開業医として独立する手段には、新規開業だけでなく、承継などもあります。「前院長がこれまで順調に運営してきたクリニックを引き継ぐのなら失敗することがないだろう」。そう考える人もいるかもしれませんが、実際のところ、失敗に終わる可能性は十分にあります。では、失敗に至る原因としてはどのようなことが考えられるのでしょうか? 早速みていきましょう。
クリニック承継の失敗の原因として考えられることは?
クリニック承継の失敗の原因としては、主に以下のようなことが考えられます。
クリニックの方針が変わったなどの理由により患者が離れてしまう
クリニックを承継すると前院長時代の患者の来院も見込めますが、診療スタイルが異なったことに患者が違和感を覚えると、一度は来院してもその後は別のクリニックに乗り換えることもあり得ます。たとえば、「前の院長はこういうときにはすぐに薬を出してくれたのに、今度の先生は出してくれない」なども、患者が不満を抱きがちなポイント。地域密着型のクリニックであれば、「前の院長はもっとたくさん話を聴いてくれたのに」ということもあるかもしれません。
そうした事態を防ぐためにも、承継にあたって前院長とクリニックの方針に関してしっかりとすりあわせることが大切です。
具体的な対策としては、承継前の数か月間、前院長のもとでアルバイトとして働くことで前院長のやりかたを覚えるか、もしくは承継後しばらく、前院長にアルバイトとして残ってもらうことがもっとも効率的でしょう。独立前の勤務先が忙しく、承継前に空き時間にバイトを続けることが難しいなら後者を選択するとよし! 前院長と診療科をわけることで少しずつ業務に慣れていきながら、独り立ちに向けて準備を進めていくのもいいですね。
引き継いだスタッフとの人間関係がうまくいかない
承継開業をスムーズに進めるためには、スタッフを継続して雇用することが望ましいです。しかし、クリニックの方針や仕事のやりかたについて十分にすり合わせても、相性が合う/合わないもあるので、反発心を持たれる可能性はありえます。
それでも、一緒に働く仲間である以上、お互いを理解して協力し合うことは大切。まずは、お互いの理解を深めるために個別面談をおこない、経営・診療方針について十分に話し合うようにしましょう。
ただし、面談の機会を設けても、考え方が合わず続けてもらえないことももちろんあるでしょう。その場合は、新しくスタッフを雇う必要が出てきます。また、場合によってはこれまでのスタッフは全員引き継ぎつつも、スタッフの追加雇用をおこなうことが望ましい場合もあります。たとえば、「まとめ役がひとりいればうまくいきそう」「自分と同じ考えのスタッフがいればバランスがとれそう」などのパターンが考えられるでしょう。
建物や設備が老朽化していたため、結果的にランニングコストが大きかった
初期費用の安さを重視するあまり、ランニングコストについて考えることが後回しになっているのがこのパターン。建物自体や各医療機器の寿命を考え、何年後にどんな修繕が必要なのか、その際にどのくらいのお金がかかるのかの概算は事前にきっちり出しておくべきです。いざ修繕が必要なタイミングが訪れたとき、「そんな大金は用意できそうにない……」と廃業に追い込まれるのはもったいないことです。
承継物件が前院長の自宅敷地内などで気疲れする
前院長が自宅の敷地に物件を建てていた場合、クリニックを引き継いだ後も頻繁に顔を合わせることになります。もしくは、入り口が別の方角であるため顔を合わせることはないにしても、患者を通して現在のクリニックの様子が耳に入ることが気になるかもしれません。
同じ敷地である以上、こうした事態を避けることはできません。ただし、「顔を合わせることを負担に感じる相手であるかどうか」は事前に判断可能です。承継と関係なく、医師の先輩として今後も交流していきたいと思えるような人柄であったり、相性が良く気づかいせずに済んだりする場合は、このポイントに関しては気にすることはないでしょう。
承継以前から繁盛していない
立地がよく、設備も建物も古くないのに格安で承継先を募集していた場合、前院長の集患スキルが足りず経営がうまくいっていなかった可能性があります。その場合、承継した後も地域住民に同じイメージを持たれたままで集患がうまくいかないことがあります。
これを防ぐためには、事前に口コミサイトなどを通して評判をチェックして、患者のニーズを考えながら、今後の集患・増患対策を練ることが必要です。また、口コミ以外にも、地域住民のニーズを考え、どんなコンセプトを立てた上で承継すれば集患につながりやすいのかを考えることが大切です。コンセプト作成に力を入れることで、経営がうまくいく可能性は俄然高まります。
クリニック承継を成功させるためのポイントは?
