2022年10月13日(木)、株式会社リード エグジビション ジャパンが開催する、第3回クリニックEXPO 東京にて、SNSを活用した、クリニックの開業・経営についてのセミナーが行われました。
当セミナーでお話しされた、MM先生、よいこはこいよ先生は、約1,700名(2022年10月現在)の開業医/開業準備医師が参加するオンラインサロン「ドクターズチャート」を主宰しています。
さらにTwitterをはじめとするSNSを活用し、日々開業・経営に関する情報発信を行っていることから、これからの開業、クリニック経営に役立つSNS活用方法等を、実体験を元にお話しいただけるとの解釈のもと、当セミナーの登壇に至りました。
本記事は、講演の第二部の要点である、「ドクターズチャート」で具体的に話されているテーマ、開業医個人としてSNSを活用するメリット、クリニックとして患者さんと接点を持つためのSNS運用法などをまとめています。
<セミナー概要>
・日時:2022年10月13日(木)12:30〜13:30
・会場:千葉県:幕張メッセ(第3回 クリニックEXPO[東京]セミナーにて)
・費用:無料
・プログラム:『 日本最大の開業医オンラインサロンの仕掛人が語る、SNSを使った開業・経営戦略 』
・登壇者:開業医/開業準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」主催 MM
開業医/開業準備医師オンラインサロン「ドクターズチャート」主催 よいこはこいよ
株式会社Donuts 社長室長/CLIUS医療事業部 部長/ジョブカン新規担当 林 志紋
なお今回の特別講演は、MM先生、よいこはこいよ先生が初めてオフラインで登場する貴重な機会となりました。当日はお面をつけて登壇しています。
1)「ドクターズチャート」でよく話されている 新規開業、既存開業の抱える課題
- 林
- 「ドクターズチャート」でよく話題に挙がるテーマをいくつか教えてください。
- よいこはこいよ
(以下、よいこ)先生 - 我々の「ドクターズチャート」ではあらゆることが話されていて、労務、コロナなどみなさんが想像できる話題ももちろん多いです。その中で最近盛り上がっているのがミニマム開業。
これまでの開業であれば機器をいくつも導入し、駐車場も整備してと大掛かりなケースも多かったのですが、昨今、診療用のデスクはひとつ、受付スタッフが0名もしくは1名ほどのクリニックが出てきていますね。
- 林
- なぜそういった開業が可能になってきたのでしょう?
- よいこ先生
- スピード感の大事さや、保険診療における将来性への不安もあると思います。新型コロナウイルス感染症が流行して以来、時間をかけて10年、15年単位で経営を見ていくよりも、短期的に見る必要が出てきた。
- MM先生
- ネットの普及や在宅医療(在宅診療)の進化もありそうですよね。これまではチラシや電柱広告で近隣の方にしかアピールできなかったところが、ネットでも集客ができるようになった。在宅であればクリニックとしての設備はかなり削減できますし。
- よいこ先生
- こういったミニマム開業は昔からあったものの、相談する場は特に少なかったと思うんです。
「ドクターズチャート」は1,700名ほどの会員がいますが、ミニマム開業のスレッドには35名ほどが参加しています。既にミニマム開業をしている方の具体的なノウハウも聞けますし、クリニックを開業しつつ、在宅でミニマムを検討している人もいるのでさまざまです。
スタッフマネジメント
- よいこ先生
- そのほか、スタッフの採用やマネジメントについても「ドクターズチャート」ではかなり盛り上がっています。クリニックを開業する際、もちろん医師のみなさんは医療のプロではありますが、企業や組織のリーダーとしては全くの初心者ですので、最初につまずくんです。
求人についても「折込チラシを活用したものの応募がこない」と話す人もいれば、WEB求人の文言を相談する人も。こないだは「院長の写真を載せた方がいいのか」という議論がありましたね。
- 林
- 実際、WEB求人では院長の写真を載せた方がいいんですか?
- よいこ先生
- サロン内では「載せた方がいい」という話に現状なっていますね。やはり顔が見えると「こういう人と働くんだな」というイメージが湧きやすいですし、信頼性も生まれると思います。
このように、自分ひとりでは気づきにくい視点を持ち寄って、みなさんでカバーし合っていますね。
- 林
- かつ、開業医は孤独との闘いとも言われていますが。その辺もドクターズチャートで話されているのでしょうか?
