近い将来開業したいと考えている医師にとって気になることのひとつが、電子カルテ導入にあたっての準備でしょう。
電子カルテを導入したいなら、開業のどのくらい前から準備したらいい? という疑問を抱いている人もきっと多いはず。
そこで今回は、電子カルテ導入のベストな時期について解説していきます。
電子カルテ導入検討前に知っておきたいこと
電子カルテ導入準備について考える前に、まずは、電子カルテの"タイプ"や"電子カルテでできること"などの基本的なことについての知識を深めましょう。
「電子カルテ」と聞くと、"紙カルテがデジタル化したもの"と想像する人は多いでしょう。それも正解ですが、電子カルテ導入によって実現できることは他にもあります。
まず、電子カルテには、インターネット上のサーバーにデータを保管する「クラウド型」と、クリニック内で情報システムの設備を保有してデータを管理する「オンプレ型」がありますが、前者であれば、インターネットにつながる環境であればどこからでも操作できるため、在宅医療などにも活かすことができます。
また、レセコンと一体型になっている電子カルテであれば、受付から診療、会計までを一元管理できるというメリットもあります。
選定から本稼働までの一連の流れを経て落ち着いてきたら、準備期間中には見えてこなかった課題が見えてくることもあるでしょう。
たとえば、電子カルテの操作に費やす時間が導入当初と変わっておらず、患者を待たせがちということもあるかもしれません。その場合、よりスムーズな運用のために何ができるかを考え、自院で解決できないならメーカーに相談するのも一手。
患者から選ばれるクリニックで居続けるためにも、電子カルテの利便性を最大限活用していくことを考えたいものですね。ることが大切です。そこで続いては、電子カルテを導入するメリット、デメリットについて説明します。
電子カルテを導入するメリット
まずは、電子カルテを導入するメリットから説明します。
リアルタイムで最新情報を共有できる
診察室で医師が入力した情報を受付で確認することも、受け付けて入力した情報を医師が診察室で確認することも簡単。クラウドにデータを保管するクラウド型電子カルテであれば、院内だけでなく往診先からもリアルタイムで情報を確認できます。
紙の保管スペースが要らない
電子カルテは紙カルテと違って保管スペースが要りません。そのため、空いたスペースを有効に活用することができます。
カルテを探すのに時間がかからない
患者数が増えると、同姓同名の患者も出てくることもあり、紙カルテだと必要なカルテを探すのに時間がかかることがあります。その点、電子カルテの場合は検索で一発で探し出すことができます。
誰にでも読みやすい
手書きのカルテの場合、医師の文字にクセがあるとスタッフが判読を誤る場合があります。その点、電子カルテであれば読み間違いが起こることがまずありません。
ミスの防止になる
文字が読みやすいために読み間違いがないだけでなく、入力ミスをエラー表示によって教えてくれる機能などがあることから、入力ミスを防止できます。また、レセコンと連携する場合、レセプト作成のミスを防ぐ自動チェック機能が役立ちます。
検査結果を取り込める
外部の検査センターとオンラインで接続すると、直接検査指示を出すことができるだけでなく、検査結果をオンライン経由で取得することもできます。
紹介状や診断書などの作成がスムーズ
紹介状や診断書などの各種書類のテンプレートが用意されているため、業務効率がアップします。また、書類に関しても手書きで用意する必要がないため、読みにくさがありません。
地域医療連携がスムーズ
連携先の医療機関も電子カルテを導入している場合、お互いに情報共有がスムーズです。また、現状、電子カルテを導入していない医療機関や薬局があるとしても、今後、電子カルテの導入率が上がることを考えると、早い段階で導入しておいたほうが、地域医療連携体制が整ってきたときに対応しやすいといえます。
電子カルテを導入するデメリット
続いてはデメリットです。
初期費用、ランニングコストがかかる
初期費用やランニングコストは、紙カルテと比べると高くつく傾向にあります。ただし、メーカーによって初期費用、ランニングコストともに無料のものもありますし、クラウド型電子カルテであれば、総じてリーズナブルに設定されています。
セキュリティ対策が不可欠
患者データをパソコンで取り扱うからには、セキュリティ対策に力を入れる必要があります。電子カルテメーカー各社も情報漏洩リスクを下げるために試行錯誤していますが、クリニック側でもセキュリティ意識を高めることが不可欠といえます。
操作に慣れるまではストレスを感じることもある
電子カルテに限らずどんなITツールに関してもいえることですが、操作に慣れるまでの間はストレスを感じることもあります。
停電時には使えない
万が一の停電が発生した場合、一時的に紙カルテに切り替えられるよう、紙カルテの台紙もある程度用意しておくことが望ましいといえます。
電子カルテ導入までの流れ
