クリニックで働くスタッフの離職率は、他業界で働いている人と比べて高いのでしょうか? 低いのでしょうか?
また、いずれにしろ、現状より離職率を下げて、スタッフに定着してもらうためにはどうすればいいのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
クリニックスタッフの離職率の実態は?
まずは、クリニックで働いているスタッフがどのくらいの確率で離職しているのかを確認しましょう。
公益社団法人『日本看護協会』が公表している「2023年病院看護実態調査報告書」によると、同調査に参加した医療機関における2022年度の正規雇用看護職員の離職率は11.8%、新卒採用者の離職率は10.2%、既卒採用者の離職率は16.6%という結果が出ています。
また、正規雇用看護職員の離職率が高い都道府県は、東京都(15.5%)、大阪府(14.3%)、続く神奈川県と兵庫県がいずれも13.7%と、比較的人口の多い都道府県が上位にランクインしています。
一方、新卒採用者の離職率が高い都道府県は、高知県(25.5%)、香川県(16.9%)、熊本県(13.9%)、既卒採用者の離職率が高い都道府県は、長崎県(22.9%)、愛媛県(21.0%)、熊本県(20.7%)という結果ですが、
東京都、大阪府、神奈川県、兵庫県ともに、新卒採用者の離職率ランキングでも既卒採用者の離職率ランキングでも上位にランクインしていることに変わりはないので、地域によっても差がありそうです。
参照:公益社団法人『日本看護協会』「2023年病院看護実態調査報告書」
他産業の離職率と比べてクリニックスタッフの離職率は高い?低い?
続いては、クリニックスタッフの離職率は、他産業の職員の離職率と比べて高いのか低いのかをみていきます。厚生労働省が公表している「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、令和4(2022)年の産業別離職率は以下の通りです。
(産業計) | 15.0% | |
第1位 | 宿泊業、飲食サービス業 | 26.8% |
第2位 | サービス業(他に分類されないもの) | 19.4% |
第3位 | 生活関連サービス業、娯楽業 | 18.7% |
第4位 | 医療、福祉 | 15.3% |
第5位 | 教育、学習支援業 | 15.2% |
第6位 | 卸売業、小売業 | 14.6% |
第7位 | 不動産業、物品賃貸業 | 13.8% |
上の表の通り、「医療、福祉」の産業全体でみると、同年に実施された「2023年病院看護実態調査報告書」の正規雇用看護職員の離職率より高く、また、産業計よりもやや高い数字となっているものの、他産業と比べて離職率は大差ないことがわかります。
ただし、先に解説した新卒採用者の離職率、既卒採用者の離職率は、産業別ランキング1位に迫るほどの数字であることから、地域などの条件によってはかなり離職率が高いと判断できます。
クリニックスタッフが離職する理由とは?
続いては、クリニックのスタッフが離職する場合の理由として考えられることをピックアップしていきます。
慢性的人手不足
まず考えられる理由は、他業界と比べて復職しやすいことです。なぜかというと、医療業界は慢性的に人手が足りていないため、退職してもすぐに次の転職先が見つかりやすいのが実情です。
そのため、職場に不満があると、すぐに退職して次の働き先を探そうとする人が一定数います。
出産・子育て時などに休職するために医療資格を取った
「出産・子育ての際にはきっちり休めるよう、産休後に復帰しやすい資格をとっておこう」というふうに、最初から、タイミングが訪れたら休職することを目的に看護師資格や医療事務の資格をとる人もいます。
労働者一人ひとりの負担が大きい
慢性的人手不足の業界で、かつ、それを利用して気軽に転職もしくは休職する人も多いとなると、働いている人の負担は大きくなる一方です。
人間関係
一人ひとりの業務量が多くなると、お互いに助け合いの精神を忘れてしまうので、院内がギスギスした雰囲気になることも。
そうなると、働いているスタッフは、「お互いを思いやれない環境で働き続けるのはもうイヤだ」と職場を離れてしまう可能性が高くなります。
医療業界のIT化が十分に進んでいない
少子高齢化に伴う医療従事者の負担を軽減するため、IT化を進めることやAIの導入を進めることは、医療業界にとって喫緊の課題です。
たとえば、紙カルテを電子カルテに変えるだけで、特定の患者のカルテを探す手間、患者を他院に紹介する手間を削減することができますが、旧態依然としたやりかたを貫いているクリニックは意外に多いのが実情です。
クリニックスタッフの離職を防ぐ方法は?
