※この記事は2021年8月25日に行われたセミナーの模様を書き起こし、編集したものです。
クリニックを開業・運営していくうえで非常に重要な要素となる「集患」「増患」。
今回はそのテーマについて、新宿駅前クリニック院長、蓮池林太郎先生にお話を伺いました。前後編に分けてお届けいたします。
まずは、いかに多くの患者さんにとっての「かかりつけ医」になるのかについて、5つのステップに分けて解説いただきます。
オープニング
はい、よろしくお願いします。新宿駅前クリニック院長の蓮池林太郎です。今日はWeb集患増患セミナーオンラインセミナーですね。
まず私の自己紹介ですが、2006年に帝京大学医学部を卒業して、2009年に宿駅前クリニックを開設いたしました。 2011年に法人化。
私のクリニックの特徴としましては、皮膚科・内科・泌尿器科などの病気や症状を保険診療しておりまして、予約不要で夜19時までの診療となっています。
主に新宿駅周辺や西新宿のオフィス街にお勤めの方が、お昼休みや帰宅時などの隙間時間にご利用いただいている形です。
開業から現在までの状況
私が28歳のとき、新宿西口にあるビルの2階10坪の物件にて医師1名(蓮池先生ご自身)と医療事務1名、看護師はゼロで開業をしました。
これを見ている皆さんはもしかしたら「研修医が開業しちゃって……」と思われるかもしれないんですが、開業1年目が100人ぐらい患者さんが来て2年目200人、3年目300人、5年目で400人。そこからはフラットになっていますが、安定して来院していただいています。
競争は日々激化していてですね、あらゆる変化が毎日・毎年のようにありまして、「新宿」という場所が、日本有数の激戦区であることは間違いないと思います。
新型コロナウイルスの感染拡大以前では1日に新患が130~140人前後来ていまして、再診を含めると、 常勤医師が6名体制で1日500人前後の来院がありました。
現在はリモートワークなどもあって、患者さんは以前よりはいらっしゃらないんですが、それでも新たな来院(新患)が100人前後あって、トータルすると1日に300人前後の来院があります。
そんな激戦区・新宿で生き残れたのは、立地や評判の評判が良かったというわけではありません。
人々がパソコンやスマホでクリニックを探すようになったことに注目して、インターネットマーケティングなどの集患方法に注力し、時代の波に乗ったからだと思います。
これからの時代、クリニック同士の競争がますます激しくなっていくなかで、集患の重要性が増すのは間違いありません。
そこで本日は「かかりつけに選ばれる」までの5ステップを、Web集患・増患対策など開業医開業志望の先生や開業医が知っておくべきことを説明したいと思います。
かかりつけに選ばれるまでの5つのステップ
かかりつけ医になるまでには、認知、病院探し、比較検討、初診、かかりつけの5つの段階があるんです。
聞きなれないことも多いかもしれませんが、1つずつ説明していきたいと思います。
かかりつけまでのステップ1:認知
まずは “ネットに繋がる前” の話。「認知」についてです。
これいろんな定義があると思うんですけど、一般的には、
来院したことがない人に存在を知ってもらい、必要なとき(体調不良になったときなど)に思い出してもらえる(想起される)状態を指します。
たとえば「お腹痛いな」って思ったときに、「そういえば、あそこにクリニックがあったな」とか、 「あそこに内科あったな」と思い出してもらえるような状態ですね。
では「クリニックが認知される」ためにはどうするべきか?ですが、これは “たまたま” 前を通りかかった人に備え付け看板や外観を見てもらって、「そこにクリニックが存在すること」を覚えてもらう必要があるわけです。ここで重要なのは、「あそこクリニックあったけど、何科かわかんないな」と思われないようにすることです。
ちなみに看板にもいろいろ種類がありますが(駅看板・野立て看板など)、クリニックと離れた場所の看板ってのはなかなか覚えてもらえませんし、紐づけも難しいと思います。なので、備え付け看板ってのが非常に大事です。
また「認知されやすさ」は、クリニックのある階数によっても違ってきます。
認知されやすさを10段階に分けたとき、1階を10とすると、2階は3、3階以上は1と言われてるんです。
もちろんいろんな条件があるので、一概にこの数字が当てはまるとは言い切れないんですけど、「認知されやすさ」においては、クリニックは1階にすることが非常に大事だっていうことですね。
クリニック開業の「いい立地」とは?
