
診療報酬は定期的に改定がおこなわれているため、クリニックを運営していくうえでは、最新の情報を把握しておくことが必要です。そこで今回は、診療報酬改定の仕組みや頻度について詳しく説明していきます。
診療報酬の仕組みは?
診療報酬とは、医療機関でおこなった診療に対する対価として、公的医療保険から医療機関へ支払われる報酬のことです。診療報酬は、物の評価である薬価・材料価格と、技術やサービスの評価である医科診療報酬・歯科診療報酬・調剤報酬の大きく2種類にわけられます。また、前者には約17,000項目、後者には約5,000項目が存在しており、そのすべてが1点10円で点数化されています。
つまり、項目ごとに何点か決まっているので、保険診療に該当する治療・診療は、全国どこの医療機関で受けても同じ金額ということになります。
診療報酬改定とは?
診療報酬改定とは、診療報酬を見直して改定することです。原則、薬価については1年に1回、そのほかの報酬や価格については2年に1回見直されます。
診療報酬改定では、すべての項目を改定するわけではありませが、どの項目を改定すべきかを考えるにしても、数が多く時間がかかるため、改定内容に関しては前年から審議を始めます。
診療報酬改定の流れは?
続いては、診療報酬改定の流れを詳しくみていきます。
4月中旬~:中央社会保険医療協議会が改定の方向性について審議を開始
厚生労働省に設置されている中央社会保険医療協議会(以下、中医協)が、「診療報酬改定に係る基本方針」策定に向けて審議を進めます。
中医協は、報酬を受ける側である「診療側委員」、報酬を支払う側である「支払側委員」、公益を代表する「公益委員」の三者によって構成されています。「診療側委員」は、医師や歯科医師、薬剤師を代表する団体から選出されており、「支払側委員」は、保険者を代表する団体から選出されています。また、「公益委員」は、社会保障を専門とする有識者などから選出されています。
秋頃~:社会保障審議会 医療保険部会・医療部会
秋頃からは、社会保障審議会の医療保険部会・医療部会が中医協の答申の検討をはじめ、12月頃には「診療報酬改定に係る基本方針」を定めます。社会保障審議会とは、人口問題審議会や年金審議会、医療審議会など8つの審議会が統合されてできた組織です。年金改革や介護制度、児童福祉など社会保障に関連するさまざまな課題に対して審議していますが、そのうち、医療制度に関して審議しているのが、医療保険部会・医療部会です。
年末~翌2月頃:診療報酬の改定率を決定
年末の内閣予算編成過程において、診療報酬の改定率が決定されます。さらに翌年1月には、厚生労働大臣が中医協に診療報酬改定の調査と審議をおこなうよう詰問します。これを受けて中医協は、「社会保障審議会が決定した基本方針」「内閣が決定した改定率」「医療経済実態調査」「薬価調査、材料価格調査の結果」「公聴会やパブリックコメントの実施などを含めた診療報酬点数の設定に係る調査と審議」にもとづいて議論します。議論の末、中医協によって最終的な診療報酬改定の内容が決定となるのは2月頃です。
3月:診療報酬改定の告示と関連通知
3月には、診療報酬改定の告示と関連通知がおこなわれます。
4月:診療報酬点数表施行
新年度には、診療報酬点数表が施行されます。
現在の診療報酬点数表が施行されたのは2022(令和4)年4月
前述の通り、2年ごとの4月に診療報酬改定がおこなわれています。前回の診療報酬改定は2022(令和4)年4月なので、次回は原則として、2024(令和6)年4月におこなわれます。
ちなみに、2022年の診療報酬改定では、以下4項目が基本方針として据えられていました。
1. 新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築
2. 安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進
3. 患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
4. 効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上
とりわけ1、2は重点課題とされてきましたが、働き方改革に関しては今後も引き続き大きな課題となっていくことが予想されます。
参照:厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の基本方針(概要)」
診療報酬点数一覧はどこで確認できる?
2022(令和4)年4月に施行された診療報酬点数一覧は、厚生労働省のホームページに格納されたPDFなどで確認することができます。
診療報酬改定のタイミングで各クリニックが考えるべきことは?
診療報酬改定が実施されると、いくつかの項目の点数が変わるため、医療事務が対応しなければならなくなりますが、各クリニックでは、医療事務のみが対応すればいいというわけではありません。なぜなら、前述の通り、診療報酬改定のたびに基本方針が発表されるので、各クリニックは、その方針に沿った医療の実現のために、自院に何ができるかを考えることが大切です。場合によっては、改定に伴い経営方針を軌道修正していかなければならない場合もあるので、次回の診療報酬改定もきちんとチェックして、その後の方向性を決めていってくださいね。
特徴
対象規模
オプション機能
提供形態
診療科目
この記事は、2023年10月時点の情報を元に作成しています。