パルスオキシメーターが誕生して約40年、近年では新型コロナウイルスの影響もあってか個人家庭でも使用されるようになりました。
SpO2というバイタルは酸素循環において非常に重要なパラメーターであり、且つ容易に測定できることからクリニックでは必要不可欠な医療機器の一つとなっています。
この記事では、クリニックにとって、どのようなパルスオキシメーターを選ぶべきなのか、判断基準を解説したいと思います。
クリニックに導入する目的とメリット
冒頭にも述べたように、SpO2は非常に重要なバイタルの一つです。パルスオキシメーターは、その重要なバイタルであるSpO2を容易に測定できる医療機器でありながら、生体情報モニタ―のような高価な医療機器を用意する必要がなくなります。
また、パルスオキシメーターはCOPDや気管支喘息といった急性呼吸不全などの慢性疾患患者には必要不可欠な機器であり、クリニックに導入することで早期な治療方針の決定に役立ちます。新型コロナウイルスの影響でパルスオキシメーターを導入する家庭は増えてきておりますが、高齢な患者であるほど機器の扱いに慣れていないことからパルスオキシメーターを購入しているということは少なく、かかりつけ医であるクリニックにかかることも多いため、パルスオキシメーターを導入する目的となります。
診療科別の機種選定基準
現在、販売されているパルスオキシメーターは指先で測定するタイプの機種が多く見受けられます。その理由として、「小型」「測定が容易」「安価」というメリットがあるからです。しかし、これらのほとんどは大人用に作られた機種となります。
例えば、小児科を例に挙げると、上述したパルスオキシメーターを使用するには”子供の指には大きすぎて使用できない”ということになります。子供の指の大きさに合わせたプローブを備え付けているものやプローブのつけ外し(大人用/子供用)ができる機種でないと小児科では使えないでしょう。
また、子供の場合は「指先に機器を挟む」ことを怖がったり、大人に比べて落ち着きがないこともあり、指が動いてしまい測定できないことも考えられます。
そのようなことから、プローブと表示部が別々になっている機種や耳朶を挟む機種なども販売されています。
整形外科や皮膚科など、呼吸疾患の患者が少ない診療科においては患者の性質上、安価で簡易的なパルスオキシメーターで十分事足りるかと思います。パルスオキシメーターに費用を割くのではなく、他の経費に回していただいた方がよいかと思います。
その他、点滴時に測定するといったように、一定時間測定を続ける場合などはスタッフが患者から離れてもSpO2の低下が分るようにアラーム機能付きの機種をお勧めします。送信機などを利用して遠隔監視することもできますが、パルスオキシメーターという意味合いを考えると高額となり割に合わないので、クリニックではあまりお勧めしていません。
診療規模別の必要台数
基本的に、最低外来の数+1個はご用意していた方が無難かと思います。とりあえず、これだけあれば外来患者を待たせることはほとんどありませんし、感染の疑いがある患者に使用した場合でも+1個の部分でスムーズに診察をすることができると思います。
有床診療所や2階建て以上のクリニックの場合、各階に2個以上のご用意は必要かと思います。また、このほかに可能であればパルスオキシメーターは数個余分にご用意していただくべきだと私は考えております。理由としては”故障のリスクが高い機器だから”です。
パルスオキシメーターというもの自体が故障しやすいということではなく、小型、且つ持ち運びすることを前提とした機器であることから落下などの破損が非常に多いから、ということです。故障のリスクからは簡単に逃れることはできないので、余分に購入を検討されるとよいかと思います。
価格相場
今やインターネットでパルスオキシメーターが購入される時代となりました。安価なものでは数千円、高価なもので20万円ほど、と価格帯のレンジは広くなっています。
その背景として、新型コロナウイルスが流行したことによりパルスオキシメーターの医療機器認証が取得しやすくなったことから、これまで流通しなかった安価なパルスオキシメーターも堂々とインターネットで販売するようになったことが挙げられます。
決して、安価なパルスオキシメーターがダメ、というわけではありません。しかし、インターネットで購入するということは全て自己責任となりますので、その点の認識をお持ちいただければよいかと思います。
逆に、20万円程の高価なパルスオキシメーターとは、モニター型の機種が該当します。プローブの種類も数多く選択することができ、成人から新生児まで対応、アラーム機能はもちろん、データの保存記録まであるもので、生体情報モニタ―に近い機能を有しています。主に入院患者など長期間にわたってSpO2測定をする必要があるときにご用意していただくようになります。
保障について
