
クリニックを運営する中で時間を取られるのがレセプトのチェック作業です。クリニックの売上に関わる重要な作業ですが、最後は医師が確認しなければなりませんので、スタッフだけではなく医師・院長も携わらなければなりません。
とはいえ、正確なレセプトを作成するのは面倒なもので、できれば省力化したいところ。
レセプトがきちんと書かれているかどうか一次点検を自動化してくれる業務システムがあります。今回は、全国1万8,000以上の医療機関様で使われている『Mighty Checker(マイティーチェッカー)』を開発・提供している『株式会社エーアイエス』を取材しました。
レセプトチェックの機械化が進行中! 基金側は9割をAIに任せるつもり
レセプト点検業務には、ツールなどを使っていない場合、とにかく人手が掛かります。月末に締めてからレセプト提出期限の毎月10日前後は残業も辞さず、とにかく人力で作業し、スタッフ、医師・院長も総出で社会保険診療報酬支払基金に提出するファイルを作成するという話も聞きます。
現在では紙のレセプトで請求するのではなく、電子的にファイルを送信しているのが95%に達していますので、レセプトの作成自体はコンピューターで行っているところがほとんどですが、レセプトのチェックは全部「人の目」による——というクリニックが多いのです。
しかし、レセプトの提出を受ける社会保険診療報酬支払基金は、AIを用い、コンピューターチェックを援用した方向にシフトすることを表明しています。さすがに全てを人力でチェックすることができなくなってきたからです。
『株式会社エーアイエス』に伺ったところ、レセプトチェック作業は「診療所・病院側」「基金側」の双方で省力化の方向で動いているとのこと。
今後、支払基金側では、9割コンピューターチェックになる!
社会保険診療報酬支払基金では2020年3月31日に「審査事務集約化計画工程表」を公開。すでに「9割コンピューターチェック」を目指して新しいシステムを稼働。2022年10月からは、全国一斉に審査事務が集約されています。
これによって支払基金側の審査は、コンピューターチェックが主流になり、2023年頃には目視チェックは10%程度になると想定されています。
この新システムでは現行同様、同一クリニックの当月のレセプトと直近6カ月分のレセプトを「縦覧点検」し、薬局側のレセプトと突き合わせた「突合点検」が行われています。この縦覧点検によって、例えば「4カ月に一回しか行ってはいけない検査を行っていないか」「8週間しか投薬してはいけない薬が期限を超えて投薬されている」といった点もさらにチェック強化されることになります。
また突合点検の結果、例えば「処方薬に対する適応病病名がなかった(不適応)」場合、調剤薬局からではなく、処方元の医療機関から減点されます。この場合、薬剤料はもちろん、調剤に関わる点数分も査定されることがあります。これは医療機関からすれば地味に痛手となる処理です。
医療機関側も機械チェックに備えねば!
このような基金側の動きに対して、返戻・査定を避けるため診療所・病院側も備えねばなりません。
例えば、1カ月に1,000枚のレセプトがあるとして6カ月分のレセプトとなると6,000枚。「当月 + 過去6カ月」分のレセプトを縦覧点検、また薬局との突合点検というのは、この人手不足の折、人力でチェックするのはおよそ不可能でしょう。
そのため、診療所・病院でも省力化のため、レセプトをチェックするシステムを導入したほうがいい——ということになります。
レセプトチェックシステムの利点とは?
