医療法人の設立にあたっては定款を用意することが必須です。では、設立後に定款を変更したい場合は、新たな手続きをとることが必要になるのでしょうか? 早速説明していきます。
定款とは?
定款とは、会社設立時に発起人全員の同意のもとで定めた、企業の根本原則を記した書類です。ただし、「書類」といっても、昨今はPDF化して提出する「電子定款」も一般的です。
定款には、会社名や住所、事業内容といった基本情報とともに、会社の指針を示すさまざまな規則も記す必要があります。記載項目は、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の大きく3種類です。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、必ず記載しなければならない事項のことで、記載されていない場合は定款自体が無効となります。具体的な内容は、「事業の目的」「商号」「本社所在地」「資本金額(出資財産額)」「発起人の氏名と住所」となります。
相対的記載事項
相対的記載事項とは、法的には記載しなくても問題ないものの、記載していないとその事項について効力が認められない事項のことです。たとえば、「相続人等に対する売渡請求」「取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人及び委員会の設置(会社法326条2項)」「取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人の責任免除(会社法426条)」「社外取締役、会計参与、社外監査役及び会計監査人の責任限定契約(会社法427条)」などがこれに該当します。
任意的記載事項
絶対的記載事項にも相対的記載事項にも該当せず、かつ違法性のない内容を記載する場合、任意的記載事項として記載することになります。なぜ“任意的”というかというと、他の文書などで明確にしておけば、定款に記載しなくても効力が認められるためです。たとえば、「株主総会の開催規定」「役員報酬に関する事項」「配当金に関する事項」などがこれに該当します。
医療法人設立にあたっては、公証役場に定款の提出が必要
冒頭で述べた通り、医療法人設立にあたっては定款を用意することが不可欠です。定款を公証役場に提出して、認証を受けなければ医療法人を設立できないのです。
つまり、定款を変更した暁には、再度、公証役場に提出することが必要ということになります。
定款変更に必要な手続きは?
続いては、定款変更に必要な手続きを説明します。
定款に記載されている内容を変更したい場合、事前に医療法人がある都道府県に対して「定款変更認可 申請書」を提出して、都道府県知事の認可を受けなくてはなりません。また、定款変更認可申請書提出時には複数の書類を添付する必要があります。
「定款変更認可申請書」とは別に添付が必要な書類を、大阪府の規定をもとに説明します。
必ず添付が必要な書類
1. 新定款
2. 定款変更について諮った理事会および評議員会の議事録(写し)
申請に内容によって添付が必要な書類
3. 申請遅延の理由書(大阪府知事あて・理事長名明記)
4. 変更する具体的理由書(様式は任意)
事業を変更する場合
5. 事業廃止に係る具体的理由書(様式任意)
6. 事業廃止認可書(届出受理書) (写し)
7. 財産目録(前年度末日における財産目録)
8. 廃止事業用財産目録(廃止事業に係る財産の目録)
9. 「8. 廃止事業用財産目録」記載不動産に係る(発行後3か月以内の登記簿謄本原本または写し)
10. 「8. 廃止事業用財産目録」記載固定資産物品のリスト
11. 「10. 固定資産物品」の評価書 等(写し)
12. 「8. 廃止事業用財産目録」記載現金の残高証明書(原本または写し/申請時直近のもので、複数ある場合は証明現在日が同日のもの)
13. 「8. 廃止事業用財産目録」記載現金の保有証明書(写し)
14. 「8. 廃止事業用財産目録」記載有価証券の保有証明書(原本または写し)
15. 「8. 廃止事業用財産目録」記載財産の使途及び処分方法説明書(任意様式)
事業を追加する場合
16. 財産目録(前年度末日における財産目録)