多くの医療機器には無償保証期間というものが存在しており、主に購入から1年間は故意ではない故障に対して無償交換、無償修理などの対応ができます。
しかし、パルスオキシメーターの場合、一般的な指先測定タイプを例に取ると高くても3万円程度までで購入できることから消耗品としての位置づけをされている場合が多いです。
そのため、基本的に修理対応は行なわれず、買い替えという選択肢になります。
他の医療機器と違って、保守や点検といったことにもほとんどの機種が対応していないため、無償保証期間の年数が長い機種や防水機能などがついた故障しにくい機種を選定することをお勧めします。
安く購入できるタイミング(購入時期)、購入方法
パルスオキシメーターの場合、購入時期によって安くなるタイミングなどは存在しないと思っていただいた方がよいかと思います。
その理由は、先にも述べたようにパルスオキシメーターは消耗品としての位置づけをされているメーカーがほとんどであることから”交渉次第で安くなる”ということはあまりありません。
安く購入する方法として、他の医療機器購入の際に付属してもらったり、インターネットで安価な機種を購入する、といったことに限られると思います。
パルスオキシメーターの取り扱いメーカーと代表的な機種の特徴
新型コロナウイルスの影響もあり、現在は数多くのメーカーがパルスオキシメーターを製造販売しています。機能面、精度に優れた医療用のものから安価で簡易的に使用できる家庭向きのものまで、数十種類の中から選ぶ必要があります。そこで代表的なメーカーと機種に絞った上で特徴や機能面について解説します。
コニカミノルタ株式会社
パルスオキシメーターのパイオニアメーカー。
代表機種名 | PLUSOX-Neo |
特徴 | 指先に装着して簡単に測定ができる機種。末梢血流の指標であるPI値(Perfusion Index)を表示することができ、測定により適した指を確認することができる。薬剤付着による耐久性試験や10万回におよぶ開閉試験もクリアしており、小型でありながら優れた耐久性も兼ね備えている。 |
価格 | 約25,000円 |
日本光電工業株式会社
パルスオキシメーターの基本原理を発見した医療機器メーカー。成人から新生児まで幅広い世代で使用できるパルスオキシメーターや多くのプローブの種類を取り扱っている。
代表機種名 | WEC-7201 |
特徴 | 本体部とプローブが取り外せるタイプの機種。指先や足の甲、耳朶など、患者に応じて最適なプローブに付け替えることが可能。SpO2上下限設定によるアラーム機能やデータのメモリ機能、大型ディスプレイを搭載しており、1台で全ての患者に対応できる。 |
価格 | 約120,000円 |
ニプロ株式会社
主に透析関連製品の製造販売を行う国内メーカー。パルスオキシメーターはグローバル企業であるマシモ社製品を取り扱っています。
代表機種名 | マイティサット |
特徴 | 動脈血と静脈血の拍動を識別する独自技術が搭載されており、体動が多い患者や低灌流の患者に対しても測定が可能です。また、無線通信機能を有しており、専用アプリに送信して遠隔監視することも可能です。 |
価格 | 約40,000円 |
フクダコーリン株式会社
血圧測定機器の老舗メーカー。生体情報モニターや血圧脈波検査装置などを取り扱っている。
代表機種名 | ATP-01RF |
特徴 | 指先に装着するタイプの機種。成人用のサイズですが、別売りのアジャスターを取り付けることで小児にも使用が可能となります(※小児:体重10kg以上の指の細さを想定)。 |
価格 | 約30,000円 |
その他(インターネットによる購入が可能なものなど)
数千円から10,000円程度で数十種類もの機種が揃えられています。基本的には指先で測定するタイプの機種で、補償期間は1年の製品が多く見受けられます。とりあえず数を揃えるといった場合には、安価で済むようインターネットで購入されるケースも増えてきています。
まとめ
パルスオキシメーターは医療機関で使用するタイプのものから家庭用のタイプまで、様々な機種があります。
クリニックの場合、SpO2を計るためだけに多くの機能を有した高額なパルスオキシメーターを購入する必要性はあまりなく、来院される患者様に最適な機種を選ぶと良いでしょう。
上記でご紹介した情報を参考に自院に適した機種を選定いただける材料となりましたら幸いです。
特徴
対応業務
その他の業務
診療科目
特徴
医療機器製品クラス
医療機器種別
区分
診療科目
この記事は、2023年4月時点の情報を元に作成しています。
執筆 医療ライター ken
銀行にて融資/開業支援部門にて従事したのち、医療機器メーカーに転職。基幹病院からクリニック、動物病院まで幅広い営業顧客を有する。
現在は営業の傍ら開業支援業務も行い、多数の社内表彰を受賞。『顧客に寄り添った価値提案』をモットーにしています。
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