レセプトチェックをシステムに任せることでクリニックにどのようなメリットがあるのか、『株式会社エーアイエス』の千葉慎吾執行役員に伺いました。
——レセプトチェックを機械化することでクリニックにはどのような恩恵が得られるのでしょうか。
先ほど手動での点検の例を挙げましたが、医療機関の仕事の中でもレセプト点検、レセプト業務というのは膨大な作業が必要になります。人手で、紙で、目で見て確認しなければならないため、作業に時間がかかります。通常業務に加え、短い期間にプラスアルファで、このレセプト作業をやらなければいけないということにより、残業が発生してしまうのが一般的です。
処置に対して、適応する病名が付いていないとか……ドクターがそのとき忙しくて付けてなかったコメントに対して後から付けなければならいなど、目視確認して修正する必要があります。これは大変面倒な作業です。
クリニックの課題としては、
という3点がありますが、私はよく先生方に「任せられるものは機械に任せましょう」と申し上げます。
機械ができることを無理に人手をかけて行う必要はありません。機械に任せて空いた時間を本当に大事なことに割くのがよいと思われます。
例えば、スタッフなら来院した患者さんの目を見て挨拶をする、ハキハキと受け答えをするといった対応です。これは機械にはできません。
また、先生方ならより診療の質を上げるといったことですね。レセプトチェックを機械に任せて省力化することで、よりクリニックの評価が上がる方向になっていただけたらと思っています。
レセプトチェックソフトを導入するきっかけとは?
——クリニックに導入するきっかけについて実際にはどのような動機が多いでしょうか?
業務効率を上げたいであるとか、レセプト業務の省力化でしょうか。今までレセプト業務に携わっていた熟練のスタッフが辞めたとか、産休に入ってしまったとかになると大変です。それで困って導入といったパターンもあります。
——レセプト業務はクリニックにとって売上に関わる作業なので重要ですが、手間がかかるのが難ですね。また昨今は人材不足という現実もあります。
はい。これまでは、ベテランの人がやっているとか、人手を使って3〜4人でやっているとかだったのですが、見る人によって精度がばらばらになりがちでした。
見つけられる人と見つけられない人がいますし、人が変わると急に返戻・査定が増えたといったことも起こります。しかし、こういうレセプト点検ソフトに一次点検をさせることによって、一定ラインのレベルまで引き上げられます。
システム側がアラートをかけたものを直すだけという形にすれば、100点は取れないかもしれないですけど、80、90点が取れるようになるのです。これも、まあ人材難への対応ということになるかもしれませんね。
——ありがとうございました。
以下では、レセプトチェックのシステムが実際にどのようなものなのかをご紹介します。
『MightyChecker Cloud(マイティーチェッカー クラウド)』の機能と特徴
『株式会社エーアイエス』の『MightyChecker(マイティーチェッカー)』はレセプトの一次点検を行うシステムです。『MightyCheckerマイティーチェッカー』ではクリニックで作成したレセプト電算ファイルをシステムに読み込ませるだけで、厚生労働省の規定に沿ったものになっているかどうかを自動でチェックしてくれます。
クリニックでは、その点検後のファイルでアラートのあった部分を修正し支払基金・国保連合会に提出する最終ファイルに仕上げればよいのです。
ほかのレセプトチェックシステムと異なり、『MightyChecker(マイティーチェッカー)』では、漏れやミスだけではなく、点数をアップできる可能性のある部分にもアラートが出ます。これは「算定支援機能」と呼ばれるものです。
通常のレセプト作業は、記載漏れがないかとか、病名漏れがないかなどを見つける作業ですが、「点数アップ」という視点はなかなか持てません。例えば、糖尿病や高血圧という病名なら、「特定疾患療養管理料」が加算できるかもしれません。『MightyCheckerマイティーチェッカー』ではこのような「もしかしたら加算可能な項目」のアラートをかけます。医師がチェックして利用できるのであれば加算を行えるというわけです。
また、レセプト点検システム『MightyCheckerマイティーチェッカー』には、クラウド型の『MightyChecker Cloud(マイティーチェッカー クラウド)』とオンプレ型の『Mighty Checker EX(マイティーチェッカー EX)』があります。
サービス提供元の『株式会社エーアイエス』によればオンプレ型の「EX」のほうが導入実績が多いとのこと(後述)。同社では、クラウド型は診療所向け、オンプレ型は入院もDPCもチェックできるので診療科目が複数ある病院向け、としています。
『MightyChecker(マイティーチェッカー)』の利用方法
『マイティーチェッカー』の利用方法は、クラウドの場合、以下のような流れになります。
1.クリニックで作成したレセプトの電算ファイルをアップロードする
2.システム側でファイルを点検し、点検結果が戻される
3.点検結果を修正
4.社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会にファイルを送付する
クラウド型とオンプレ型の違いとは?
