在宅療養支援診療所として申請せずに在宅医療を提供するのはアリ?

在宅医療を提供するクリニックの開業を考えているドクターは、施設基準のひとつである"24時間対応"をどうやってクリアするかについて考えたことがあると思います。しかし、実際のところ、ドクターひとりでクリアするのはかなりハードルが高いもの。では、どんな対策を講じればいいのでしょうか? 早速みていきましょう。

目次
  1. 24時間対応にするとはどういうこと?
    1. 1往診・訪問診療料など=往診料
    2. 2在宅時医学総合管理料と各種指導管理料
    3. 3検査、注射、投薬、処置料など
    4. 4指示書料
    5. 5ターミナルケアに関する費用
  2. 在宅医療を提供するなら24時間対応は不可欠なのか?
  3. 「在宅療養支援診療所」として申請しなかった場合の点数は?
  4. 点数を最優先に考えると、そのぶん負担が大きくなる可能性もある

24時間対応にするとはどういうこと?

在宅医療を提供するにあたり、患者に対して24時間対応をするということは、クリニックを「在宅療養支援診療所」だとして地方厚生(支)局長に申請するということです。「在宅療養支援診療所」として申請しておけば、在宅医療を提供した際に、下記の5種類の医療費を請求できます。

1往診・訪問診療料など=往診料

患者からのニーズに応えるかたちで、不定期で診療に赴いた場合に算定される「往診料」は720点です。再診料には、時間外や休日などの加算も可能です。また、診療時間が1時間を超えた場合には、30分またはその端数を増すごとに100点が加算されます。

2在宅時医学総合管理料と各種指導管理料

届出保険医療機関において、通院が困難な患者に対して月に2回以上の定期的な訪問診療を24時間365日で実施した場合、「在宅時医学総合管理料1」が算定可能です。処方を交付する場合は4,200点、交付しない場合は4,500点という点数になります。初診料を算定する往診は回数に含むことができませんが、それ以外の往診に関しては、訪問診療と併せて回数に含めることが可能です。

また、月に4回以上の訪問診療または往診を実施した場合、患者ひとりにつき毎月1回1,000点の「重症者加算」ができるほか、病院からの退院後1年以内で在宅医療に移行した患者を診療する場合には、月1回3か月に限って、在宅移行早期加算として100点が加算されます。

3検査、注射、投薬、処置料など

在宅時医学総合管理料または特定施設入居者等医学総合管理料を算定すると、外来診療した場合も含めて投薬料は包括されています。同様に、処置料や皮膚科特定疾患管理料、在宅寝たきり患者処置指導管理料も包括されているため、必要に応じて支給した薬剤料と特定保険医療材料のみの算定となります。ただし、重度褥瘡(じょくそう=床ずれ)処置については併算可能です。また、胃ろう交換に関しては、訪問診療時に画像診断または内視鏡などで確認のうえ実施した場合のみ、「胃ろうカテーテル交換料」として200点の算定が可能です。

4指示書料

訪問看護ステーションに対する「訪問看護指示料」は300点で、月に1回を限度として算定可能です。状態不良などでたびたび訪問が必要な場合に発行する「特別訪問看護指示」は100点で原則1回の発行ですが、難病や重症褥瘡などの場合、月に2回の算定が可能です。訪問看護によって週3回以上の点滴を実施する場合には、「在宅患者訪問点滴注射管理指導料」として60点の算定が可能です。

5ターミナルケアに関する費用

突発的な看取りとなった場合、往診料および200点の死亡診断料の加算が可能です。加えて、死亡日前14日以内に往診または訪問診療を2回以上実施していた場合、「在宅ターミナルケア加算」として2,000点が加算されます。在宅療養支援診療所などの医師が、死亡日前14日以内に往診または訪問診療を2回以上実施して、かつ死亡前24時間以内に訪問して患者を看取った場合には、10,000点の「在宅ターミナルケア加算」が加算されます。ただしこの場合、200点の死亡診断加算は10,000点のなかに包括されることとなります。

在宅療養支援診療所などで通院困難な末期悪性腫瘍患者に対して、訪問診療が週1回以上かつ訪問看護が週1回以上で、合計で1週間につき4日以上の訪問を実施した場合、「在宅末期医療総合診療料」として、院外処方箋を交付する場合1日につき1,495点、それ以外の場合は1,685点の算定が可能です。ただし、これに関してはあらかじめ届出医療機関として登録しておく必要があります。

参照:公益社団法人 東京都医師会「在宅医療における診療報酬」より一部抜粋

在宅医療を提供するなら24時間対応は不可欠なのか?

「在宅療養支援診療所」として申請するかどうかは各々の施設にゆだねられています。ある程度まとまった数の在宅患者を擁していたり、重症度が高く常時対応が必要な在宅患者が多かったりする場合は申請しているパターンが多いですが、24時間対応の必要性がないなら必ずしも申請する必要はありません。また、24時間対応であるからといって、すべての在宅患者に対して高額な在宅療養支援診療所の在宅時医学総合管理料を算定する必要もありませんし、必要に応じて2種類の在宅時医学総合管理料を使い分けすることもできます。

もちろん、申請しなければ、「在宅療養支援診療所」に加算される点数をとることはできません。しかし、そうなると患者の自己負担額が少なくなることから、患者満足度が上がる可能性も大いにあります。

参照:公益社団法人 東京都医師会「在宅医療における診療報酬」より一部抜粋

「在宅療養支援診療所」として申請しなかった場合の点数は?

「在宅療養支援診療所」として申請しなかった場合、病床なしの診療所向けの点数が加点されることになります。具体的には、在宅患者に対する総合的な医学管理を評価する診療報酬である「在宅時医学総合管理料」が発生します。

算定可能な医療機関は以下です。

  • 在宅療養支援病院
  • 許可病床200床未満の病院
  • 診療所
  • このうち、病床なしの診療所向けの点数は以下の通りです。

    【病床を有しない診療所の在宅時医学総合管理料】

    (1)別に厚生労働大臣が定める状態の患者に対して、月2回以上訪問診療をおこなっている場合

  • ①単一建物診療患者が1人の場合:5,000点
  • ②単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合:4,140点
  • ③①および②以外の場合:2,640点
  • (2)月2回以上訪問診療をおこなっている場合((1)の場合を除く)

  • ①単一建物診療患者が1人の場合:4,100点
  • ②単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合:2,200点
  • ③①および②以外の場合:1,100点
  • (3)月1回訪問診療をおこなっている場合

  • ①単一建物診療患者が1人の場合:2,520点
  • ②単一建物診療患者が2人以上9人以下の場合:1,380点
  • ③①および②以外の場合:720点
  • 参照:curon オンライン診療関連用語集「在宅時医学総合管理料とは」

    点数を最優先に考えると、そのぶん負担が大きくなる可能性もある

    先に紹介した、「在宅療養支援診療所」として申請しておいた場合に請求できる5種類の医療費と見比べると、たとえば「在宅時医学総合管理料」ひとつとってみても、届出済で処方を交付した場合は4,200点、届出なしで処方を交付する場合は2,200点と大きな差があります。この差にだけ着目すると、届出をしておいたほうが有利なように思えるかもしれませんが、「24時間対応ではない=負担が少ない」のは紛れもない事実。ワーク・ライフ・バランスなども考慮しつつ、医療人としての自分の人生において、何を優先したいかを一度真剣に考えてみるといいかもしれません。

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