『PHC』のメディコム事業部に聞いた ハイブリッド型電子カルテシステムのメリットや導入する際の注意点は?

クリニックに必要不可欠な電子カルテシステム。院内にサーバーを置くオンプレミス型と、インターネットを介してデータのやり取りを行うクラウド型のほか、「ハイブリッド型」というタイプがあります。今回はこの「ハイブリッド型電子カルテシステム」について、仕組みや利用するメリット、またクリニックへの導入状況などを、診療所向け電子カルテシステムにおいて高い市場シェアを持つ『PHC株式会社』メディコム事業部に聞きました。

目次
  1. 緊急時にもスムーズな医療が提供できる
  2. ハイブリッド型運用で発生するコストとメリットを比較
  3. ハイブリッド型を導入するクリニックは増えている

緊急時にもスムーズな医療が提供できる

――「ハイブリッド型電子カルテシステム」はどんなシステムなのか教えてください。

「ハイブリッド型電子カルテシステム」は、オンプレミス型(院内サーバータイプ)とクラウド型の両方のメリットを兼ね備えた電子カルテシステムです。弊社のシステムの場合、オンプレミス型のシステムにオプションでクラウド機能を組み合わせることで、ハイブリッド型として運用することができます。

――「ハイブリッド型」にした場合、運用方法はどのようになりますか?

弊社のシステムは、基本はオンプレミス型で運用します。もし、サーバー障害などの緊急事態が起こった場合に「クラウド運用」に切り替え、そのまま診療を継続運用できる仕組みになっています。

――ハイブリッド型のメリットを教えてください。

クラウド型は、インターネットの回線速度の影響による操作速度の低下やブラウザーによる操作性の制限があります。しかし、オンプレミス型はその影響を受けず、スピーディに診察業務を実施できます。

一方オンプレミス型は、院内サーバーがなんらかのトラブルで動作しない状況になると診察業務を継続できなくなります。弊社では、緊急時の対応として、全国各地にサポート拠点を設置していますが、それでも復旧には現地への移動時間および作業時間が発生してしまいます。このように、どちらのタイプにもメリット・デメリットがあります。

しかし、ハイブリッド型の場合、通常時は院内サーバーを利用するためスピーディな操作を実現しつつ、データをリアルタイムでクラウドにも保存しています。双方でリアルタイムに同期しているため、非常時に切り替えて運用することが可能なのです。

――双方のウイークポイントを補う形で運用できるのですね。

ハイブリッド型運用で発生するコストとメリットを比較

――ハイブリッド型を導入する上での注意点はありますか?

弊社の場合、オンプレミス型の電子カルテシステムにクラウド機能を組み合わせるためには、月額有償のオプションを導入する必要があります。別途費用が発生するので、導入の際には、ハイブリッド型での運用継続対策やデータのバックアップ費用など、新たに発生する予算を見極めないといけません。

――ハイブリッド型は便利ですが、メリットよりもコストが上回ってしまっては元も子もありませんね。

業務用システム全般に当てはまることですが、一度導入すると、変更するのに大きな労力が発生します。システム本体だけでなく、運用継続対策やデータのバックアップにも同じことが言えます。これから電子カルテシステムの選定を考えている方には、何にこだわりたいか(例、業務の効率化やセキュリティ、運用継続性など)をしっかりと把握した上で、どのシステムを導入するか検討することをお勧めします。

――クリニックの運用にマッチするならば、ハイブリッド型でなくてもいい、ということでしょうか。

はい、その通りです。例えばですが、オンプレミス型であれば、クラウドを使わずともセカンドサーバーを用意するなどの対策ができます。クラウド型についても、モバイルWi-Fiなど、サブネットワークを準備することで、もしもの事態に備えることができます。

ほかにも、クラウド型は一般的に「カスタマイズ性がない」と言われていますが、現状はある程度のカスタマイズは可能です。オンプレミス型の場合、院外からの外部アクセスができないと思われがちです。これも、院外から院内サーバーへアクセスする仕組みはすでにできています。

――コスト面でハイブリッド型にできない場合は、弱点を補うような工夫をすればいいのですね。

ハイブリッド型を導入するクリニックは増えている

――ハイブリッド型を導入するクリニックは増えているのでしょうか?

導入数は増えています。導入数の増加には、BCP(Business Continuity Plan=事業継続計画)の重要性が見直されつつある背景が関係していると考えられます。医療インフラは、非常時や緊急時にこそ、止めずに提供する必要があります。そのためにも、サーバーダウン時や、インターネットに接続できない状況など、考え得る障害を想定し、対策しておく必要があります。こうしたトラブルのリスクヘッジの一つとして、ハイブリッド型の電子カルテシステムを選ぶクリニックが増えています。

――実際に導入しているクリニックからはどんな反響がありますか?

導入が増加している背景でお話ししたとおり、地域の皆さまに安心して医療を受けていただくために導入するというケースが多く見られます。しかし、クラウド運用が可能なシステムが使用できても、実際に非常事態が発生した際に、クリニック内でBCPどおりの運用ができるかどうか、不安を持たれているクリニックも少なくありません。

弊社では、クラウド型の利点を活用した対応に加え、全国にサービス拠点を置き、総合的な医療機関運営サポートを行っています。システムの機能面だけでなく、こうした手厚いサポート体制も、多くのクリニックに選ばれている理由だと考えています。

――ありがとうございました。

ハイブリッド型電子カルテシステムは、オンプレミス型とクラウド型双方の良いところを兼ね備えた非常に便利なシステムです。近年は「もしも」に備えて導入するクリニックも増えており、「ハイブリッド型」が当たり前になる可能性もあります。これから開業する医師は、選択肢の一つとして頭に入れておくといいでしょう。

『PHC株式会社』メディコム事業部

取材協力:PHC株式会社

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執筆 コラム配信 | クリニック開業ナビ

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