『MightyChecker(マイティーチェッカー)』には、上記のとおりクラウド型とオンプレ型があります。
クラウド型では、システム自体がクラウドサーバー上にありますので、クリニックにはインターネットに接続可能な環境とパソコンがあればOKです。また、レセプトをチェックするための点検マスターは全て自動更新されるので、常に最新の状態で常に使えます。さらにほぼ全てのレセコンに対応可能で、クリニック側が特に注意する点もありません。ただし、クラウド型なのでインターネットに接続できなくなると使えなくなります。
対してオンプレ型では、システムをクリニック内に置きますので、何かの事故などでインターネットに接続できなくなったとしても使い続けることが可能です。ですので、患者数の多い規模の大きい病院・クリニックの場合には、万が一のことを考えてオンプレ型を導入するほうがいいかもしれません。
『株式会社エーアイエス』によれば現在はオンプレ型の方が導入実績が多いとのこと。
この理由について千葉執行役員に聞いたところ、オンプレ型のほうは「カスタマイズの自由度が高い」とのこと。クラウド型の場合にはシステムがクラウドサーバー上にあるので、あまりいじれなくなっており、その点ではクラウド型は診療所向きとのことでした。オンプレミス型ではサーバー自体が院内にあるので、そのクリニック・病院で完結しており、システムがカスタマイズされても問題がないわけです。
『MightyChecker Cloud(マイティーチェッカー クラウド)』の導入と準備
『MightyChecker Cloud(マイティーチェッカー クラウド)』を使用するにはインターネットに接続できる環境とパソコンがあればOKです。レセプト業務を電子的に行っているクリニックであれば、この両方は整っているはずですから、特にほかに用意するものはありません。
また、利用する際のルール設定なども特に必要ありません。千葉執行役員によれば「とりあえず使い始めてみると簡単に使える」のだそうです。
実際、クラウドでは最長2カ月のお試し期間が設けられていますが、試用期間が終わってもそのまま使い続けるクリニックが98%に達するそうです。つまり、特に説明もなく使い始められるシステムだということです。
オンプレ型の場合には、院内に設置するサーバーなどの機器が必要ですので、こちらのURLから問い合わせが必要です。
『マイティーチェッカー』の利用料金
『マイティーチェッカー クラウド』の場合には、以下のような利用料金になります。
月額基本料金:4,000円[税別]
外来レセプト:10円/枚
入院レセプト:30円/枚
何枚のレセプトを点検するかの従量課金制になっています。例えば、800枚の外来レセプトを点検した場合には「4,000円 + 10円 × 800枚 = 1万2,000円」になりますが、月額利用料は上限「9,000円」[税別]と設定されていますので、「9,000円」で済みます。
オンプレ型の場合の導入費用については要問い合わせです。
レセプト業務については人力で対応しているクリニックもまだ多いですが、支払基金は上記のとおりAIを用いて、コンピューターチェックで返戻をしてくるので、その対策が必要です。やはり、クリニック側でも点検ソフトを導入し、スタッフや先生方が点検ソフトがチェックしたものを確認するほうが、全てのレセプトをチェックするよりも、人力が削減できて助かります。
特にこれから開業するクリニックの場合、レセプト業務に長けた人という募集をかけても、この人手不足の折、なかなか良い人材を確保するのは難しいでしょう。また、良い人材が得られたとしてもその人に任せきりというのはよくありません。開院時からこういったレセプトチェックソフトの利用を考えてみてはいかがでしょうか。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2022年12月時点の情報を元に作成しています。