
WEB問診システム『SymView(シムビュー)』に、『HER-SYS(ハーシス)』との連携機能が加わりました。『HER-SYS』は、新型コロナウイルス感染者の情報把握や管理支援を行うシステムですが、WEB問診システムと連携することでどのようなメリットが生まれるのでしょうか? 『SymView』を提供している『株式会社レイヤード(旧:株式会社メディアコンテンツファクトリー)』に取材しました。
多くのクリニックで利用されている『SymView』
『SymView』はクラウド型のWEB問診システムです。来院前に患者情報を収集し、分析・活用することで診療行為全体のDX化を推進します。患者は自宅で落ち着いて問診入力ができるため、訴えや相談をしっかりと医療者に伝えることができます。対象となる患者にのみ適切な情報を提供することが可能で、患者ニーズを掘り起こせるツールでもあります。
『SymView』の機能や特徴、導入方法などの詳細は以下の記事をご覧ください。
従来の報告システムは負担が大きかった
『株式会社レイヤード』は、2022年5月24日に、『SymView』と『HER-SYS』の連携機能をリリースしました。連携開発の背景や、連携が可能になったことでどのようなメリットがあるのかを、『株式会社レイヤード』マーケティング本部の加藤秀和さんに伺いました。
――今回、『SymView』と『HER-SYS』を連携させた理由を教えてください。
『HER-SYS』は、新型コロナウイルス感染症の発生状況を把握し、的確な対策を行うために厚生労働省が運用しているシステムです。従来、発生状況の届け出は、医療機関から保健所にFAXで送り、それを各地域で取りまとめるという方法でした。この方法だと各クリニックの負担が大きく、即時性もないため、『HER-SYS』上で各クリニックから入力してもらい、管理しようということになったのです。
ところが、新型コロナ感染症の第6波においては、『HER-SYS』での報告が大きな負担になってしまいました。医療者がITに慣れていないこともありますが、『HER-SYS』で報告する場合は患者1人につき100以上の項目を入力しないといけないからです。また、ログインの複雑さも負担増の原因になりました。結果的に陽性者が増えるほど負担が増してしまったのです。
――医療機関の負担を減らそうとしたのに、かえって負担が増してしまったのですね。
症状だけではなく、感染した患者さんのワクチン接種状況や、未成年の場合は保護者の連絡先なども『HER-SYS』では必要なため、その分、診察にも時間がかかるようになってしまいました。残念ながら、現場の状況とシステムがうまくかみ合いませんでした。そのため、あるクリニックから「『HER-SYS』で必要な聞き取りだけでもWEB問診でできないか」という話があり、私たちもそこに課題があることを認識し動きはじめました。
当初は連携機能という形ではなく、WEB問診で必要な情報を聞くことができ、聞き取った情報をコピー&ペーストすることで、『HER-SYS』で報告できる、というものでした。これだけでも「手間が減った」と院長先生に喜んでもらえたのですが、次に「『HER-SYS』には複数のデータをエクセルから一括取り込みができるので、WEB問診の情報をエクセルに落とし込めないか」という声が上がりました。
――その方法だとさらに便利ですね。
しかし、『SymView』の出力形式ではそのまま『HER-SYS』に取り込めなかったので、『HER-SYS』の開発担当の方に協力していただいて、出力形式などの調整を行いました。その結果、『SymView』で患者さんに回答していただいた情報をそのまま『HER-SYS』に取り込めるようになりました。
連携することで作業負担が大幅減
――『HER-SYS』と連携することのメリットを教えてください。
医療機関側のメリットとしては、やはり「入力の手間が省けること」に尽きます。『HER-SYS』用の質問を患者さんにしたり、報告データをまとめたりする時間を省略できるため、その分、医療に向き合うことができます。利用していただいているクリニックさんからはさまざまな感想が寄せられていますが、皆さん開口一番「楽になった!」とおっしゃっています。
――それだけ入力が負担になっていたということですね。
クリニック側だけでなく、患者さん側にもメリットがあると考えています。例えば、新型コロナに感染してしまった場合、息苦しくて話すのがつらいという人も多くいらっしゃいます。その中で、何度も質問したり、電話をかけて状況を聞き取ったりするのは、クリニックだけでなく患者さんにとっても負担になります。
WEB問診の回答項目は増えてしまいますが、自宅など落ち着いた環境で、自分のペースで入力できるようになるので、WEB問診システムと『HER-SYS』を連携させることは、両者にとってメリットのある取り組みだと私どもは考えています。
質問内容もカスタマイズ可能に
――『SymView』で『HER-SYS』用の情報を得たい場合、どのような流れになるのでしょうか?