- MM先生
- 話しています。周囲に人事労務の悩みを話す機会はありませんから、その孤独感は大きいですよね。スタッフがいるにしても、雇用者と被雇用者という関係もあって話しにくい。先輩医師に相談するにしても、しょっちゅう話せない。
それを「ドクターズチャート」で吐露できるだけでもだいぶ心が違います。他の先生が共感してくれると「みんな苦しんでいるならがんばろう」と私も思えますし。
- よいこ先生
- あと、孤独を払拭するには音声メディアとの掛け合わせが大事がかなと思っていて。我々の「ドクターズチャート」はSlackでのテキストコミュニケーションがメインですが、さらに音声SNSのClubhouseで月一の意見交換をしています。そこで労務やドクターの雇用などをテーマにすることもありますね。音声でのコミュニケーションでさらに孤独を癒している感覚です。
Googleの口コミついて
- 林
- 開業医のみなさんは、Googleの口コミへの対応に悩まれることがあるかと思いますが「ドクターズチャート」でもそういった議論がされているのでしょうか?
- MM先生
- このテーマは注目度が一定数ありますね。例えば、謂れのない口コミに対して「返信するべきか」といった相談が寄せられることもあります。スレッドには、「返信した方がクリニックへの信用が上がる」との意見や、「自分だったら返信しない」と書く方もおり、さまざまです。
- よいこ先生
- 星1がつけられるとすごく傷つくんですよね。私も謂れのないコメントで悩んだことがあります。
でも経験の識者に「私だったらこう書きます」とコメントをもらうことで救われたり。以前、「感情には論理で」「主観には客観視を交えて返信しましょう」といただいたことは印象に残っています。
また、口コミは誰に対して書くのかというと、相手だけでなく、これから見る人に対しても書くようなイメージで書くといい、とのアドバイスも覚えています。星1がついて落ち込んだ時も、それを見て救われるような気持ちになりましたね。
2)SNSの情報収集と発信方法
- 林
- お二人はSNSをかなり活用されていますが、今後開業される先生方はどのようなアカウントをフォローすればいいのでしょうか?
- よいこ先生
- SNSには主に2つ役割があると思っていて、ひとつは「情報を探す」、もうひとつは「擬似体験」だと思います。
例えばTwitterのアカウントの中には「来年開業します」などと明記して、開業日に向けて日記のように状況を書いている方もいるんですね。だから、ご自身がこれから経験するであろうことを「今」体験している先生のフォローをおすすめしたいです。フォロワーが多い少ないではなく、リアルを話している方ですね。
SNSが非常によくできているのは、Twitterだとその時々のトピックで注目されているツイートや、自分と関連性が高いコンテンツが表示される点。キーワード検索では出てこない方に辿り着くこともできます。
- MM先生
- 私としては、21時〜23時ぐらいに特に書き込みが盛り上がる印象があるので、その頃Twitterや「ドクターズチャート」に少し張り付いて見ることがありますね。
自分が興味を持った方や、境遇が近しい方をフォローしてとりあえずゆるくつながっておく。そして困った時に周囲に聞いてみるといいのではないでしょうか。
- 林
- 本日の講演では、医師のみなさまと関係する企業さんも多く参加されていると思うのですが、企業としてのSNSの活用方法についてもアドバイスをください。
- よいこ先生
- 先生方はもう広告に慣れていますよね。だからプロダクトそのものというよりも、それを作るにあたっての経過や想いをつぶやく方法もひとつだと思います。
- MM先生
- たしかに企業アカウントが営業っぽいことを書くと煙たがられてしまう。医師が求める情報提供をSNS上で続けると、ネットでの信頼が積み上がりますよね。そうすると企業への見方も変わるのではないかなと。
税理士さんだったら、法人化について解説するようなツイートをするとか。
- 林
- 先生方の課題に対する有益な情報をお伝えしたり、その上で「当社だったらこう解決できますよ」と提案するような内容だと響き方が変わるということですね。
- よいこ先生
- そうですね。先生方がどこに課題を持っているか把握したうえで、そこへのアドバイスができるとよさそうです。
「これに困った時、この企業に頼めば解決してくれる」と分かるようになるのがベストだと思います。
3)患者向けのSNSの使い方、成功事例
- 林
- 次は、クリニックとしてのSNS活用法についてお話しできればと思います。よいこ先生は、患者さん向けの施策を行っているとのことですが、内容を詳しく教えていただけますか?
