医師と患者がそれぞれの場所にいながら診療可能な「オンライン診療」の注目度が高まっています。
普及率はまだまだ低いものの、少子高齢化が進み、病院に通うのが大変な高齢者が増えていることを考えると、今後ますますニーズが高まることが予想されます。
では、オンライン診療を導入するメリット・デメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
オンライン診療の目的は?
まずは、オンライン診療の目的をみていきます。総務省が公表している「遠隔医療モデル参考書 ―オンライン診療版―」によると、オンライン診療の目的は以下の3つです。
- 患者の日常生活の情報も得ることによって、医療の質のさらなる向上に結び付けること
- 医療を必要とする患者に対して、医療に対するアクセシビリティを確保して、よりよい医療を得られる機会を増やすこと
- 患者が治療に能動的に参画することによって、治療の効果を最大化すること
また、外来診療や訪問診療などの、対面による診療行為と組み合わせることによって、3つの目的をさらに果たしやすくなると考えられています。
参照:総務省「遠隔医療モデル参考書 ―オンライン診療版―」13枚目(p.10)一部抜粋
オンライン診療のメリットは?
続いてはオンライン診療のメリットをみていきましょう。
来院が難しい人にも医療を提供できる
足腰が弱く歩くことが難しい高齢者をはじめ、自力での来院が難しい人も顔を見ながら診療できます。
また、同様の理由でこれまで家族の送り迎えが必要だった患者は、家族の都合がつかない時間でも診療を受けられるようになることが考えられます。
患者の移住地を問わない
距離的な問題から受診が難しかった人にも、医療を提供することができるようになります。
もともと自院の患者だったものの、転勤によって遠方に引っ越した場合など、これまで通りのドクターに診療してもらえるなら患者も安心できるでしょう。
体調が悪い患者が来院のために着替える必要がない
発熱や腹痛の症状がありパジャマで横になっている患者も、クリニックに行くために家から出ないといけないとなると、最低限、ワンマイルウェアに着替えるでしょう。
しかし、具合が悪く立ち上がるのも辛い状態なのですから、着替えなければならないとなるとかなりの負担であるのは間違いありません。その負担を削減してあげられるのは大きな魅力といえるでしょう。
薬の郵送もできる
オンライン診療の結果、薬を処方することが望ましい患者に対して、薬を郵送することができます。
そのため、「処方箋をもらうためだけに医療機関を受診しないといけないのは手間だ」と考えている患者からもニーズが高いといえるでしょう。
患者の待ち時間が不要となる
対面診療の場合、予約システム導入の有無に関わらず、患者の待ち時間や会計時間が多少なりとも発生するのが一般的。しかし、オンライン診療であれば基本的に待ち時間と会計時間のいずれも不要になります。
会計はクレジットカード決済が基本ですが、なかにはPaypayでのクレジット決済や、請求書発行後払いを選んでいるクリニックもあります。
患者満足度が向上する
待ち時間が削減されればその分、患者満足度の向上も期待できます。
患者のクリニックに対する不平不満の大半を占めているのは「待ち時間が長い」こと。受付から診療に呼ばれるまでの時間が長く、さらに診療後、会計に呼ばれるまでの時間が長ければ、患者のストレスは相当なものになるでしょう。
また、医療機関側としても、患者からイライラをぶつけられるのはストレスになるものです。
その点、オンライン診療ならお互いストレスフリーで、患者の満足度は大きく向上する可能性が高いでしょう。
感染対策になる
新型コロナウイルス感染はもちろん、インフルエンザの時期なども、院内での感染を防ぐためにオンライン診療が役立ちます。
オンライン診療のデメリットは?
続いては、オンライン診療を導入することによるデメリットについても見ていきましょう。
初期費用がかかる
利用するシステムによっては、初期費用として数十万円が必要になる場合があります。
ただし、システムによって備えている機能などに違いがあるため、自院のニーズによっては有料のものを選んだほうがいい場合もあります。
初期費用、月額費用ともに無料のシステムも存在するので、気軽にオンライン診療をはじめたいドクターはチェックしてみるのもいいかもしれません。
手数料が発生する
診察料に加えて、オンライン診療利用料の手数料が発生するため、患者によってはネガティブにとらえることもあるかもしれません。
パソコン操作に不慣れな場合は慣れるのに時間がかかる
電子カルテなどに関しても同様のことがいえますが、アナログな手法に慣れているドクターにとっては、新しいシステムの使い方をマスターしなければならないこと自体が煩わしく感じられるかもしれません。
また、患者がパソコンやタブレットを使い慣れていない場合も、トラブルが発生する場合があります。
よくあるトラブルは、画面は映るものの音声が聴こえないというもの。IT機器の相性などによっても起こりえるトラブルなので、この場合は画面を表示した状態で電話で通話するなどすると、表情を確認しながら診察することができます。
クレジットカード決済などに対応する必要がある
オンライン診療のためのシステムの多くは、クレジットカード決済を基本としています。
そのため、これまで現金払いにしか対応していなかったクリニックにとっては、新たな支払い方法にも対応していかなければならないことになります。
処置や検査ができない
患者が画面の向こう側にいる以上、患部に触れる処置や検査などは一切できません。
処置が不可欠な怪我をしている場合や、血液検査などの精密検査が必要と思われる場合などは、速やかに来院するよう患者に伝えることが大切です。
処方できない薬もある
基本的には、オンライン診療後に薬を郵送することも可能ですが、睡眠剤や抗不安薬等の向精神薬、免疫抑制剤など、副作用のリスクが高い薬は処方することができません。
こうした薬を処方することが多い医療機関であれば、オンライン診療の導入が本当に自院にとって有益かどうか考えてみたほうがいいかもしれませんね。
オンライン診療と対面診療の組み合わせや使い分けを考えるのもおすすめ
オンライン診療をあまり活用できそうにないクリニックであっても、夜間に症状が急変した患者からの問い合わせに応答できる体制を整えておけば、患者としても安心できるはず。
そうした場合に備えて、オンライン診療を行う方法だけでも知っておくに越したことはありませんし、場合によっては、オンライン診療と対面診療をいい塩梅で組み合わせることも有効になるでしょう。
いろんな方法が考えられますので、自院をかかりつけクリニックとしてくれている患者などにも意見を聞きつつ、今後どうしていくかを考えてみてもいいかもしれません。
特徴
対象規模
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特徴
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システム提携
診療科目
この記事は、2021年11月時点の情報を元に作成しています。