潰れそうなクリニックの特徴とは?

開業医にとって「開業」はゴールではなくスタート。スタート地点に立ってからは、意図しないところで離脱せざるを得なくなることのないよう、常に努力を続けなければなりません。

「意図しない離脱」とはすなわち倒産のこと。では、倒産しないためにはどうすればいいのでしょうか? 詳しくみていきましょう。

目次
  1. 医療機関の倒産動向
    1. 最近の医療機関の倒産件数
    2. 日本医師会の倒産対策
  2. クリニックが潰れる5つの原因
    1. 立地、交通の便が悪い
    2. 宣伝力不足
    3. 資金繰りがうまくない
    4. スタッフとのコミュニケーション不足
    5. ドクターの知識またはスキルが不足している
  3. 「潰れそうなクリニック」にならないために
    1. 事業計画をきちんと考える
    2. 開業地についての調査を徹底する
    3. 広報活動に力を入れる
    4. スタッフの採用・育成
    5. 慢心しない
  4. クリニック経営の不安を軽減させるために

医療機関の倒産動向

まずは、クリニックや病院などの医療機関の倒産動向を確認しましょう。

最近の医療機関の倒産件数

帝国データバンクによると、2019年の医療機関(病院、診療所、歯科医院)の倒産件数のうち、負債額1,000万円以上で法的整理が必要となったものは45件。うち8件が病院で、22件が診療所、15件が歯科医院です。

これは、2009年の52件、2007年の48件に次ぐ過去3番目の件数。負債総額は223億7,100万円で、うち75億9,400万円が診療所の負債。倒産態様別でみると、45件のうち38件が「倒産」、残り7件が「民事再生法」となっています。

また、都道府県別にみると、東京都の6件が最多で、神奈川県は5件、大阪府、北海道、京都府、兵庫県、福岡県がいずれも3件です。

日本医師会の倒産対策

日本医師会は、かねてより「医療法人制度改革」によって都道府県へ決算書類の届出を義務化するなどの「視える化対策」をとることで、倒産予防に力をいれてきていました。

しかし、医療法人制度改革が行われたのが2006(平成18)年であることを考えると、2019年度の件数がワースト3であったことを重く受け止め、さらなる改善策を見出していくことが必要といえるでしょう。

クリニックが潰れる5つの原因

続いては、クリニックが潰れる主な原因をみていきましょう。

立地、交通の便が悪い

開業前に十分な診療圏調査を行っていない場合、思うように集客が見込めず、倒産する可能性が高くなります。駅やバス停からの地の利なども考慮したうえで想定患者さん数を設定したうえで、立地を選定しましょう。

また、基本的に自家用車での来院が想定される場所に開業する場合、進行方向からスムーズに車入れできなければ来院率が下がります。つまり、反対車線にあるクリニック敷地内に入るのが難しい立地であれば、運転初心者などは敬遠してしまうということです。

そのほか、駅前の立地であっても、ビルの2階以上で人目につきにくければ患者さん数が伸びない傾向にあるようです。その場合は広告宣伝に力を入れるなど、なにかしらの工夫が必要です。

宣伝力不足

どんなにいい医療を提供するクリニックであっても、開業したことを知ってもらえなければ、患者さんが来院することはありません。

ホームページを作成してSEO・MEO対策に力を入れることはもちろん、エリア住民にチラシを配ったりポスティングしたりと、「クリニックの存在を知ってもらう努力」が必要です。

また、SNSに力を入れることも大切。エリア名や得意とする治療のハッシュタグなどをつけたり、花粉症やインフルエンザなどの季節性疾患に関して役立つ情報を発信したりと、注目してもらうためにできることはたくさんあります。

資金繰りがうまくない

数字について考えるのが苦手なドクターが陥りやすいのがこのパターン。十分な開業資金を用意したはずなのに、いつの間にか火の車になっていた……なんてこともありえます。

基本中の基本ですが、浪費しないことはとても大切。

銀行の融資が通って大金を手にすると、お金があると錯覚して高い機材につぎ込んだりしがちですが、最初のうちは最低限の機材で開業するのも一手。

また、耐久性なども考慮しつつ、ローンと購入のどちらがお得かもシミュレーションしてみてくださいね。どうしてもお金の管理が苦手なら、社労士などと顧問契約を結んでアドバイスをもらうといいでしょう。

