患者から選ばれるクリニックになるためには、「患者満足度」を意識することが大事です。では、患者満足度はどうすれば上げることができるのでしょうか? 詳しくみていきましょう。
患者満足度、把握していますか?
「患者満足度」とは、言葉の通り、クリニックが提供する医療の質を患者目線で評価した結果です。すべての患者に満足度を確認することはできませんし、実際に全員に質問したとしても正直な答えが返ってくるとは限りません。しかし、いくつかの調査法によって得られる結果は、各クリニックの患者満足度の指標となり得ます。
患者満足度を調査する方法とは?
具体的にどんな方法があるかを紹介します。
「患者満足度調査」を外注する
アンケート項目の作成、実施、集計のサービスを利用する方法です。ただし、外注費用がそれなりにかかるのがネックです。
「診療予約システム」を利用してWEBアンケートを取る
診療予約システムのなかには、アンケート機能を備えているものもあります。自由回答欄を設けておけば、患者がどんなことを「改善してほしい」と思っているかをさりげなく聞くこともできますし、スマホでアンケートに回答できることから、患者にとっては負担が少なく、集計率も上がることが予想されます。
Googleの口コミをチェックする
口コミをチェックすれば、アンケートを取るまでもなく患者の温度感をある程度把握することができます。基本的に、「このクリニックに来院してすごくよかった」「二度とし利用したくないくらいイヤなクリニックだった」のいずれかの場合に患者は口コミを書きたくなるものなので、場合によってはチェックすることで落ち込むこともあるかもしれませんが、「改善のチャンス」と受け止めることで未来は大きく変えられます。
患者満足度が低いクリニックまたは医師の特徴
続いては、患者満足度が低いクリニックまたは医師の特徴についてみていきましょう。
医師が話を聞いてくれない、親身になってくれない
患者が不安に思っていることを打ち明けた結果、曖昧な返事をしたり、患者の考えを否定したりする医師は、患者から信頼されにくいでしょう。医師自身がそのつもりはなくても、「あの先生は全然話を聞いていない」と思われる可能性もあります。その場合、「相手の目を見て話を聞く」「身体ごと患者のほうを向く」「反論するにしても、相手の言うことにも理解を示す」などを心がけるといいでしょう。
検査や治療に関しての説明がいい加減
「とりあえず検査しましょう」と詳しい説明もなく検査室へ回されたり、患者の同意なく治療内容を決められたりすると、患者は当然不安な気持ちを抱きます。
看護師や医療事務の態度が悪い
Googleのネガティブな口コミとしてありがちなのが、「看護師の態度が悪い」「受付の態度が悪い」です。具体的には、「言葉遣いが悪い」「冷たい印象を受けた」「私語が多かった」などが大きな理由である場合が多いので、スタッフ教育を徹底することが望ましいでしょう。
スタッフ同士でコミュニケーションがとれていない
「受付で一度説明したのに診察でまた同じことを聞かれる」「看護師が自分の通院理由を把握していない」ということに対してジレンマを感じる患者は相当数います。患者としては、「何度も同じことを説明しなくても、カルテなどで情報を共有しておいてくれればいいのに」と思ってしまうのです。
清潔感がない、スタッフがだらしない
掃除が行き届いていないクリニックは言語道断。なかには、「建物が古くて雨の日などにニオイがこもる」などの要因がネガティブな印象を与えていることもあるでしょう。その場合、掃除のプロに相談したり芳香剤を利用してみたりすることが一手。また、スタッフの制服の着方がだらしないことも、「清潔感がない」ととらえられることがあります。
待ち時間が長い
「予約していたのに1時間待たされた」「自分より後に来院した人が先に呼ばれた」などは、「待ち時間が長い」という不満をさらに大きくしてしまいます。予約システムなどの導入によって実際の待ち時間を短くすることや、患者の体感待ち時間を減らすために工夫を凝らすことが望ましいでしょう。
電話がつながらない
問い合わせしたいのに電話がつながらないとなると、患者は大きなストレスを感じます。しかし、インフルエンザシーズンや花粉症シーズンなど、診療科によっては電話回線がパンクしがちなこともあるものです。
患者満足度を上げるために有効な取り組みは?
患者満足度を上げるためにはどんな取り組みが有効なのでしょうか? 早速紹介していきます。
医師が親身になってくれる
患者の話を聞く態度を改めることで、患者満足度はうんと向上します。「実際のところきちんと聞いているけど、聞いていると思ってもらえない」のは論外。「相槌を打つ」「“それは辛かったですね”など相手を思いやる言葉を返す」などを適宜挟むだけでも、患者が抱く印象は変わってきます。
検査や治療に関しての説明が丁寧
どんな治療をすることが望ましいのか、治療に関してどんな選択肢があるのかなどを丁寧に説明してくれる医師なら、患者は安心することができます。万が一、検査の結果が思わしくなかった場合でも、患者はできるだけ詳しく説明を聞きたいと思っています。患者は、そのうえで自分がどうしたいかを考え、相談に乗ってほしいと考えていることをお忘れなく!