続いてはクリニック承継を成功させるためのポイントを開設していきます。
承継物件について事前によく調べる
まず大切なことは、承継先の物件について事前によく調べることです。賃貸借契約書、平面図などは、内見に行く前にも確認すべきです。スタッフ情報や経営情報に関しても、できる限り内見前に確認しておきましょう。スタッフ情報に関しては報酬や勤続年数、年齢などの基本情報に加え、就業規則や雇用契約書の有無やその内容についても確認します。経営情報に関しては、確定申告書を少なくとも3期分用意してもらいます。
実際に現地に見学に行った際には、視認性や通行料、資産の残存状況、摩耗状況、薬品やカルテがきちんと管理されているかなどを細かくチェックします。また、事前に入手した平面図をもとに、各部屋を図面通りに使用しているかも確認します。
地域への貢献を追求する
承継先を探しているクリニックは、「地域の住民の健康サポートを安心して任せられるドクター」を希望している場合が多いでしょう。その場合、その地域の住民からかかりつけ医となることが望まれているので、地域医療への貢献を第一に考えられるといいでしょう。
スタッフを引き継ぐ
承継に伴いスタッフも刷新すると、前院長時代のことを知っている人が現場にいないということになるので、不安を覚える患者も出てくるでしょう。また、スタッフ側からは不満が出ることが考えられますし、それがもとでトラブルに発展することも考えられるので、可能な限りスタッフは継続して雇用したいところです。
承継前または後の一定期間、前院長のもとで働く
こちらは前述の通り。前院長時代の経営理念などをしっかり理解したうえで承継すれば、患者もスタッフも戸惑いを感じにくいのでスムーズな滑り出しが期待できます。ただし、理念や方針を十分理解してスタートしたうえで、「よりよいクリニックを目指して改良を加えていく」ことは大いに称賛されるべきことです。「これまで以上に地域の住民に貢献したい」との想いは、患者にもきっと伝わるものです。
専門家に相談する
開業医としてクリニックを運営していくうえでは、「マネジメント」「労務」「広告・宣伝」をはじめさまざまなことを考えなければなりません。開業医の先輩でもある前院長にアドバイスを請うことももちろんできますが、それぞれの分野のスペシャリストに相談すれば、よりよい対策を知ることができます。また、自分が不得意な分野のことに関しては、相談するだけではなく、手伝ってもらうのも有効な選択肢。たとえば、承継開業したことを多くの人に知ってもらうためにホームページを刷新して口コミ対策に力を入れていきたいなら、SEOやMEO対策が強い制作会社に依頼するのもいいでしょう。
条件に妥協しないためにも早めの準備が肝心
失敗の原因となり得ること、成功の秘訣がわかれば、その知識をもとに少しでも早く開業にこぎつけたいと考える人もいるかもしれません。しかし、スピードを重視すると条件面で折り合いがつかず、妥協せざるを得なくなってしまうことが考えられます。その結果として、うまくいく確率が下がってしまっては元も子もないので、十分に納得いく物件に出逢うタイミングを待つためにも物件探しは早めに始めるのが吉。また、なかには、「●か月以内に承継してくれる人限定」という物件もあるので、いざいい物件が現れたときにすぐに動けるよう、必要な知識の習得に関しても、少しずつでも着実に進めておきたいですね。
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この記事は、2022年5月時点の情報を元に作成しています。