クリニックの人件費にはどのくらいかければいいのでしょうか? もちろん、病院の規模などによっても異なるので、一概にいくらとは言えませんが、自院が人件費にかけているコストが妥当であるかどうかは知りたいですよね。そこで今回は、クリニックの人件費について考察していきます。
人件費設定の基本
クリニックの人件費を設定するためには、まずは開業するエリアの相場を調べることが不可欠です。そのエリアのクリニックがどのくらいの給与でどんな待遇で求人を出しているかを探り、少なくとも平均的な待遇は、条件として提示したいところ。なぜかというと、そうしなければよい人材を確保することは難しいからです。
平均的な待遇を把握したら、次は、自院の収益などを考慮しながらさらに具体的な数値を出していきます。考慮すべき項目のひとつめは、「ひとりあたりの医業収益高」です。職種に関係なく、スタッフの総数に対する月あたりの対応患者数を割り出し、1患者当たりの平均収益と比較します。
また、既に運転中のクリニックであれば、「平均給与」に「平均従業員数」を掛けて12倍した「年間総給与費」、経営利益を従業員数で割った「ひとりあたりの限界利益」も算出することで、根拠ある人件費を設定することができますが、開業時であればすべての数値が見込み値となるため、まずは総医業収益の20~25%を目安に人件費を設定しましょう。
人件費を総医業収益の20%以下に抑えるのはアリ?
結論から言うと、人件費を削減しすぎることはよいこととはいえません。給与が低ければ、スタッフのやる気は間違いなく半減するでしょう。「一生懸命働いてもどうせ給料が低いんだから意味がない」。その気持ちが勤務中の態度に現れていたら、患者がクリニックに対していい印象を抱くことはないはず。また、そもそも優秀なスタッフは、水準より低い給与しか支払われないクリニックに勤めようとも思いません。クリニックの評判を高めてくれるようなよい人材を雇いたいならなおさらのこと、水準より高い給与を用意すべきです。
人件費を抑えることはできないのか?
給与の水準を落とすことはよくないと理解したうえで、どうにかして人件費を抑える方法はないだろうか? と考えているクリニックもあるかもしれません。どうしても人件費を抑えなければならないのなら、給与を一律で下げるのではなく、評価制度を確立させるといいでしょう。クリニックに貢献した人は昇給とする一方、就業態度が思わしくない人は現状維持または減給ということにすれば、人件費を抑えながらもスタッフのやる気を引き出せる可能性があります。ただし、あまりにも露骨に減給すると反発が起きやすいので、よほどのことがない限り減給は避けることをおすすめします。
また、ポジションごとに人件費を見直すこともひとつの手です。たとえば、勤務医の給与が固定給であれば経営戦略は立てやすいですが、たくさん働いてもあまり働かなくても同じ金額となるとモチベーションを保ちにくいので、歩合制を導入するのもありです。有資格者である看護師などは、自分のスキルに見合った給与水準を意識していますが、適宜パートも配置することで、人件費を抑えることは可能です。
人件費の調整がうまくいかなかった場合はどうすればいい?
人件費の目安や人件費を抑えるコツを知ったうえで人材を探してみたものの、どうにも条件と合う人が見つからないという場合はあるでしょう。そんなときは、専門家に相談するのも一手。条件を緩和するならどこを緩和すべきなのか、パートでもいい人材を見つけられるものなのか、などの相談に乗ってもらいつつ、クリニックにとってベストな人材を確保することができたらいいですね。
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この記事は、2021年10月時点の情報を元に作成しています。