スタッフとのコミュニケーション不足

コミュニケーション不足によってドクターとスタッフが一致団結できていないと、人間関係がギスギスしてしまい、早期退職者も増えてしまうでしょう。そうなったとき、次の人材がすぐに見つかるとは限りません。

一定の採用コストが必要となるだけでなく、スタッフ教育をまた一からやるとなると時間的にも無駄ばかり生じてしまいます。

ドクターの知識またはスキルが不足している

知識またはスキルの不足も、クリニックが潰れる大きな原因となり得ます。「スキル」には、医療のスキルのほかに、コミュニケーションスキルも含みます。

いくら正確な診断を下していたとしても、患者さんの気持ちをないがしろにするような態度を取れば、「あの先生は感じが悪い」「二度と行きたくない」と思われてしまうでしょう。

場合によっては、口コミサイトなどに悪評を書き込まれるかもしれません。そうなると、「あのクリニックに行くのはやめておこう」と、ますます患者さんの足が遠のきます。

「潰れそうなクリニック」にならないために

続いては、「潰れそうなクリニック」にならないために実践べきことを説明します。

事業計画をきちんと考える

開業前に事業計画を立てるのはもちろん、開業後、計画通りに進められているかを確認して、必要があれば軌道修正していきましょう。

順調に進んでいる場合も、よりよくするためにはどうすればいいかを考え続ければ、高い目標を達成しやすくなります。

開業地についての調査を徹底する

失敗しにくい立地を考えることも、倒産を防ぐための重要な工程です。たとえば小児科として開業するなら、ファミリー層が多く住むエリアを選ぶことが必須です。

精神科として開業するなら、その特性上、駅前の目立ちすぎる場所を避けることも大切。患者さんが「精神科にお世話になっていることを周囲に知られたくない」と来院を避けがちな診療科だからです。

ターゲットとなる患者さんにとってベストな場所を考えることがとても大切なのです。

広報活動に力を入れる

クリニックの診療方針や得意とする治療をより多くの人に知ってもらうために、広報活動も大切です。

ホームページを作ったからと安心していてはいけません。SEO対策やMEO対策もとっておかなければ、検索結果において、あっというまに競合に追い抜かれてしまいます。「そんなこと言われてもITに疎くてわからない」ということなら、専門家に頼むのがおすすめ。

また、口コミ対策に関しては、来院した患者さんに会計の際に口コミをお願いするといいでしょう。Web上以外での広報活動として、診療圏にチラシを配ることなども視野に入れていきたいところです。

スタッフの採用・育成

クリニックで働くスタッフには、診療方針を理解してもらうこと、二人三脚で歩んでもらうことが不可欠。

全員で同じ方向を向いて一致団結できていなければ、患者さんにいい医療を提供できなくなるでしょう。そのため、採用時に相手をしっかりと見極め、スタッフ教育に注力する必要があります。

ここを疎かにした結果、医療や患者さん対応のクオリティは下がってしまうでしょう。患者さん評価も低くなって、結果的に倒産への道を進まないようにしたいものですね。

慢心しない

クリニックの開業に限らず、何に関しても、「初心忘るべからず」です。

開業したことで成功したと錯覚して、周囲への感謝の気持ちを疎かにしたり、研鑽を諦めたりすると、思わぬところで足を取られるかもしれません。

志の高いドクターは、開業医の集まりに参加するなど、常に成長し続けているもの。時には周りを見渡して見ると、自らを省みるきっかけになるかもしれません。

クリニック経営の不安を軽減させるために

開業しても、いつ自分も倒産へと追いやられるかと思うと不安でしかたがないというドクターは多いはず。実際、経営がうまく軌道に乗る可能性は誰にとっても100%ではありません。

しかし、倒産のリスクを少しでも減らすことはできます。そのためにも、「今すべきことを考え、それを実践する姿勢を保ち続ける」ことが大切です。

今日できることを今日やる習慣をつけておけば、失敗もしにくいですし、万が一失敗しそうになった場合も軌道修正がききやすいもの。

本記事や周囲の先輩ドクターたちのアドバイスを参考に、今できることをきちんとやることを心がけてくださいね。

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執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

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