『HER-SYS』用の質問は、「発熱外来用」の問診に組み込んでいます。患者さんにどのような症状があるのかを聞きますが、その際に「発熱」という選択をされた場合に、「発熱外来用」の問診を行い、その中で『HER-SYS』用の情報も患者さんに答えていただきます。患者さん視点では、質問内容が変わったくらいで、従来の問診フローと大きな変化はありません。
入力していただいた情報は『SymView』上で確認でき、医師の所見や検査結果など、『HER-SYS』への報告で必要な情報も『SymView』から入力できます。この入力も選択式になっているので、入力負担を軽減することができます。データは『HER-SYS』用のフォーマットで生成されるので、『SymView』からデータをダウンロードし、『HER-SYS』に取り込むだけです。
――『SymView』を利用しているクリニックが今回の連携機能を使いたい場合、何か特別な対応が必要になりますか?
いえ、基本的にありません。もともと『SymView』をお使いであれば、これまでと同じ形でご利用いただけます。また、『SymView』自体も、自分で問診内容がカスタマイズできるような形でバージョンアップしているので、問診のひな型をお好みの形に変えていただくこともできます。
「既存の質問以外にもこんなことを聞いておきたい」という院長先生もいらっしゃるので、例えば発熱外来用のひな型をカスタマイズすることもできます。私どもでも要望に沿ってカスタマイズを請け負っているので、すでに導入されているクリニックさん、また導入を検討しているクリニックさんにもご相談いただきたいです。
メーカーとしても良い一歩になった『HER-SYS』との連携
――今後の展望をお聞かせください。
WEB問診システムと『HER-SYS』との連携は、医療の質を高めるという意味でも非常に有用なものですが、新型コロナの感染が収まっていくにつれて、その価値というのは薄れていくかもしれません。しかし、もし同じようなパンデミックが起こった場合は、同じ轍(てつ)を踏まないようにできますし、また別の形で今回のシステムが活用される可能性もあります。いずれにしても、医療における課題の一つに注目し、仕組みを変えるような取り組みができたことは、メーカーとしても良い一歩になったのではと感じています。
――最後に、これから開業を考えている医師にメッセージをお願いします。
皆さん、さまざまな事態を予測しつつ計画を立てて開業されますが、実際に開業してみると予想外のことばかりです。今回のコロナ禍についても、「こんなことになるなんて……」という声を先生方から多く伺いました。
医療を提供する中ではさまざまな課題が生じ、そのたびに計画の変更や方向転換が求められます。今回の『HER-SYS』との連携もそうですが、先生方が抱える課題を一緒になって解決するのがメーカーの仕事です。何か課題や困っていることがあれば、ぜひ我々のような「伴走者」に頼っていただきたいと思います。
――ありがとうございました。
WEB問診システム『SymView』は、『HER-SYS』との連携を実現したことで、医療機関の負担を大幅に削減することに成功しました。医療機関側だけでなく、患者さん側にもメリットのある機能なので、より質の高い医療を提供するためにも導入を検討してみてはいかがでしょうか。
WEB問診システム『SymView』
取材協力:『株式会社レイヤード』(旧:メディアコンテンツファクトリー)
特徴
提供形態
対応端末
機能
システム提携
診療科目
この記事は、2022年8月時点の情報を元に作成しています。