スタッフ教育を徹底する
看護師や受付事務に対するネガティブな口コミを改善する方法としては、スタッフ教育を徹底することが一番重要です。「挨拶をきちんとする」「笑顔で応対する」「私語を慎む」などはもちろん、患者が困っていることを察知したときには自分から声かけをすることなども重要です。
スタッフ全員で患者に関する情報を共有する
電子カルテを導入するなどして、患者の情報をスタッフ全員で共有することは大事です。それによって、患者が何度も同じ説明をする必要がなくなります。また、たとえば「キレやすい」などの問題行動がみられる患者へのアラートなども共有しておけば、余計なトラブルに見舞われる確率も下げることができるので、周りの患者にも被害が及びにくいでしょう。
清掃業者と契約する、リフォームを検討する
掃除していても「清潔感が感じられない」などの口コミが入るようなら、プロに掃除を頼んでみるのも一手。また、年季の入った建物であれば、場合によってはリフォームを検討したほうがいい場合も。特に、水周りがキレイであれば患者満足度が上がりやすいので、トイレだけでもリニューアルするといいかもしれません。
予約システムを導入する
待ち時間が長いことは患者にとって大きな不満となりやすいです。「予約システムを導入する」「予約受付日時を分散させる」などして、できるだけ待ち時間を短縮させるよう努めましょう。また、患者が「待ち疲れた」と感じにくいよう、TVや雑誌などの暇つぶしできるものを導入したり、患者が自身のスマホで課金を気にせずネットサーフィンを楽しめるようwifiを導入したりするのも一手です。
自動応答電話を導入する
繁忙期に電話がつながりにくいことも、患者満足度を下げる要因となりえます。自動応答電話を導入して、ありがちな問い合わせに対しては自動で回答を流すようにして、必要最低限の問い合わせに対応することで、電話応対以外の業務が妨害されないため、院内にいる患者にもしっかりと目を配ることができます。
患者満足度を上げるために使えるツール
続いては、患者満足度を上げるために使えるツールを紹介していきます。
WEB問診
2018年頃からクラウド型WEB問診システムの市場が拡大しています。患者自身のスマホを利用して、来院前に自宅や職場から問診を入力してもらい、医療機関側は事前に詳細な症状を確認してから診察をおこなうことができるというシステムです。
【なぜ患者満足度向上につながるのか?】
①待ち時間の短縮につながる
まず、待合室で問診票を記入してもらう必要がなく、電子カルテと連携することで患者の問診結果を電子カルテに取り込むことができるため、診察までの時間を短縮することができます。また、紙の問診票と違って、主訴に応じてWEB問診システムが質問を深堀りしてくれるので、看護師による予備問診の時間も短縮することができます。
②電子カルテ入力や問診の手間が削減される分、患者説明に時間をとることができる
医師は診察開始前に詳細な症状を確認できるため、診察室での問診や電子カルテ入力の手間を省略化することができます。実は、多くの患者が医師に不満に感じる点は共通しており、医師がパソコンばかりを見て、説明する際にも自分の方を向かないということです。電子カルテの入力時間を短縮できる分、患者を見て説明することができるようになります。
③事前トリアージによる感染対策およびオンライン診療や電話診療の問診に利用可
患者の来院前に詳細な症状が把握できるため、発熱等の感染リスクがある場合には、事前に電話連絡をして来院時間を指定したり、来院せずに保健所への相談を促したりという対応が可能です。ほかの患者やスタッフの感染対策につながります。あわせて、オンライン診療や電話診療で来院しない患者に対しても、WEB問診なら自宅で入力してもらえます。
ホームページ
今やホームページをもつことが当たり前の時代となっていますが、コロナ以降、その価値が改めて見直されてきています。掲載する情報次第ではホームページも患者満足度に貢献できる診療支援システムだといえます。
【なぜ患者満足度向上につながるのか?】
①待ち時間を開示することで不満を縮小できる
繁忙期に、「今日は診療しているのか」「待合室は混んでいるか」と問い合わせする人が多いと、受付スタッフの手が回らなくなることも。しかし、診療をしていることや、混雑しやすい時間帯等をあらかじめホームページに掲載しておくことで、電話がつながりにくいという事態を回避できるため、患者の不満は軽減されます。
②患者の期待値を上げないことも重要
自分の症状はきっと診てもらえるだろうと思って来院したのに、医師の専門外で診てもらえなかったという場合、期待した分、不満は大きくなります。診療内容や医師の専門を明記しておくことで、できること/できないことの線引きをすることも重要です。特に医師の診療や治療に対する考え方を記載しておくとよいでしょう。
③感染対策の取り組みについてPRする
前述の一般消費者アンケートにもあったとおり、「どのような感染対策をおこなっているのか」を事前に知りたいと思う患者は多くいます。待合室の椅子の配置の工夫や予約できる人数の調整、発熱外来は別に設けていることなど、どんな些細なことでも発信しておくことで患者の安心感につながり、来院の動機づけになります。
患者アクセスツール
まだ聞き慣れない言葉ですが、「患者アクセスツール」という製品カテゴリが生まれつつあります。患者アクセスツールとは、ビデオ通話システム、電話、メール、SNS、LINE等の多様化するコミュニケーション手段を一元管理するシステムです。
昨今、オンライン診療を導入する医療機関は非常に多いものの、そのシステムを利用することの難しさを痛感している医師もまた多くいます。多様化する患者アクセスに対応していくことは必要なことではありますが、スタッフの手間が増えてしまうと、一人ひとりの患者対応に割ける時間は減ってしまうため、結局のところは患者満足度にはつながりません。
患者アクセスツールは、将来的には、GoogleMeetやZoomといったビデオ通話システム、WEB電話(ブラウザから発信できる電話システム)、メール、SNS、LINE等、私たちが普段よく使うツールをまとめて管理できるようになるといわれています。患者が日常生活で使い慣れているツールを医療現場でも活用することで、患者側への説明の手間が省けます。また、WEB問診や決済等とも連携することで、多様化する診療スタイルに手間なく対応できるようになると期待されています。
まとめ
患者アクセスツールやWEB問診システムはハードルが高いと感じる人も、電子カルテの導入であれば比較的気楽に取り組めるのではないでしょうか? 患者満足度向上だけでなく、業務の効率化や紙カルテの保管スペース削減、外注した検査結果の取り込みなどいいことづくめなので、まだ導入していないクリニックはぜひ検討してみてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年8月時点の情報を元に作成しています。