承継案件マッチングの決め手とは?

開業するに当たり承継案件を選ぶ医師も増加傾向にあります。ただし、事業承継には相手(譲渡する側)がおり、「開業される先生の100%希望どおり」ということは滅多にありません。つまり、どこまで自分の思いを実現できる承継案件を選択できるのかが問題です。今回は、この承継案件でのマッチングについて、『株式会社CBパートナーズ』の齊藤章平代表取締役にお話を伺いました。

『株式会社CBパートナーズ』は「介護・医療・福祉のM&A」を手掛け、医療承継案件について豊富な経験と知見を持つ会社です。

目次
  1. 承継案件は増えている! その理由は?
  2. 承継案件はどうやって探す?
  3. 承継案件をマッチングさせるための重要な条件とは?
  4. 承継案件のベストマッチプラクティス
  5. まとめ

承継案件は増えている! その理由は?

――承継案件の現在のトレンド・概況はどのようになっているでしょうか。

無床の診療所の承継案件は増加しています。背景としては、昭和60年12月の医療法改正により常勤医師1名でも医療法人を設立できる一人医師医療法人制度が導入されました。当時、30歳代~40歳代で独立された先生方が、開業から約40年が経過し、事業承継を検討する年齢にさしかかっています。しかし、簡単には後継者が見つからないため、承継案件が増加しているのです。
また、平成19年4月の医療法改正前に設立されたいわゆる旧法(出資持分あり)の医療法人のご相談の方が多いのが現状です。

これから開業しようという先生の目線でお話しすると、
①新規で開業するのか
②承継で開業するのか
になるわけですが、ひと昔前と比べると、承継案件で開業することを選択する方が増えてきたかな、と思います。

理由の一つは、クリニックが過当競争の時代に入っていることです。人口密集地帯、都心部、政令指定都市であるとか、そうしたエリアではあらゆる診療科目が揃っており一定の水準で医療を受けられる状態になっています。
その中に、新規開業で割って入り、他院との差別化を行い、患者さんを集めて成功を収めるというのは、10年前、20年前と比べるとなかなか難しくなっているのです。
ですので、しっかりと患者さんが既にいらっしゃるクリニックを引き継ぎ、自分の努力によって患者様を増やし、売上を伸ばしていく。そのように考える方が多くなっていると思います。

――承継案件での開業が増えた原因はほかにもありますか。

承継案件を扱う業者が増えたというのもあるでしょう。医療というのは特殊なジャンルです。一般企業のM&Aを扱う業者は日本全国至るところにあるのですが、医療法という特殊な制約下で、一定の専門知識が求められますので、これまではそれほど多くはありませんでしたが、現在は、「医療 承継」で検索すると非常に多くの業者がヒットします。専門性という点はわかりませんが、医療業界においても、それほどM&Aや事業承継ということが、一般的になったという背景はあると思います。

――承継案件のメリットはなんでしょうか。

一番のメリットはそれまで蓄積したノウハウなどをそのまま引き継げるという点です。また、開業から数年間の運転資金等も含めて考えると、総投資額が少なくて済む可能性もあります。
新規開業ですと医療機器の購入やリースを組む必要がありますが、承継案件では基本的にそこにあるものを引き継いで使うことになりますので、そういった出費も譲渡対価に含まれます。さらに、損益分岐ラインに乗るまでの人件費や賃料等をはじめとする費用も必要となりますので、2~3年というスパンで考えると、初期投資が抑えられる承継案件も増えてきています。

――これから開業しようという医師は承継案件をどのように探すべきでしょうか。

医療承継案件を支援している専門家に、早めにご相談いただくのがいいと思います。新規開業の場合には、普段接しているメーカーさんなどから支援や助言があったりするのですが、事業承継の場合は専門家に相談して、実際にどのような案件があるのかを確認するところから始めなければいけません。要は、自分がどこでどんな条件で開業できるのかを知ることです。まず知識をつけることが重要で、具体的な案件に触れ、事業承継ならではの準備を少しずつ始めることをお勧めします。

――動き始めてからどのくらいの時間で案件が成立するのでしょうか?