17. 追加事業用財産目録(追加事業に係る財産目録)
18. 「17. 追加事業用財産目録」記載不動産の登記簿謄本(発行後3か月以内の原本または写し)
19. 「18. 不動産」にかかる評価書 等(請負契約書・売買契約書) (原本または写し)
20. 「17. 追加事業用財産目録」記載固定資産物品の明細書
21. 「17. 追加事業用財産目録」記載現金の残高証明書 (原本または写し/申請時直近のもので、複数ある場合は証明現在日が同日のもの)
22. 「17. 追加事業用財産目録」記載有価証券の保有証明書 (原本または写し)
23. 「17. 追加事業用財産目録」記載現金の贈与契約書 等(写し)
24. 当該事業の第1年度収支予算書
25. 当該事業の第1年度事業計画書
26. 当該事業の第2年度収支予算書
27. 当該事業の第2年度事業計画書
28. 当該事業に係る事業者指定書、事業の委託契約書、補助金の交付通知書及び補助要綱、施設の設置認可書(写し)
29. 当該事業に係る職員名簿
30. 施設長(管理者)就任承諾書、施設長(管理者)予定者の履歴書(写し)
31. 室種別面積表
32. 図面(附近見取図、配置図、平面図、立面図)
33. 地上権設定契約書又は土地賃貸借契約書(写し)
34. 地上権設定登記又は借地権設定登記の誓約書(写し)
35. 「33」の権利設定対象物件に係る土地登記簿謄本(発行後3か月以内の原本または写し)
36. 「17. 追加事業用財産目録」および「33」記載の不動産所有者が他法人である場合
ア 法人登記簿謄本(発行後3か月以内の原本または写し)
イ 法人規則(定款)(写し)
ウ 法人規則及び法律等に定める手続証明書類(議事録・公告等) (写し)
追加事業に係る建物を建築する場合
37. 建物概要書(構造・面積等)
38. 建設計画書 建築計画書
39. 法人名義所有権保存登記誓約書
40. 補助金(交付金)交付書又は内示書(写し)
41. 借入金貸付内定通知書又は申込書(写し)
42. 借入金償還計画書
43. 借入金償還財源に充てる償還金贈与契約書 等(写し)
44. 自己資金を法人が償還財源とする場合
ア 償還財源説明書
イ 当該年度収支予算書
ウ 前年度収支決算書
45. 「43」に係る贈与者が法人(または任意団体)である場合
ア 法人登記簿謄本(発行後3か月以内の原本または写し)
イ 寄附意思を表示する役員会議事録謄本(写し)
ウ 過去2年度間の収支決算書
※43~45までの書類について「41」で独立行政法人福祉医療機構の貸付内定通知書の写しがある場合は省略可とする
46. 自己資金残高証明書(原本または写し/申請時直近のもので、複数ある場合は証明現在日が同日のもの)
47. 贈与金贈与契約書 等(写し)
48. 建物建設請負契約書(写し)
49. 設計監理業務委託契約書(写し)
50. 購入予定固定資産物品明細書
51. 業者への支払済代金受領書(写し)
評議員・役員定数を変更する場合
52. 増員理由書(増員する場合)
53. 減員理由書(減員する場合)
54. 役員名簿
55. 就任予定者の就任内諾書(写し)
56. 就任予定者の履歴書
57. 就任予定者の宣誓書(写し)
58. 辞任予定者の辞任内諾書(写し/減員人数分必要)
基本財産が減る場合
59. 基本財産処分承認書(申請書)(写し)
60. 財産目録
61. 基本財産処分理由書
62. 処分対象物件の登記簿謄本(発行後3か月以内の原本または写し)
63. 処分対象物件の評価書 等(写し)
64. 売却金の使途等の説明
65. 代替物件の建設計画及び関係書類
66. 代替物件の資金計画書及び関係書類
67. 代替物件建設中の事業継続関係書類
自院がある都道府県のホームページなどで必要事項をよく確認しよう
前述の通り、上記に紹介したのは大阪府の場合の手続きです。必要書類は都道府県によって異なるので、定款を変更する際は、間違いのないよう、自院がある都道府県のホームページなどでよく確認してくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年9月時点の情報を元に作成しています。