続いては、クリニックスタッフの離職を防ぐ方法を考えていきましょう。
働く条件、労働環境を見直す
医療業界が全体的に転職しやすい状況である以上、「求職者から選ばれるための努力」は絶対に欠かせないものであることは間違いありません。特に、給与や賞与、有給休暇のとりやすさなどは、求職者が厳しい目でチェックしているポイントです。
とはいえ、なんでもかんでも競合より条件をよくするのがいいかというと、そういうわけではありません。
単純に、「競合より給与を高く」ということなら数字を上げればいいだけの話になりますが、根本的なことを見直していないとなると、最初のうちは求職者から選ばれたとしても、長く働き続けてもらうことは難しくなります。
つまり、逆を言うと、「長く働き続けたい」と思ってもらえるような労働条件や福利厚生を考えていくことが大事だということになります。
育児休暇や多様な働き方を推奨する
前述の通り、出産・子育ての際に休職することを相手が見付かる前から心に決めている人は意外に多いです。
それに加えて昨今は、多くの人が、「自分にとってよりよい働き方」を追求する風潮にあるので、育児休暇や多様な働き方に対して肯定的な職場であるほうが、求職者から選ばれやすいことは間違いありません。ちなみに、「育児休暇」は女性のためだけのものではありません。
男性でも育児休暇を取得できる職場は年々増加傾向にあるので、そのような制度を率先して導入していくことで、結果的に離職率が減って、採用にかかる費用の削減も叶えられる可能性が高いといえます。
IT化、AI導入を進める
人手が足りておらず、みんなが忙しいと、院内がギスギスした雰囲気になります。そうなると、すでに人が足りないというのに、今いる人も「辞めたい」と考えるようになり、さらに人が少なくなってしまいます。
それを防ぐためには、みんなの心に余裕を持たせることが不可欠です。そのためには何が必要かというと、「仕事を効率化させる方法を考えること」です。電子カルテの導入がまだなら電子カルテの導入を考えること、常に電話対応に追われているなら電話応答を自動化することなど、できることはたくさんあります。
また、自動予約システムの導入やオンライン問診システムの導入も、業務の効率化アップに大いに役立ちます。
予約や問診に関する業務は、患者一人分に換算するとたいしたことないものに思われるかもしれませんが、全員分に要する時間となると、チリも積もればなんとやらでかなりの時間が奪われるので、IT化を進めることによって削減される業務量はかなりのものとなります。
これまでのやりかたと変えるときは
労働環境を見直すにしてもAI導入を進めるにしても、いつもとやりかたを変えて慣れていない間は、「余計な手間が増えてかえって大変になった」と感じる可能性が非常に高いです。
たとえば、紙カルテから電子カルテに変えたときのことを思い出したり、もしくはまだ変えていないなら、想像してみたりするとわかりやすいと思いますが、いつも通りに作業を進められない間はストレスを感じるものです。
しかし、アンドロイドからスマホに変えた当初はうまく使いこなせなかったとしても、すぐに慣れてしまうのと同様、慣れてしまったら「早く変えればよかった」と思うことは間違いありません。
すべてのシステムを同じタイミングで変えるのが怖いなら、一つひとつ順番に変えていくのでも構わないので、持続可能なクリニックになることを目標に、今のうちに少しずつ変わっていってはいかが?
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2024年6月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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