クリニック、病院の売却方法は? 

承継開業を検討したことがあればご存知かもしれませんが、近年、クリニック、病院の売却件数は増加傾向にあります。では、なぜ承継開業の物件は以前と比べて増えているのでしょうか? また、もし今後、自院を売却したいと思ったとき、どのように売却の手続きを進めればいいのでしょうか? 詳しく解説していきます。

目次
  1. クリニック、病院の売買が増加している理由は?
    1. コロナ感染症の流行
    2. 人材不足
    3. 後継者不足
  2. クリニック、病院の売却の流れ
    1. 1.税理士や会計士に相談する
    2. 2.資産状況を確認する
    3. 3.財務諸表や労務に関する資料を分析してデータにまとめる
    4. 4.仲介会社の選定
    5. 5.仲介会社と業務委託契約を締結する
    6. 6.顔合わせ・内見
    7. 7.条件をすり合わせる
    8. 8.基本合意書を締結する
    9. 9.デューデリジェンスをおこなう
    10. 10.最終契約を締結する
  3. 個人クリニックと法人との売却スキームの違いとは?
    1. 【個人クリニックの売却スキーム1】事業譲渡
    2. 【個人クリニックの売却スキーム2】居抜き(造作譲渡)
    3. 【医療法人の売却スキーム1】事業譲渡
    4. 【医療法人の売却スキーム2】合併
  4. クリニック、病院の売却に関する注意点
    1. 売却を進めて問題ないか家族で話し合う
    2. 売却目標時期を決める
    3. 「譲れないこと」を決める
    4. 買い手に求めることを決める
    5. お金の清算をするかしないかを考える
  5. クリニック、病院の売却にかかる税金は?
  6. 売却を検討している時点で仲介会社をチェックしよう

クリニック、病院の売買が増加している理由は?

まずは、クリニック、病院の売買が増加している理由を説明します。

コロナ感染症の流行

コロナ禍に受診を控える患者が増えたことから、経営が立ち行かなくなり、売却という決断をした医療機関は一定数存在します。

人材不足

医療業界の人材不足は問題視されて長いですが、今も解消されていません。特に著しいのが看護師不足。診療報酬改定によって、従来のように患者に対する看護師の数が「13:1」や「10:1」だと低い診療報酬になり、「7:1」がもっとも診療報酬をとれるとなったことから、看護師の総数は増えていても、ひとつの医療機関あたりの必要な数も増えたことで、採用競争が激化しているためです。また、少子高齢化によって在宅医療を必要とする人が増えているのに対して、医師が不足していることも大変深刻です。

参照:公益社団法人 日本看護協会 看護師、准看護師の就業者数

後継者不足

後継者不足は医療業界に限ったことではありませんが、経営者の高齢化によって後継者問題に悩んだ結果、売却に踏み切る医療機関は増えています。
ちなみに、厚生労働省の公表によると、クリニックに従事する医師(開設者・代表者含む)の平均年齢の推移は以下の通り。近年、上昇傾向にあることがわかります。

権利義務の種類 所得分類 課税方式・税率 税率
土地・建物・株式など 譲渡所得 他の所得と分けて課税(分離課税) ・所有期間5年超の土地建物:所得税15.315%、住民税5%
・所有期間5年以下の土地建物:所得税30.63%、住民税9%
・株式など:所得税15.315%、住民税5%
棚卸資産(医薬品・診療材料など) 事業所得 他の所得との合計額に対して課税(総合課税) 所得税:所得金額を7段階に区切り、各区切りに対して5%~45%(復興特別所得税との合計税率は所得税率×1.021)住民税:所得割10%+均等割5,000円
上記以外 事業所得 他の所得との合計額に対して課税(総合課税) 所得税:所得金額を7段階に区切り、各区切りに対して5%~45%(復興特別所得税との合計税率は所得税率×1.021)住民税:所得割10%+均等割5,000円

参照:厚生労働省 令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 PDF7枚目より一部抜粋

クリニック、病院の売却の流れ

続いては、クリニック、病院の売却の流れをみていきましょう。

1.税理士や会計士に相談する

税理士や会計士に相談します。税理士はM&Aの専門家でなくとも構いません。自院の経営状況を把握している顧問税理士であれば話がスムーズです。

2.資産状況を確認する

クリニック、病院の譲渡価格は、「譲渡対象資産」と「経営権」の評価額の総額で算定されます。また、資産だけでなく負債が伴う場合もあるので、数字としても現状を把握することが不可欠です。

3.財務諸表や労務に関する資料を分析してデータにまとめる

売却をスムーズに進めるためには、買い手から求められる書類やデータをそろえておく必要があります。財務や労務の現状に関しては、財務諸表や資料をもとに詳しいデータをまとめておきましょう。

4.仲介会社の選定

医療機関譲渡の仲介には資格が必要ではありません。そのため、信頼できる仲介者であるかどうかをきちんと見極めることが大切です。また、複数の仲介会社に依頼することは可能ですが、数が多いと混乱したり情報漏洩させてしまったりすることがあるので注意が必要です。

5.仲介会社と業務委託契約を締結する

仲介会社と業務委託契約締結して、売却先探しをスタートします。

6.顔合わせ・内見

買いたいという希望者が見付かったら、顔合わせおよび内見をおこないます。ただし、内見前に希望者の経歴などを確認した結果、自院の引き継ぎ手としてふさわしくないと判断したら、その時点で断ることもできます。

7.条件をすり合わせる

顔合わせ・内見が終わって、希望者の意思が変わらなかった場合、条件のすり合わせに移ります。金銭面の交渉に関しては、仲介会社にとりもってもらうといいでしょう。

8.基本合意書を締結する

交渉の結果、話がまとまれば、最終締結前に取引の基本的な内容を確認する「基本合意書」を交わします。

9.デューデリジェンスをおこなう

買い手側が実施する、譲渡対象のクリニック、病院の評価・リスク調査を「デューデリジェンス」もしくは「買収監査」といいます。デューデリジェンスに不足している資料があると、買い手側から資料提出を求められることがあります。

10.最終契約を締結する

デューデリジェンスを経て、売り手・買い手ともに合意となると、最終契約を締結します。

個人クリニックと法人との売却スキームの違いとは?