続いて、電子カルテ導入の一般的な流れについて説明します。
導入したい電子カルテが決まったら、「要件確認およびシステム設定」「試験運用」を経て、運用開始となります。
クリニックの規模にもよりますが、一般的には、操作方法などの研修を経て本稼働となるまでに、約6か月から8カ月を要すと思っていいでしょう。
ただし、診療科目の多い有床病院などの場合は、要件設定やカスタマイズにも時間がかかります。反対に、最小限の導入設定で済むなら、3か月程度で本稼働にこぎつけることも可能です。
電子カルテ導入までの流れ1.メーカーの候補絞り込み
電子カルテ導入手順のひとつめは「電子カルテの選定」です。電子カルテと一口に言っても、機能性、デザイン性、操作性などはメーカーによって大きく異なるので、じっくり時間をかけて自院にとってベストなものを選ぶことが大切です。
比較検討の際に利用したいのは無料トライアル。ほとんどのメーカーでは無料のトライアル期間を設けているので、気になる電子カルテは実際に使ってみることで良し悪しを判断したいところです。
また、気になっている電子カルテのメーカーからユーザーを紹介してもらって話を聞いたり、先輩医師におすすめを尋ねたりすることも有効。
実際に使っている人の話ほど参考になるものはないですし、意外な目線からアドバイスももらえるかもしれません。
電子カルテ導入までの流れ2.要件確認およびシステム設定
トライアルを利用した結果、実際に導入したい電子カルテが決まったら、サービスを提供しているメーカーに"電子カルテに望むこと"を伝えます。
とはいえ、初めての導入となると、"どんなことを望めるのか?"がわからないということもあるかもしれません。その場合は、まず先に各社の電子カルテにどんなことを期待できるのかを尋ねるのもアリ。
たとえば、
- 新しいスタッフが入ったときはどうやって追加すればいいのか?
- 既存のレセコンなどと連携できるのか?
- 操作サポートの受付時間は?
- 停電・災害時にデータに影響が出ないのか?
などの気になることを一つひとつ確認していけば、その過程で「じゃあこんなことも可能?」というふうにアイディアも沸いてくることでしょう。
さらに、デモ操作を確認しながら、定義したい用件をきっちりと詰めていきましょう。
電子カルテ導入までの流れ3.試験運用
開業1~2か月前の操作研修や説明会などを通して気になる項目について確認したら、いよいよ試験運用です。試験運用は、開業1週間前あたりにおこなうと思っておけばよいでしょう。
試験運用に先駆けてメーカーの担当者と仕様設定の打ち合わせをする際には、処方、治療、病名などのうち入力頻度が高くなりそうな項目を設定してしまうのがおすすめ。そうすれば、運用後がとてもスムーズです。
また、試験運用から本稼働までの間には、電子カルテを使うことになる医師やスタッフが操作方法を覚えることが必要です。スタッフの研修をしっかりと行えるよう、時間に余裕を持って準備できるといいですね。
電子カルテ導入までの流れ4.本稼働
試験運用期間が終わると、クリニック開業とともにいよいよ本稼働となりますが、操作にも不慣れなためトラブルが発生することもあるでしょう。
しかし、保守・サポートが万全なメーカーであれば、運用開始後も継続的にサポートおよびメンテナンスをしてもらえるため、心配する必要はありません。それでも不安に感じてしまいそうな場合は、早い段階でメーカーの担当者に気になることを確認しておくといいですね。
また、本稼働後のひとまずの目標は、"1か月後に控えているレセプト提出に間に合わせること"。1か月の間に診療報酬をまとめる必要があるので、そこまでが一通りだということを念頭に置いて日々の業務をこなしていきましょう。
電子カルテのメーカー選定から本稼働までのスケジュールは?
以上の流れをまとめると、電子カルテのメーカー選定から本稼働までのスケジュールは概ね以下の通りです。
- 開業8か月~6カ月前:電子カルテのメーカー候補絞り込み
- ~2か月前:選定した電子カルテの要件確認およびシステム設定
- 2か月前~1か月前:操作研修および説明会
- 1週間前:試験運用
- 開業当日:本稼働
電子カルテ導入準備は早めがベスト!
操作に慣れるのにある程度時間がかかることや、停電時に紙カルテに切り替える練習をしておくこと、セキュリティ対策を講じることなどを考えると、電子カルテ導入準備は少しでも早く進めるのがベスト。
最初のうちは、慣れない操作を億劫に感じるかもしれませんが、操作に慣れてきたらレセプト作成などもスムーズに行えるため、業務効率もぐっとアップするので、それを励みに準備を進めてみてくださいね。
特徴
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提供形態
診療科目
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この記事は、2021年12月時点の情報を元に作成しています。