「いい立地」について、私は3つの条件があると思います。
まず1つは、「需要が供給を上回る地域」です。これは非常に重要で、いくら患者さんがいたとしても、競合が多かったらどうしても分散しますからね。
次に、「競合が少ない・もしくは弱いところ」です。ホームページがなかったりとか、ホームページがあっても作りが良くなかったりとか、そういう地域を探してみるといいかもしれません。
あとはやはり「認知度が高い場所」ですね。これも重要で、「通りの人数×認知されやすさ」と定義してるんですけど、いくら人通りが多かったとしても、全く認知されないような場所だとダメなんです。
駅や地域によって競合の数にはバラつきがあるので、「この地域だと、この診療科を標榜しても患者さんは多くなさそう」とか、その逆もあります。地域や駅ごとに見ていくことが大事じゃないかと思いますね。
多くの開業医は、立地を妥協していると思うんですよね……。でも物件って自分の人生の中でも一番高い買い物だと思うんですよ。なんなら家を買うよりも重要だと思います。
だからこそ妥協しないで、ちゃんと勉強しておいた方がいいと思います。
私も(クリニックの)コンサルティングやってるんで、開業当初に苦戦するクリニックも見てきているんですが、共通点としてやっぱり「立地が悪い」というのはありますし。
やはり望ましいのは、将来的に患者様になりうる人が多く通る1階だと思います。具体的には、電車社会であれば、最寄り駅から徒歩3分以内の1階で人通りが多い場所や、スーパーの近くがいいと言われてますね。
ただ、ネット集患中心の診療科(精神科・産婦人科・泌尿器科・手術美容など)は例外で、建物の空中階でも成り立つと思います。 つまり、「いい立地」っていうのは、科によっても違うんですね。
かかりつけまでのステップ2:病院探し
病院を探すとき、昔はタウンページとか、チラシとか、家族や知人の紹介があったと思います。でも今は、スマホやパソコンでGoogle・Yahooなどの検索エンジンにキーワードを入れて病院を探します。もちろん、家族や知人の紹介ってのもゼロではありませんが。
検索するとき、GoogleとYahooどちらの方が多いのか?についてですが、これはGoogleです。7:3とかぐらいで、Googleが多いと言われてます。
地域やキーワード、科目にもよりますが、患者さんはたいていの場合いくつかのホームページを見て、足を運ぶクリニックを選びます。検索結果からいくつかの候補を挙げてから、比較検討のステップに進むんですね。
かかりつけまでのステップ3:比較検討
では「比較検討されたうえで選ばれるクリニック」ってどんなクリニックか?ですが、
人は同時に5個も10個も比較検討できないことが多いので、いろいろクリニックを見ても多くの場合はだいたい3個ぐらいに絞ります。もちろんすでに認知されていて、「あ、そういえばあそこにクリニックあったな」っていうものも含めてです。
大事なのは、その2つか3つの候補に選ばれること。そのためには、要素をわかりやすく掲載することが重要なんです。
患者さんが比較検討するときは、検索エンジンで「クリニック名+クチコミ」などで検索して、悪いクチコミがないか、どういうクリニックなのかを見ているわけです。そこで出てきた情報をもとに総合的に判断して、実際に次(来院)に繋がるということですね。
リアル・ネットどちらにしても、「クチコミ」に対してクリニック側からできることは少ないので、なかなかやっぱり思うようにはいかないわけです。だからこそ、病院探しの段階で選んでもらえるようなクリニックにすることが重要なんです。
番外編:グーグルが医師の診療態度を変える?
ちょっと少し話がずれるんですけど、「Googleが医師の診療態度に影響を与える」って話があります。
「患者様のクチコミ(良いものも悪いものも)が拡散されて比較検討に影響する」と言いましたが、 Googleはクチコミ(≒Googleユーザーの実際の声)を見せたがっているところがあります。だからこそ、悪いクチコミであっても、検索した患者さんの目につくようになるわけですね。
そこでクリニックはどうしたらいいかといろいろ考えるわけです。これは結構悩んでいる先生もいます。患者さんとちょっとトラブったりすると、「この患者さん、うちのクリニックの悪いクチコミ書かないかな……」と考えたりとか。
ただGoogleはあくまでも、「患者さん(Googleユーザー)にとっての “良い体験” を提供したい、という考えが根本にあるわけですね。
その結果、Google使ってよかった→もっと使われるようになる→Googleの価値向上及び収益の増加っていうのがあるので、点数が高いクリニック(≒Google的には「ユーザ―にとって良い経験を与えてくれる場所」)を上位表示させる現状があります。
かかりつけへのステップ4:初診
初診は、かかりつけの入り口となります。
受付→問診票記入→受付→待合室→医師による診察→看護師による処置→待合室→会計→調剤薬局の受け取りの一連の流れがありますが、「受付」が対応する場面っていうのは結構多いんですね。少なくても3回はあるので、受付や看護師の対応をマニュアル化することは大事です。
マニュアル通りにやっていれば、まずトラブルになることはないはずです。もちろんそこから逸脱して、お喋りとかしてると悪いクチコミがつくことはあると思いますが。
でも一番大事なのは、「体調悪くなったときに想起してもらえるのか」です。お腹痛いな……ってときに、「あの先生んとこ行ってみよう」とか「あのクリニック行ってみよう」と想起されることが大事です。
医師の診療はいくら大事だと言っても、結構「遺伝子で決まっている」と僕は思っていまして。やっぱり何十年も医者やってきて、診療スタイルとかってなかなか変えられませんよね。
無理して頑張りすぎると疲れちゃうっていうか、診療がいやになっちゃったりとかすることもありますし。マラソンと一緒で、一生懸命やることは大事ですけど、無理しすぎないってことも大事です。
※この記事の続きはこちらから
【WEB集患・増患施策】ネット集患の教科書 |クリニック経営を安定・成長させるには?
特徴
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対応業務
診療科目
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診療科目
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この記事は、2022年8月時点の情報を元に作成しています。
取材協力 医療法人社団SEC 理事長/新宿駅前クリニック 院長 | 蓮池 林太郎
2009年に新宿駅前クリニックを開設。現在は自院経営を通じて培ったネット集患の知見をもとに、クリニックの開業支援およびコンサルティングを実施。多数の書籍執筆やセミナー、メディア出演も行っている。著書に『競合と差がつく クリニックの経営戦略ーGoogleを活用した集患メソッド』(日本医療企画)、『患者に選ばれるクリニック: クリニック経営ガイドライン』(合同フォレスト)など。
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