クリニックの開業は、物件探しからスタートする「新規開業」と、既存のクリニックを引き継ぐ「承継開業」の大きく2つに分けられます。それぞれにメリット、デメリットがあるので、どんな違いがあるのかを確認することで、自分はどちらに向いているかが見えてくるかもしれません。
そこで今回は、新規開業と承継開業の2つを比較検討していきます。
新規開業のメリットは?
まずは、新規開業のメリットをみていきます。
好きな場所に開業できる
新規開業の場合、開業場所を決めることからスタートになるので、開業地はもちろん、戸建てにするか医療モールにするかビル診にするかなど、形態も自分で決められます。
理想の内装を追求できる
内装や外装を追求しやすいのも大きなメリットです。ただし、居抜きの場合は内装を大幅に変更することは難しいといえます。また、医療モールおよびビル診の場合、外装や外看板に関しては制限があることがほとんどです。
医療機器や各種システムを好きに選べる
医療機器や家具、電子カルテをはじめとする各種システムもすべて自分で選んで導入することになります。購入するかリースにするかなども自分で決められます。
ただし、これに関しても、居抜きの場合は一式そろっている場合があります。また、居抜きの場合は、医療機器などがリースである場合があるので、権利に関して契約前によく確認することが必要です。
承継開業のメリットは?
続いては承継開業のメリットです。
初期費用が(比較的)安くなる
土地・建物・医療機器・各種システムなどをすべてゼロからそろえなければならない新規開業と比べて、初期費用が安くて済みます。費用相場は2,000万円~4,000万円とされています。
ただし、これに加えて、仲介業者への手数料が発生します。仲介手数料の目安は、譲渡金額の10~15%であることが多いようです。そのほか、着手金などが発生する場合もあります。
物件探し・土地探しにかかる時間と労力を削減できる
承継開業の場合、基本的には、診療に必要なものがすべてそろった状態のクリニックを引き継ぐことになるため、自分で用意しなければならないものがほとんどありません。
ただし、医療機器や家具などに年季が入っている場合は、買い替えが必要になることもあります。
はじめから一定数の患者がいる
基本的には、前クリニックの患者を引き継ぐことになるので、はじめからある程度の収入が約束されています。ただし、前クリニックの評判が悪く、患者がほとんどいなかったという可能性も無きにしも非ずです。
スタッフを引き継げる場合がある
前クリニックで働いていたスタッフを引き継げる場合があります。そのため、採用にかけるコストや時間も削減することができます。
新規開業のデメリットは?
続いては、新規開業のデメリットをみていきます。
初期費用が高い
土地代・建物代に加えて医療機器や各種システムの導入費もかかるため、自ずと初期費用が高くなります。費用相場は、診療科にもよりますがおおむね1億円程度とされています。
広告・宣伝に時間やお金をかけることが必要
クリニックの認知度を上げるために、広告・宣伝にお金をかけることが不可欠です。主にホームページを使って
宣伝するにしても、SEO対策やMEO対策に力を入れる必要があります。自院での対策が難しい場合、業者に頼む必要があります。
集患・増患に時間がかかる場合がある
広告を打ったりSEO・MEO対策を施したりしたからといって、必ずしもすぐに患者が増えるわけではありません。
採用がなかなかうまくいかない場合がある
看護師や事務などのスタッフは、募集をはじめてすぐに見付かるとは限りません。応募があっても、クリニックが望むスキルを有した人材は集まらず難航する場合があります。
承継開業のデメリットは?
続いては承継開業のデメリットです。
建物や医療機器の修繕費が高くつく場合がある
建物が老朽化している場合や、医療機器に年季が入っている場合、修繕費が高くつくことがあります。契約した後に予想外の失費で涙を呑むことにならないよう、自分の目でよく確認してから契約を結ぶかどうか考えることが大切です。
前クリニックから引き継いだスタッフと相性が悪い場合がある
スタッフを引き継ぐ場合、自分で選んだスタッフではないわけですから、ソリが合わない可能性も考えられます。また、スタッフからすると、「前の院長とやりかたが違ってやりにくい」ということもありえるので、それゆえに反発心が沸く場合もあるでしょう。
前クリニックの評判が悪い場合、最初から患者に悪い印象をもたれることがある
前クリニックの評判が悪く、地域住民にマイナスの印象を抱かれていると、承継後、そのイメージを払しょくするのに時間がかかることがあります。
前クリニックと比べられやすい
前クリニックの評判がよければ問題はないかというと、そうとは限りません。たとえば、「前の先生は時間をかけて話をきいてくれたのに、新しい先生は必要最低限しか会話してくれない」など、前クリニックと比較して文句を言われる可能性もあります。
特に、患者が承継後のクリニックに慣れるまでの間は不満が出やすいので注意が必要です。
新規開業と承継開業、金銭的には結局どっちが得なの?
前述の通り、新規開業にかかる費用の目安は約1億円、承継開業にかかる費用は2,000万円~4,000万円+10~15%の仲介手数料なので、この数字だけ比べると承継開業のほうが金銭的にはお得に思えます。
ただし、これも前述の通りですが、承継開業の場合、建物の修繕や医療機器の買い替えに多額の資金が必要なことがあります。そのため、契約前には自分の目で実物を確認して、必要な費用の概算を出すことが不可欠です。
新規開業と承継開業、集患効果が見込めるのはどっち?
集患・増患に関しては、もともとの患者がついているぶん、承継開業のほうが最初のうちは有利といえます。ただし、そこから患者が定着するかどうかはクリニック次第。当たり前ですが、クリニックの評判が悪ければ患者は離れていきます。
また、ドクターの腕がほぼ同等だった場合、最初のうちは承継開業に軍配が上がったとしても、新規開業した場所の条件がよく、競合となるクリニックがなければ、あっという間に患者が定着していくこともあり得ます。
そのため、新規開業にしろ承継開業にしろ、診療圏内の競合クリニック数や人通りの多さなどは十分に調べたうえで検討することが望ましいといえます。
承継開業の場合、すべて前クリニックのものを引き継ぐことが望ましい?
医療機器や各種システムに年季が入っていない場合、前クリニックのものを引き継いでそのまま使うことは可能です。ただし、医療機器やシステムは年々進化しているので、古いものを使い続けることで業務効率が落ちる場合が多々あります。
その最たるものがカルテです。たとえば前クリニックが紙カルテを使っていた場合は、電子カルテを導入することが必須。以前から通っている患者のデータを取り込むのには少々手間がかかりますが、その後の業務効率を考えたら、承継のタイミングで電子カルテに切り替えたほうが遥かに効率がいいといえます。
また、医療機器や各種システムに関しては、電子カルテと連携できるかどうかをチェックして、新しいものに切り替えるのも一手。反対に、各種医療機器やシステムと連携可能な電子カルテを選ぶことも大切です。
クラウド型電子カルテ「クリアス」も、110社以上のメーカーの機器との連携実績があるので、承継検討時にはぜひ導入を考えてみてくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年9月時点の情報を元に作成しています。
執筆 CLIUS(クリアス )
クラウド型電子カルテCLIUS(クリアス)を2018年より提供。
機器連携、検体検査連携はクラウド型電子カルテでトップクラス。最小限のコスト(初期費用0円〜)で効率的なカルテ運用・診療の実現を目指している。
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