師と同じぐらいの収入を得られると聞いたことがあります。そのため、飛びついて来たのでしょう。
すぐにでも医師がほしい病院側とお金が欲しい医師でお互いに話が進んだのかもしれませんが、対応ができない医師が来ては夜勤をやっているスタッフも困ってしまいます。結局は1回の当直でその美容整形の医師はいなくなりました。
当直医で来たのに全く仕事をしない医師
これは医療従事者であれば経験をしたことがあるのではないでしょうか。救急外来で来ても断る、病棟患者の状態が悪くなっても、「主治医に診てもらって」と言われることも多々あります。二次救急であるため、夜間患者さんも来ます。中には、かかりつけである患者さんも来ますが、そういった患者さんさえも断ってしまうのです。病院は「救急できた患者は断るな」という方針でしたが自分の判断で断っていたため、病院としても問題となり、その当直医は辞めさせられていました。
その当直医は何をしていたか
その当直医は自分の病院で日勤業を行なった後、当直をしに来ていました。当直医をおこなったとしても、翌日には自分が働いている病院で日勤業務をおこなわなくてはなりません。そのため、夜間自分がゆっくり休息できるように、夜間の患者をすべて断っていたのです。
また、ゲームをおこなっていたという話も聞いていました。その医師も寝て収入が得られと思っていたのかもしれませんが、病院側もそれを見過ごすわけにはいきません。
患者の対応をお願いしても激怒する医師
当直で来る医師は、救急外来を診ていれば良いということではありません。時には、病棟の患者さんも何かあれば診察に当たらなくてはなりません。しかし、実際に患者さんの容体が悪くなり電話すると「主治医に呼んで対応してもらって下さい」と言われることも少なくないのです。中には診察を依頼すると「電話かけてくるな」「主治医に電話しろ」「俺の仕事じゃない」と言ってくる医師もいます。仕方なく主治医に電話しますが、主治医は主治医で「当直の先生に診てもらって」と電話を切られてしまいます。そのことをまた、当直の医師に伝えると、「ふざけるな。何で主治医が来ないんだ」と恫喝する医師もいます。結局、一度は病棟にあがって来ますが、その後も看護師にあたり、対して診察もせず去っていくのです。こんなことが毎回起こっては看護師もたまったものではありません。主治医もこの当直医の対応に腹が立ち、その日を最後に来なくなりました。
中には熱心な医師もいる
これだけ聞くと当直医の印象は最悪と思われてしまうかもしれませんが、中には熱心な医師がいることも事実です。
- 何かあればすぐに駆けつけてくれる医師
- 急変が起きた場合でも対応して家族へ説明してくれる医師
- 夜間回診をしてくれる医師
- トラブルがあれば対処してくれる医師
こういった医師も実際にいたことは事実です。
何かあれば駆けつけてくれる医師
看護師は、夜勤をやっていると今日来ている外部の当直医がどんな人物がわかりません。そのため、全く患者さんのことがわからない医師へ、現在の状況と今までの経過を説明しなくてはなりません。看護師からしても、普段全く関わりがない医師であるため、また電話したことで怒られるのではないかと不安がよぎることがあります。しかし、中には電話をするとすぐに駆けつけてくれる医師もいます。
看護師も当直医には説明をしますが、カルテや実際に患者さんの状態を把握し検査や治療に当たっていく医師もいます。時には、当直医自ら主治医に連絡して治療内容やおおなった処置を相談したり報告したりしてくれることもあります。こういった医師であれば、夜勤看護師は安心して業務できます。
急変が起きた場合でも対応して家族へ説明してくれる医師
夜勤中に急変が起きた場合は一刻を争うため、主治医に連絡をして待っている暇などありません。即、当直医対応となります。しかし、当直医はあくまでも当直医。主治医の治療を妨げるわけにはいけません。そのため、当直医の中には主治医に連絡し治療内容や方針を確認した上で処置にあたる場合もあります。
また急変時は、ご家族へ連絡し状況を説明する場合が多くあります。中には「病状がよくわからないから、主治医に説明してもらって」と言われる医師もいますが、しっかりと説明をおこなってくれる当直医もいます。急変が起きたときはご家族も心配で仕方がありません。家族から「どんな状況なんですか?」と尋ねられ、看護師から状態は説明することができても、病状までは説明することができないため、医師からの説明が最も重要となります。主治医との連携、適切な処置、家族への説明など、当直医でも熱心に対応にあたってくれる医師は安心して見ていることができます。
夜間回診をしてくる医師
基本、当直の医師はどんなに暇であろうが、何かない限り当直室から出てくることはありません。とにかく身体を休めているというイメージの方が強いです。ですが、以前1人だけ、何度か回診にまわっている医師がいました。私も、とても珍しいことであったため、「何かあったのかな」と思っていましたが、病棟をまわっては異常な患者がいないか声をかけてくれたり、カルテを見たりしていました。病棟でも、相談に乗ってほしい患者さんがいれば気兼ねなく相談を受けていたため、夜勤をやっていても安心して業務をおこなえていたことを覚えています。
トラブルがあれば対処してくれる医師
夜間はスタッフの人数も少なくなり手薄になります。そのため、目の届きにくいところで患者さんが「転倒した」「重要なルートを引き抜いた」「暴れている」といったトラブルが発生することも少なくありません。こういったときは、主治医に連絡することもありますが、当直医に連絡し指示をもらうこともあります。中には、看護師だけではどうしようもできない処置などもあります。当直医によっては「朝まで様子見て」と言われる医師もいますが、ちょっとした処置であっても対処してくれる医師がいると大変助かることも多々あるのです。
外部の当直医は小遣い稼ぎ
お小遣い稼ぎのために、当直を希望する医師は珍しいことではありません。しかし、残念であるのが、当直医というバイトで高収入を得ながら、患者さんの対応にあたらない医師がいるということです。当直医は、患者を見なくても当直をすれば収入が入ります。ようは寝ていても収入が入るのです。患者さんを診る診ないは、結局医師が決めることではあります。
それによって苦しむ患者さんやその家族がいます。どんなに日勤業務で疲れていたとしても、当直を希望して高収入を得ている以上、医師としてしっかり仕事はしてほしいものです。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2021年8月時点の情報を元に作成しています。
執筆 男性看護師ライター | ベル
看護師歴14年目。救急、ICU、外科、内科を経験トラブルも多い看護の世界でいろいろいあってもこの仕事が好きな男性看護師。 現在、管理職として働きながらブログなどでも経験を活かしたノウハウを執筆しています。
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