「医療DX」を簡単に説明すると、医療現場のデジタル化を進め、医療現場全体のデータの共有を可能にしたり、余計にかかっている手間をなくして人材不足や長時間労働の解決に一役買ったり、またそれらに追って、患者さんにとってもより良い医療を届けることを指します。
この目標を実現するために、医療DX推進の動きとしては、
- オンライン資格確認(マイナポータル活用)
- 電子カルテ情報の標準化等
- 診療報酬改定DX
の、3つの大きな軸があります。以下ではそれぞれの詳細について、クリニックがすべき対応も併せて解説します。
1.オンライン資格確認(マイナポータル活用)
2021年10月に本格運用がスタートした「オンライン資格確認」。これを行うことによって、
- 受付業務の手間削減
- 資格過誤によるレセプト返戻の作業削減
- 患者の医療情報の入手による正確な医療の提供
などのメリットが期待されています。
記事制作時点の厚労省の最新情報では、顔認証機能付きカードリーダーの運用を開始している全国のクリニックの割合は74.8%となっているものの、申込を終えているクリニックは91.4%以上となっています(※この差については、カードリーダーベンダーへの申込が殺到したことなどによる導入の遅れなども影響しているようです)。
参照: オンライン資格確認の都道府県別導入状況について(2023年7月16日時点)|厚生労働省
現状(記事作成時 2023年7月時点)はまだエラーや個人情報の紐づけの不十分さなどがニュースになっていますが、これがしっかりと実現できると、クリニックをはじめとした医療現場の負担は少なくなります。
オンライン資格確認は、令和5年4月から原則義務化となったため、やむを得ない事情で導入延期を申請している場合を除き、医療機関側としては、既に対応している必要があります。
令和5年3月末までに導入した医療機関の補助金の申請期限が9月30日までなので、期限内に申請するようにしてください。
参考: 第1回医療DX推進本部幹事会 議事次第/「全国医療情報プラットフォーム」(将来像)
2.電子カルテ情報の標準化等
現在は様々な電子カルテがあるものの、それぞれのベンダーごとに規格は統一されておらず、共有も容易ではありません。
これだと、医療DXで目指すところである「医療機関等の業務効率化」や「医療情報の二次利用の環境整備」が進まないため、厚生労働省の主導によって「電子カルテ情報を共有する(※患者さんの同意の元で)」という動きが起こっています。
具体的には、あらゆる電子カルテに、厚生労働省が指定する標準規格であるHL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resourc)規格に3文書6情報
3文書
- 診療情報提供書
- 退院時サマリー
- 健診結果報告書
6情報
- 傷病名
- アレルギー情報
- 感染症情報
- 薬剤禁忌情報
- 検査情報(救急、生活習慣病)
- 処方情報入出力
ができる仕組みづくりを推進しています。
それにより、各ベンダーごとの仕様に関わらずデータのやり取りが可能になり、医療機関をまたいでの情報共有も容易になります。
それにより、医科、歯科、訪問看護業者などを問わずにスムーズな情報共有も進み、地域の患者さんにとってもより良い医療を届けられるというものです。
電子カルテを標準化するメリットとしては他にも、システム導入・移行がしやすくなることがあります。コスト削減や業務負担の軽減も期待できるため、煩雑なシステムの接続・連携に頭を悩ませているクリニックにとっては朗報になるでしょう。
ただ、クリニックによっては、現在使用している電子カルテが標準規格のHL7 FHIRに対応していないことや対応していても、3文書6情報を含んでいないことがあります。この場合は電子カルテの切り替えが今後必須となりますので、まずは現在使用している電子カルテのベンダーに確認したうえで、今後の動向を伺いましょう。
参考: 第1回医療DX推進本部幹事会 議事次第/電子カルテ情報の標準化
3.診療報酬改定DX
これまでは各ベンダーでは、診療報酬の改定があった際に、電子カルテやレセコンに改定されたデータを短期間で反映させる必要があり、そのたびに膨大な時間と人員を使用していました。
この手間や時間、かかる費用などの削減を目的としているのが、この「診療報酬DX」です。
具体的には、「共通算定モジュール」を各ベンダーに導入することによって、診療報酬のたびにかかっていたデータの反映などの作業負担を大幅に軽減しよう、という取り組みです。
ベンダーがこのモジュールを導入すれば、もし仮に改定データが不備にあった場合でも、モジュールを更新するだけで素早く修正できるため、ミスが減少し、医療現場への影響を抑えることができるなどのメリットが考えられます。
参考: 第1回医療DX推進本部幹事会 議事次第/診療報酬改定DX(今後の対応策)
まとめ
クリニックの経営・運営において、現状は直接的な関係があるのは冒頭の2つ(オンライン資格確認、電子カルテ情報の標準化)ですが、診療報酬改定DXについても、電子カルテやレセコンベンダーの作業の手間が省ける分、価格に反映される可能性もあります。
各クリニックによって今後の対応は変わってくるとは思いますが、今後も情報を嚙み砕いてお伝えしていきますので、ぜひご確認いただけると幸いです。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年7月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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