訪問診療のみの場合を除いて、クリニックを開業するにあたって必要なのが土地や物件。
物件の立地や各種条件によって、その後の成功もある程度決まってくる、と言っても過言ではありません。
今回の記事では、クリニック開業を考える先生方に向けて、杭開業地の土地や物件を選ぶ際の目安となる診療科別に必要な坪数がどのくらいなのか?を解説します。
クリニックの坪単価について
本題に入る前にまずは、クリニック向け物件の坪単価について解説します。
クリニックの開業・運営を支援する「クリニック開業ナビ」調べによると、診療科によって坪単価が変わることはないものの、その物件の所在地によっては、クリニックの大きさは変化する、とのことでした。
たとえば東京・新宿の場合ではおおよそ1坪当たり1.1万円~3万円となっているのに比べて、町田市では8千円〜2万円程度となっています(※2023年8月上旬時点)。
クリニックの開業を考える際には、開業地をどこにするのか?に加えて、「どれくらいの広さが必要なのか?」も重要になってきます。クリニックの場合はいくつかの法令によって建築基準が決められており、その1つに「診察質についての規定」があります。具体的な内容としては、配下のようなものがあります。
- 診察室の広さが9.9㎡以上あること
- 診察室と処置室を兼ねる場合、カーテンなどで区画できるようにすること
- 医師1人に対し1室あることが望ましい
- 1つの部屋の診療科目は1つであることが望ましい
- 給水設備を整えることが望ましい
参考: 診療所の構造設備基準等について
こうした基準をクリアすることも加味すると、当然、それだけ開業資金にも影響します(必要な坪数が大きいほど坪単価の母数が増えるため)。
上記を念頭に入れつつ、それぞれの診療科において、どれくらいの坪数があればよいのか?を見ていきましょう。
診療科別・最低限必要な坪数とは?
内科 | 30~40坪程度 |
外科(整形外科・形成外科・脳神経含む) | 50~70坪程度 |
眼科 | 30~60坪程度 |
皮膚科((美容)) | 25~50坪程度 |
耳鼻咽喉科 | 30~40坪程度 |
小児科 | 30~45坪程度 |
婦人科 | 35~45坪程度 |
精神科 | 15~30坪程度 |
内科の必要坪数:30~40坪
基本的に内科は「なんとなく体調が悪い」というニーズに応えることが多い診療科です。
診察の形式も、患者さんから症状を聞いた上で、のどや目の状態を見たり、胸の音を聴いたりして判断することが多いもの。
いわば最も汎用的な診察を行うのが特徴でもありますが、その分、専門的な診療はあまりしない側面もあります。
よって、他の診療科と比べて特別な機器を必要とする場面もあまり多くありません。
診察室と受付、バックヤード、待合室やお手洗いなどが揃っていれば良いため、この辺りの坪数となっている場合が多いです。
近年ではミニマムでの開業も増えていますが、その場合は15坪ほどでも開業可能です。ただし、15坪は一般的な駐車スペース4台分ほどの大きさしかないため、その中にすべてを収めるとなると、少々手狭になってしまうかもしれません。
同じ内科でも、たとえば消化器内科の場合、検査などで下剤を飲んでもらうことも多くなりますので、トイレの数を多めに確保しておくことも重要になります。
そのほか、上部・下部の内視鏡設備などもほとんど必須と言えますので、それを置けるだけの坪数を確保するとともに、設備を揃え、腕を磨いておく必要もあります。
外科:50~70坪程度
手術を行うことが多い外科。各種機器を入れるスペースや手術室の確保が必要なため、最低でも50坪ほどを必要とします。
仮に日帰り手術のみの場合でも、40-60坪は必要になってくるでしょう。
特に脳神経外科の場合は手術室に加えて、CTやMRIなどの検査機器も必要とするケースが多く、その分の坪数を考慮する必要があります。
整形外科の場合、診療時にベッドを使うことや、そのほか治療器具も各種必要になることもあり、ほかの科と比較しても、坪数が大きくなる傾向にあります。
リハビリを行う場合はその分広いリハビリ施設も必要となる(施設基準を算定する場合に必要なリハビリ室は、最低でも45平米は必要とされています。※参照: 個別事項(その1) 疾患別リハビリテーション)
こうした条件を考えると、70坪ほどを見込んでおいたほうがいいでしょう。
眼科:30~60坪程度
眼科の場合は、手術を行うかどうかで必要な坪数が変わってきます。
手術を行わない(いわゆるコンタクト処方など)場合は30〜40坪ほどで良いですが、白内障などの手術を行う場合、手術室が必要となりますので、45~60坪を見込んでおいたほうがいいでしょう。
皮膚科:25~50坪程度
保険診療のみの皮膚科の場合、25~40坪ほどあれば良いかと思います。
ただし、美容皮膚科を併設して自由診療も行う場合には、その分の機材や施術室も必要となりますので、その分坪数は大きくなります。
また美容皮膚科を併設する場合には女性の患者さんが多くなるかと思われますので、パウダールームなども考慮すると、おおよそ50坪は必要になってくるかと思います。
耳鼻咽喉科:30~40坪程度
耳鼻咽喉科の場合、そこまで大きな機材を必要とするケースが少なく、あまり大きな坪数ではなくても良いでしょう。
ただし、こちらも手術を行う場合には各種設備を必要としますので、ある程度プラスした数値で考えておくといいでしょう。
小児科:30~45坪程度
小児科の場合もそこまで大きな坪数は必要としませんが、基本的には患者さんだけでなく保護者の方も一緒に来ることや、キッズルームなどを備える必要を考えると、待合室のスペースをどのくらいの割合で確保するのか?は考えどころになりそうです。
婦人科:35~45坪程度(産科を併設すると200坪程度)
婦人科のみの場合であれば45坪ほどあれば良いと思いますが、産科を併設する場合には、分娩室や新生児室、お母さんの入院施設なども必要になるため、200坪ほどを見込む必要があります。
精神科:15~30坪程度
精神科の場合、他の科に比べて診療で医療機器を使うことは多くなく、ほとんどが先生と患者さんとの1対1の対話となります。
また患者さんの心理として「あまり人目につかないようにしたい」傾向が強いため、
待合室を広く取ることは避け、予約システムなどで時間帯を分けての来院を促す方が良いでしょう。上記のような理由から、あまり大きな坪数を必要としない傾向にあります。
まとめ
各診療科別に、大まかに必要な坪数を解説しました。
ただし、そのほか開業地の診療圏の広さや資金面、診療内容、導入する機器な度の各種条件によっても必要な坪数は変わってきます。ある程度の目安を付けることだけでも大変な作業となる場合もあるため、自分1人ではむずかしい…と思う場合は、専門家のサポートも視野に入れてみてください。
特徴
対応業務
診療科目
この記事は、2023年8月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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