続いては、個人クリニック、法人ごとのスキームについて説明していきます。まず、個人クリニックの場合、以下の2パターンの売却方法があります。

【個人クリニックの売却スキーム1】事業譲渡

事業を構成する資産および権利義務の全部または一部を買い手に移転します。買い手が個人開業医ではなく医療法人の場合、資産を譲り受ける際には理事会による承認が必要となります。事業譲渡の対象となるものとしては、主に以下のようなものが挙げられますが、このうち、賃貸借契約や雇用契約、リース契約などは第三者の事前承認を必要とします

  • 自己所有の土地・建物
  • 借地権・借家権・店舗賃借権
  • スタッフの雇用契約
  • 医薬品や医療材料の卸売業者・納入業者との取引契約
  • 【個人クリニックの売却スキーム2】居抜き(造作譲渡)

    居抜き(造作譲渡)とは、賃貸物件で経営していた事業者が、自ら設置した内装や設備、機器などをまとめて、次の入居者に譲渡することを指します。居抜きをおこなうためには、貸主の承諾が必要です。賃貸物件を借りた場合、通常であれば、退去時に原状回復させることが不可欠ですが、居抜きだとその費用が不要となります。
    続いては医療法人の場合です。医療法人の場合、4パターンのスキームが考えられます。

    【医療法人の売却スキーム1】事業譲渡

    事業譲渡とは、複数のクリニックを経営する医療法人が、そのうちの一部のクリニックの資産・経営権を譲渡することです。

    【医療法人の売却スキーム2】合併

    2つの医療法人を統合して1つの法人にすることを「合併」といいます。このうち、一方が他方に吸収されることを「吸収合併」、2つの法人が新設法人として統合することを「新設合併」といいます。ただし、新設合併に関しては手続きが煩雑であるため、通常は吸収合併が選択されます。

    クリニック、病院の売却に関する注意点

    続いては、クリニック、病院の売却に関する注意点を説明します。

    売却を進めて問題ないか家族で話し合う

    医師本人に売却の意思があっても、家族の了承を得ることなく売却手続きを進めるとトラブルが発生する場合があります。たとえば、子どもが内心では継ぎたいと考えていたという可能性なども考えられるためです。

    売却目標時期を決める

    売却手続きを進める作業はスムーズにいかない場合もあります。また、条件が合う買い手がなかなか見つからない場合もあります。売却目標時期を決めていないと、ずるずると時間が経ってしまいます。

    「譲れないこと」を決める

    できるだけ早く売却したいのか価格は妥協したくないのか、スタッフを引き続き雇用してくれる買い手がいいのかなど、条件を細かく設定することが大切ですが、すべての条件が合致する買い手がスムーズに見つからない場合もあるので、「ここだけは譲れない」というポイントを決めておきましょう。

    買い手に求めることを決める

    自分が提示する条件で譲れないことを決めると同時に、買い手に求めることも決めることがとても大切です。なぜなら、基本的にこれまで通ってくれた患者がそのまま通い続けることになるので、患者にとって理想の医療機関であり続けてもらうことが大切だからです。

    お金の清算をするかしないかを考える

    未収金や未払金、役員借入金、役員貸付金がある場合、譲渡前に清算するかどうかを考えます。譲渡前に清算を済ませなければならないということはありませんが、済ませているかどうかで譲渡条件は変わってくるので、どちらがよいかをよく考えましょう。

    クリニック、病院の売却にかかる税金は?

    個人診療所の売却にあたっては、権利義務の譲渡で生じた所得に対して、所得税と住民税が課せられます。税率は以下の通りです。
    医療法人の場合は税率などが変わってきます。

    売却を検討している時点で仲介会社をチェックしよう

    今すぐ売却する意思はないものの、近い将来、売却したいと考えているなら、日ごろからネット上などの医療機関の売買情報をチェックしておくのがおすすめです。そのなかで、自分の理想の形で契約に至っているものを見つけたら、その契約を担当している仲介会社なら、前例を踏まえてよい条件で交渉をすすめてくれる可能性が高いと言えますよ。

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    ドクターが診療と経営の意思決定に集中できる環境の提供を目指すクリニックサポート。特徴としては、クリニック運営に必須なweb対策の知識と実績 、クリニック専用の組織開発ツール、提案だけでなく実際の業務遂行まで行い院長先生の時間を作る事を目的としています。case1.開業を考えているが絶対に失敗したくない。case2.診療が多忙過ぎてweb対策やマーケティングをやる時間がない。case3.スタッフの離職率をおさえて、人件費や研修費を無駄にしたくない。コンサルティング内容によって費用は異なりますのでまずはお問い合わせください。※対応エリア ・首都圏 ・愛知県 ・大阪府 ・兵庫県 (その他場合は都度ご相談)

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