先生がお一人で開業される場合は、早くて1年でしょうか。早めに具体的な準備をされる方でいうと、2、3年後の独立を目指して動き出されます。「ちょっとまだ先なのですが」とご相談を受けるケースもあります。

――万全を期すのであれば、早めに動いて情報を集める必要があるということですね。

はい。そういうことになります。

承継案件はどうやって探す?

――承継案件を探している医師からすると案件を見つけるのが難しいという点が問題です。例えば、不動産と違って、医療系の承継案件が一カ所に集約されて検索できるというサイトはありません(不動産では業者の使う「レインズ」というサイトがあります)。承継案件を探している医師はどうすべきでしょうか?

医療系の案件を保有している率が高く、しっかりと支援されている専門家に(承継案件を探している医師として)登録・相談することが一つだと思います。医療系も一般の事業承継案件も扱っていますというところですと、先生も隔靴掻痒(かっかそうよう)な思いをされるかもしれません。ですので、医療専門に事業承継の支援を行っている専門家に複数声を掛けることが一番だと思います。

――御社にお願いするというのも解決になりますか。

はい。ただ、初回面談で先生のご希望を伺って、その希望どおりの案件がご紹介できるかというと、これは分かりません。場所や科目などマッチする承継案件があって初めて成立するものですので。そのため、やはり複数、2、3社に声を掛けておくことをお勧めします。

――承継案件における売り手・買い手がベストマッチに至る条件とはどのようなものでしょうか?

双方の希望が100%叶うということは、まずありません。やはり、お互いどこかで妥協や、すり合わせが必要になります。
重要なのは先生が「譲れない部分」を明確に言語化しておくことです。また、それ以外の部分では、自分は一歩引ける、対応できるという部分もマインドセットとして持っておいていただきたいです。「譲れない部分」と「そうでない部分」が明確になっていれば、事業承継は、成立しやすくなります。

事業承継の場合には、売り主さんという交渉相手がいますので、「100%自分の希望を通して買ってやるんだ」というスタンスで当たられると、承継開業は、難しくなります。

承継案件をマッチングさせるための重要な条件とは?

――承継案件においてマッチングに至るための条件とはどのようなものでしょうか。

診療科目や承継案件毎に異なる事象はありますが、承継開業推進において共通するポイントが幾つかありますが、一番大きいのは「譲渡対価」です。次に重要になるのは、「引き継ぎ期間」「引き継ぎの方法」など引き継ぎに関することです。あとは「承継時期」です。
①譲渡対価
②引き継ぎ
③承継時期
どのエリア、科目でも重要になるのはこの3つです。
ご自身のやりたいことが確立されていて、開業時期も好きにしたいという確固たる意志があり、それが承継案件では満たすことができないご希望の場合は、承継案件ではなく新規開業をお勧めすることもあります。

――「妥協しない方がいいポイント」はあるのでしょうか?

承継案件で問題になるのは「引き継ぎ」だと考えています。譲渡対価はファイナンスの問題もありますので、一旦おいて置きますが、「引き継ぎ」は譲渡される先生のお考えと、承継する先生のお考えに加え、地域の患者様にも関わる問題です。
承継して開業しようとする先生には、そのクリニックに「どういった患者層の患者様」に対して「今の先生がどのように診療スタンスで対応しているのか」をしっかり把握し、自分が引き継げるかどうかを考えていただきたいのです。

譲渡対価というのは営業権やのれん代と呼ばれる将来的に発生する利益も含んだものです。その利益の前提になっているのは、当然、現在の先生が診療している患者様があってのものです。ですから、引き継ぎがなされず、患者様が引き継げなかった場合は、譲渡対価に見合わない承継をすることになってしまいます。
引き継げるというイメージがしっかりと持てるのであればいいのですが、もしそうでないなら、その承継案件を進めてもいいことにはなりません。ですから、「引き継ぎのイメージができるかどうか」で妥協すべきではないと思います。

承継案件のベストマッチプラクティス

――これまでに「承継案件のベストマッチプラクティス」があればぜひお聞かせください。

一つは、精神科のクリニックで院長先生がお一人で患者さんを診ていらっしゃいました。誰かに引き継いでほしいということで2、3年前からいろんな方にご相談をされており、中々うまく進まない中で当社にご依頼頂きました。承継開業をされたのも精神科の先生です。いろんな病院やクリニックで院長を務めた経験もある先生で、自分の思うとおりの診療を行っていきたいということで承継案件を探しており、それで当社にお声がけをいただいたという経緯です。実際にご相談を受けてから承継を完了するまでは約9カ月でした。

