スタッフやその家族にお祝い事や不幸があったとき、雇い主がスタッフに支払うお金のことを「慶弔金(慶弔見舞金)」と言います。お祝い事とは結婚や出産などで、不幸とは葬儀や疾病、被災などのこと。開業医としてクリニックをオープンしてスタッフを雇った暁にも、このお金を支払うことになります。では、慶弔金に関してはどんなことを知っておけばいいでしょうか? 詳しくみていきましょう。
なぜ慶弔金制度があるのか?
慶弔金制度は、医療機関だけでなく基本的にどこの企業も用意しています。慶弔金制度は福利厚生のひとつで、制度がスタートしたのは明治期だと言われています。なぜこのような制度が始まることになったかというと、明治期には保険制度がなかったから。そのため、従業員が病気や怪我をした場合、日ごろの勤労に報いるために企業が独自に始めたとされています。
その後、保険制度が整備された後も慶弔金制度は廃れることはありませんでした。その理由としては、スタッフの職場定着、士気高揚、労使関係の安定化などが挙げられます。
慶弔金の種類および相場
続いては、慶弔金の種類および各慶弔金の相場をみていきます。
【お祝い事に対する慶弔金】
結婚祝い金
結婚祝い金は、基本的にはスタッフ本人が結婚したときに支給するものです。ただし、クリニックによってはスタッフの子どもが結婚したときにも支払うことがあります。結婚祝い金を支給するタイミングはクリニックによります。「役所に婚姻届けを提出して法的に結婚が認められたとき」「スタッフがクリニックに報告したとき」「式を挙げたとき」などのパターンが考えられます。
相場に関しては、スタッフ本人への結婚祝い金なら1万円~5万円、スタッフの子どもへの結婚祝い金なら1万円~3万円と思っていいでしょう。再婚の場合も支給の対象となりますが、クリニックによっては初婚時の半額にする場合もあるようです。
出産祝い金
スタッフまたはスタッフの配偶者が出産したときに支払います。第二子以降は金額を減額するクリニックもありますが、相場としては1万円~3万円と思っていいでしょう。結婚祝いや出産祝いに関しては、妻と夫の両方が同じクリニックに勤めているパターンも考えられるので、その場合は2人分を支払うのか1人分を支払うのか、事前に定めておいたほうが後々トラブルにつながりにくいでしょう。「お祝い事なんだから規定を気にせず気持ちで祝いたい」と思うかもしれません。しかし、後述しますが、慶弔金は福利厚生費となるため、あらかじめ決めた規定に沿って支給する必要もあるのです。
【御不幸に対する慶弔金】
死亡弔慰金
スタッフやその家族が亡くなったときに支給する見舞金です。支給に関するマナーやタイミングは、いわゆる香典と同じです。スタッフの何親等までを支給の範囲とするかはクリニックによって異なりますが、一般的には配偶者および子ども、実父母までを対象とする場合が多いでしょう。相場は、スタッフ本人であれば5万円~100万円、家族であれば1万円~5万円です。スタッフ本人が死亡した場合に関しては、亡くなったタイミングが通勤中や業務中であれば支給額が大きくなるのが一般的です。
傷病見舞金
スタッフが怪我や病気で入院または休業したときに支給されます。業務内容が原因で怪我や病気を患った場合、労働者災害補償保険(労災)もおりることになりますが、傷病見舞金はそれとは別に任意で支払われます。傷病見舞金の相場は、業務に関わる疾病の場合は2万円~10万円、業務外で傷病を負った場合は1万円~5万円となります。
災害見舞金
スタッフの自宅などが被災した場合に支給されます。相場は被害状況によって変わってくるため、1万円~50万円程度と幅があります。加えて、被災した家の世帯主がスタッフ本人であるのか、持ち家であるのかなどによっても支給の有無や金額が変わります。地震や台風などが原因の自然災害に対して支払われることもあれば、火事などの人為的な原因による災害に対して支払われることもあります。
慶弔金は経費になる?
スタッフやその家族に対しての慶弔金は、福利厚生費として全額経費にすることができます。ただし、相場から大きく外れない妥当な金額であることが条件です。
また、慶弔金に関する基底や、その規定に従ってスタッフが支給申請した書類、実際に支給したことを示す書類などが必要となります。
慶弔金を支払ったことはどう記録する?
慶弔金には領収書がありません。そのため、経費として落とすためには、出金伝票にしっかりと記録しておく必要があります。出金伝票は文房具店や百円ショップで購入することができます。
慶弔金の規定はあらかじめしっかり定めておくことが肝心
開業医としてスタッフやその家族と長く付き合っていくとなると、お祝い事も御不幸もどちらも何度かは経験することになると考えられます。そのたびに「このお金は経費で落とせるのだったっけ?」と考えていては、時間だけでなく場合によっては金銭にもロスが生じます。開業のタイミングでしっかりと細かいところまで詰めておけばあとが安心なので、今のうちに最低限必要な知識を仕入れておいてくださいね。
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診療科目
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この記事は、2022年3月時点の情報を元に作成しています。