- よいこ先生
- はい。私の経験上、患者さんにピンポイントに情報をお伝えするにはLINE公式アカウントが役立つと思っています。
2020年の上旬、コロナが流行り始めた頃に、コロナワクチンの問い合わせで当院の電話が全く通じなくなってしまったんですね。そこで困って、LINE公式を始め「ワクチンに関する情報はLINEから流すので登録をお願いします」と案内し始めました。
そこで気づいたのは「LINE公式に誘導するには、患者さんにメリットがある必要がある」こと。コロナワクチンの需要はかなり高かったので1、2カ月で1500人ほどの友だち登録があり、そこまでは比較的スムーズでした。
でも、クリニックからの広告めいたメッセージは嫌がられる傾向にあり、すぐブロックされてしまうんですね。いろんな先生に聞くと、ブロック率は15〜20%ぐらいだと。
そこで私は広告色を出さずに、患者さんの日常の延長線上として役立つ情報発信を始めました。「メタボになったのですが、どうすればいいですか?」「物忘れがひどくなってきた祖母は、どこに診せればいい?」といった、診察で聞かれたことに回答するようなコラムを週1、2回定期配信していきました。
そのおかげでブロック率は3〜5%を推移しています。
- 林
- 企業から医師のみなさまに向けた情報発信と同じで、患者さんに「自由診療始めました」「メニュー増やしました」と伝えるのではなく、患者さんが知りたいことに真摯に向き合うと。
- よいこ先生
- 内科に関してはそこに落ち着くかなと思います。ただ、いざという時にはWEB予約、WEB問診を始めましたといったアナウンスはします。長期で付き合っていく方も多いので、20回に1回ぐらいの頻度で、コツコツ発信していますね。
逆に自由診療であればキャンペーンなどもアナウンスできますので、長期というよりは短期で訴求する機会が増えてもいいのではないかと思います。
- 林
- それでは最後に、開業される予定の先生方へのアドバイスなどをお願いいたします。
- MM先生
- SNSは黎明期といいますか、成熟しきっていないと思うんです。だから情報を吟味する、リテラシーを上げる必要もある。リアルでのコミュニケーションも絡めながら、SNSのスピード感のある交流を活用していただければと思います。
- よいこ先生
- これから開業を考えている先生にとって、SNSは擬似体験できるところが本当に貴重で。これまでは先輩方からの話、時には少し盛った話を聞くこともあったかと思うのですが(笑)
今はリアルがたくさん見られるようになり、開業前のシミュレーションもしやすくなったと思います。もちろん、MM先生の言うようにSNSは黎明期ですので、誤った情報や、慎重に考えるべき情報もあります。
開業準備が具体的になった際に、開業をサポートしてくださる業者の方からの情報と合わせて精度を高めて、後悔のない開業をしていただければと思います。
とにかくSNSを使わない選択肢は、この時代もはや「ない」のかなと。
- 林
- ありがとうございました。
この記事は、2022年10月時点の情報を元に作成しています。
取材協力 医療法人理事長・「ドクターズチャート」主宰者 MM
医療法人理事長であり、開業医・開業予定医のためのオンラインサロン「ドクターズチャート」の主宰者。開業医として10年以上活躍してきた経験をもとにTwitterや、音声プラットフォームであるVoicyなどで、クリニックの開業・運営に関する情報を発信。開院手続きの落とし穴など、経験者ならではのリアルさが評判となり、Twitterフォロワーは14,000人超と開業医としてトップレベルに。
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取材協力 開業医・「ドクターズチャート」主宰者 よいこはこいよ
開業医・開業予定医のためのオンラインサロン「ドクターズチャート」の主宰者。開業医として、Twitterでは「#開業医サブノート」にて開業お役立ち情報、スタッフ採用・教育のベストプラクティス、その他診療を快適にするアイテム紹介など幅広い情報を積極的に共有。自身の日々の悩みや気づきも含めた分かりやすい情報、そして親しみやすいつぶやきが同業者を中心に話題となっている。
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取材協力 株式会社Donuts 医療事業部 | 林 シモン
クラウド型電子カルテ『CLIUS』を提供する医療事業部、社長室・室長を務める。そのほか、バックオフィス業務を効率化するクラウドサービス群「ジョブカン」の新規事業立ち上げなどを担当。
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執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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