――それは早いですね。

諸条件やご意志が固まったのはご相談から3カ月後ぐらいでした。最初からご希望の大部分がマッチしたケースだと思います。契約書を交わしたのも早かったのですが、現在の先生の退職までの時間、現勤務先での引き継ぎの時間で半年ぐらいかかりました。このケースでは、譲渡側の先生もそこまで大きな譲渡対価を望んでいらっしゃいませんでしたし、また精神科なのでイニシャルコストも大きなものではなく、開業される先生との条件もうまく合致したというのがポイントです。開業された先生のご経歴、また人柄を譲渡側の先生が考える理想に近かったというのも大きかったですね。

――やはり引き継ぎは重要なのですね。

もう一つは、整形外科のクリニックです。最近では法人及び個人で不動産を保有している承継案件が増えているのですが、本件もそうでした。整形外科ですから、土地・建物もそれなりの大きさで、通常であれば、これだけでも初期投資は大きく膨らみます。そこで、不動産は譲渡側の先生から別のアセットホルダーに売却して、開業する先生には、そのアセットホルダーから建物を賃貸する形を提案いたしました。これが順調に進み承継がうまくいきました。開業する先生からすれば、敷金や月々の家賃と譲渡対価で済んだというわけです。

――なるほど。うまい方法ですね。

不動産が付いてくる承継案件はこれから問題になってくるのではないかと思います。実際、このようにアセット(資産)を分離して承継してもらおうという動きは増えています。また、「医経分離」という医療と経営を分離した形を望まれる先生も多くいらっしゃいます。診療報酬や行政対応、労務・人材採用面、事業計画や資金面などを含む経営面は、経営のプロや専門家に任せ、先生はより医療に専念したいという希望を持たれる先生はこれからさらに増加するのではないでしょうか。

――承継案件でこれから開業しようという医師にアドバイスをお願いします。

先生方は、10年後、20年後といった長期的な視点で独立するかどうかの決断をされると思います。どんなクリニックにしたいのか、どのように地域に貢献していきたいのかといった先生のご希望をまずは整理して考えていただくのがよいかと思います。その上では、医療業界の情勢やトレンド等も踏まえる必要があるため、事業承継の専門家には早めにご相談いただくことをお勧めします。当社では、事業承継の準備から実務までを多面的にサポートさせていただきますので、当社にもぜひお声がけください。

まとめ

承継案件は増加していますが、問題は「希望どおりの承継案件」というのが少ないことです。ですから、事業承継を熟知した会社にしっかり相談し、妥協できるポイントを探すことが重要になります。これから承継案件で開業したいという医師の皆さんは、ぜひ早めに動いてより良い承継案件で開業できるよう準備してください。
取材協力:『株式会社CBパートナーズ』

Mac・Windows・iPadで自由に操作、マニュア ルいらずで最短クリック数で診療効率アップ

特徴

1.使いやすさを追求したUI・UX ・ゲーム事業で培って来た視認性・操作性を追求したシンプルな画面設計 ・必要な情報のみ瞬時に呼び出すことが出来るため、診療中のストレスを軽減 2.診療中の工数削減 ・AIによる自動学習機能、セット作成機能、クイック登録機能等 ・カルテ入力時間の大幅削減による患者様と向き合う時間を増加 3.予約機能・グループ医院管理機能による経営サポート ・電子カルテ内の予約システムとの連動、グループ医院管理機能を活用することにより経営サポート実現 ・さらにオンライン診療の搭載による効率的・効果的な診療体制実現

対象規模

無床クリニック向け 在宅向け

オプション機能

オンライン診療 予約システム モバイル端末 タブレット対応 WEB予約

提供形態

サービス クラウド SaaS 分離型

診療科目

内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、、循環器科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、肛門科、産婦人科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、気管食道科、放射線科、麻酔科、心療内科、アレルギー科、リウマチ科、リハビリテーション科、、、、

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